「いじめ」「出会い系」などから子どもを守る! ビックデータ技術を活用したサービス「Filii(フィリー)」

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

ビックデータ技術で子どもを守る新サービスが登場
展開している事業内容・特徴

20140624_2昨今、電車の中などを見渡すと、大人から子どもまで、スマートフォンを使っている人が実に多い。内閣府が2014年4月17日に発表した発表した国内消費動向調査によれば、携帯電話(スマフォ含む)の普及率は93.2%。スマフォの世帯普及率は54.7%にもなるという。

しかし、手軽にインターネットにつながることで、子どもが「いじめ」「出会い系」「個人情報漏えい」「ポルノ」などいったトラブルや犯罪に巻き込まれることも少なくない。

そうした中、インターネット上で子どもを守る新しいサービスが登場した。それが今回紹介する「Filii(フィリー)」だ。

「Filii」の仕組みは、こうだ。まず子どものスマフォにアプリを入れると、子どものスマフォでやり取りされている情報を自動的に収集し、分析する。その際、トラブルや犯罪につながるキーワードが検知されると、親のスマフォやメールアドレスにアラートが届くというもの。LINEなどのメッセージングツール経由のデータだけでなく、子どものFacebookやツイッターなどのSNSアカウントと紐付けると、そのデータも取得し、分析してくれる。

また、どういった人とつながっているかも分析、信頼度を定量化することで、子どもが知らない大人とつながっていないかを検知する。

同サービスを運営するのは、2013年10月10日に設立されたエースチャイルド株式会社。「Filii」は、2013年11月からサービスをスタートした。

エースチャイルド社の創業者である西谷雅史氏によれば、中学生で半数、高校生に至っては90%近くがスマートフォンを利用しているという。スマフォのメッセージングツールを使わないと仲間はずれにされることもあるそうだ。よって同社では「使わせない仕組み」ではなく、「使っていても安全を担保できる仕組み」を目指して同サービスを開発した。

まだ試験的な段階だが、保護者の反響はよく、自治体や学校、教育関係の企業からの引き合いも増えているという。

子どもができたことをきっかけに、子どものためになる仕事をしたいと思い起業
ビジネスアイデア発想のきっかけ

20140624_1西谷氏は、元々は大手コンサルティング・シンクタンク系のシステム開発会社で9年間エンジニアとして働いていた。そこで、たまたま新規ビジネスを検討する機会があり、その時にちょうど子どもが誕生。そして、子どものためになる事業