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学ぶことはエンターテイメントだ!! オンライン学習サイト「スクー」が“学習のカタチ”を変える!
展開している事業内容・特徴
インターネットによって私たちの生活スタイルが一変して久しい。ビジネスシーンはもちろん、ショッピングや旅行・ホテルなどの予約はネットを使うのが当たり前。電車の中ではスマフォでゲームを楽しんだりニュースを読む姿が実に多い。
教育・学習分野においてもまた然りで、オンライン学習が急速に普及し始めている。教育×テクノロジーはEdTech(エドテック)と呼ばれ、ベンチャー業界の中でも特に熱い分野のひとつだ。
講師と受講者をネットでつなぐe—ラーニングはすでに珍しいものではなくなり、一流大学の講義内容を動画で無料配信するMOOCsというサービスは全世界的に流行している。つまり現代は、インターネット環境さえ整えば、学生から社会人、生活者に至るまで、「どこにいても」、「いつでも」学べる世界になった。
日本においてもこの波は着実に広まっており、今後もあらゆるオンライン学習サービスや提供会社が誕生し市場は拡大していくと予想される。今回紹介する「schoo WEB-campus(以下:スクー)」も、その一翼を担うサービスだ。
2011年12月のβ版をローンチ。2014年7月時点でユーザー数は9万人を突破し、急成長を続けている。スクーの特徴を一言で表せば、「双方向のコミュニケーション型授業」。これまでのe—ラーニングとは一線を画すものとなっている。
開講される授業はすべて生放送で配信される。「リアルタイムであること」を活かし、同サイトは「講師への質問機能」や、「受講者同士のチャット機能」、「着席しました!/なるほど!/私も聞きたい!ボタン」など、リアルタイム配信ならではの機能を搭載。これが、従来のe—ラーニングのような、いわば講師の “教えるのみ”、受講者の“教わるのみ”といった一方向的な関係性を払拭し、実にコミュニケーション豊かな学習の場を実現させている。また、過去に放送された授業も保存されているので、録画でも見ることができる。
そして、同サイトが人気となっている秘密はそれだけではない。配信授業のラインアップも非常にバラエティに富んでいるのだ。
例えば、最近上場した某ITベンチャー企業の創業者が語る授業や東京大学の講義が放送されている。
スクーの中には、「WEBデザイナー学部」、「スタートアップ学部」、「グローバルビジネスパーソン学部」、「キレイ女子学部」の4つの学部が開設されていて、経営・起業、ビジネススキル、テクノロジーIT、デザイン、アートものづくり、教養、政治・経済・時事といったさまざまなカテゴリに分けられている。
内容は事業構築からメイク、美味しいコンビニコーヒーの選び方までの多岐にわたる授業が用意されていて、非常におもしろい。また、初級者の知識から、実践までをカバーするコンテンツバリエーションとなっているので、いわゆる知識享受だけに留まることはない。
授業を行う講師群はスクー専属ではなく、各界で第一線で活躍されている講師のため、非常にリアルで最前線の情報を得られる授業が展開されているのだ。
授業を受講するためには、Facebookアカウント登録またはメールアドレスによる新規登録で、まず“オープン学生”となること。学生となれば、「生放送授業」、「チャット」、「講師から提出されるレポートへの回答」が可能になり、さらに過去に配信されたアーカイブを月に1コマ受講できる。もちろん、入会費や受講料は無料だ。また、月額525円で、アーカイブを無制限に閲覧できる“プレミアム学生”プランも用意されている。
インターネットを介し、日本全国から全世界、子供から高齢者まで無料で受講できる同サービス。スマホやタブレットでの授業視聴も可能で、まさにいつでもどこでも世界中の人とともに学べる学習のカタチを創出したオンライン学習サービスと言えよう。
2014年1月には、生放送授業に特化したiOSアプリ「スクー生放送」がリリースされ、スクーの学生数は日に日に拡大中である。
マネタイズについては有料会員モデルのほか、今後はプロモーション広告による課金や、スクーというプラットフォームのオープン化による法人からの課金など、さまざまな可能性を検証しているという。同社によれば、B2Bのセミナーは日本全国で1日4000回も開催されており、それらをオンラインにリプレースしていくといったビジネスチャンスを狙っている。
「一方的に与えられること」の面白くなさから、ひらめきが生まれた。
ビジネスアイデア発想のきっかけ
スクーが誕生したきっかけを、同サービスを提供する株式会社スクーの広報兼コンテンツディレクターである田中伶氏に伺った。
「きっかけは、弊社代表の森が前職でリーダーシップ研修やマネジメント研修用のe—ラーニングを受講したことに遡ります。そのときに動画を観て、一方的に配信されるスタイルに疑問と違和感を抱いたそうです。『講師はひたすら講義を進め、受講者はただそれを聞くのみのこのような状況は、果たして学びになるのか?』と。
考えてみれば、そうですよね。学ぶ内容よりもまず、『学びたい』という意欲は、とても複合的な要素をはらんでいるものです。学生時代を思い出していただければイメージしやすいですが、憧れの先生だから授業を受ける、友人に負けないように頑張るなどの水面下のコミュニケーションは学び意識に直結するものです。森は、e—ラーニングの構造的な問題を自らが体験したことで、スクーのコアである『双方向のコミュニケーション型動画学習』をひらめきました。
また、当時、学生がさまざまな議論に参加する『ハーバード白熱教室』というNHKのテレビ番組が話題を呼んでいて、そこからもインスピレーションを受けたそうです」
アイデアを実現のものとすべく、森健志郎氏は起業を決意。2011年10月、会社の退職金30万円を資本金として、たった一人で株式会社スクーを創業した。その後、森氏のビジョンに賛同した有志が少しずつ集まってきた。
そこから、わずか2ヶ月でβ版をローンチしたわけだが、当初は出演講師のアポイントや撮影場所の確保で苦労したという。しかし、同サービスは多くのユーザーに好評で口コミが着実に広まり、知名度とユーザー数の上昇に比例して講師の顔ぶれも充実していった。
そして2013年の2月にはインテルの支援を得て自社スタジオを設置。同年の7月には設立以降、2度目となる第三者割当増資を行い、伊藤忠テクノロジーベンチャーズを筆頭とする3社から総額1億5200万円もの資金調達に成功した。これで経営基盤の強化ならびに提供コンテンツをより充実させる体制が整った。創業当初は森氏含め4人だった社員数も、15人体制となった。
取材をした2014年7月時点では、多い時には1日10コマのペースで生放送授業が配信されている。一回の授業に数百名の生徒が集まるそうだが、驚くべきは驚異的な視聴継続率。なんと、8割近くのユーザーが授業を最後まで受講しているそうだ。学びたいという意識を自然に換気させる環境を整えている同サービスだからこそ成し得た成果だといえるだろう。
コンセプトは世の中から“卒業”をなくす
将来への展望
これまでのところ大々的なプロモーションや宣伝を行うことなく、大きなムーブメントを起こしつつあるスクー。学生の中には、授業がきっかけで起業、再就職を果たしたユーザーもいるそうだ。
人気授業も続々誕生しており、昨今、東証マザーズへ上場を果たした株式会社FreakOutの取締役COOを務める佐藤祐介氏が講師を務めるスタートアップ学部の授業や、Yahoo Japan の副社長を務める川邊健太郎氏に1時間生放送で質問が出来る質疑応答授業などは数多くのユーザーが受講。また、東京大学と提携し,これまで試験に合格した東大生しか受講できなかった、「東京大学i.school」のワークショップ型授業の無料配信は、ひと際ユーザーから注目を集めた。また、最近では、各企業がスクーの公認団体として、自社から授業を配信できるプラットフォーム提供型の授業もスタートし、企業やサービスPRの手段として引き合いが拡大しているそうだ。
同社の今後の展望を伺ったところ、以下のようなコメントをいただいた。
「コンテンツ数と登録数は比例して伸びていますので、当面は登録数の向上に直結するコンテンツ数を充実させていくことが目下の目標です。内容としては、現在力を入れている4つの学部における学びの提案を主軸にしながらも、東京大学や今年6月から提携した法政大学然り、アカデミックな領域の開拓に力を入れていきたいですね。例えば研究者の学会など、これまでクローズドな世界で行われていた学びの機会へスポットをあてていくのも弊社の役割だと考えています。展望は、創業のコンセプトである『世界中から卒業をなくす』ことです。既存のe−ラーニングやMOOCsでは、修了証書の発行が基本スタイルですが、修了証書を弊社は設けておりません。いわゆる肩書きの付与ではなく、世の中の誰もが楽しく自発的に学べ、自然に役立つスキルを磨けるプラットフォームをこれからもめざしていきます」
また、同社代表の森氏にEDTECHの未来についてもコメントを頂いたので紹介したい。
「インターネットに学びを転換する最大のメリットは、学んだログがすべて残ることです。自分が人生を通して学んできたことも見える化できる。そうなると「この学校を卒業した」というこれまで当たり前だった”学校歴”ではなく「◎◎大学の授業を受けた」「△△の先生から学んだ」という”学習歴”が重要視される世の中になると思うんですね。
個人としては、自分の学習歴が揃うことで、自分の興味関心をデータとして振り返り、さらに学ぶべきことや、実はまだ出会っていない新たな可能性を発見することにも繋がるかもしれない。さらに企業としては、どこの卒業生か?ではなく、これまで何を学んできたのか?を見ることができるため、本当に採用すべき人材とのマッチングの精度をも高めることが出来るのではないでしょうか。EDTECHの未来が、出会うべき生き方や仕事にたどり着く可能性を広げてくれると考えています。」
株式会社スクー | |
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代表者:森 健志郎氏 | 設立:2011年10月 |
URL: http://schoo.jp/ |
スタッフ数:30名(アルバイト含) |
事業内容: 「WEBに誕生した、学校の新しいカタチ」 schoo WEB-campusの運営 |
当記事の内容は 2014/7/17 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。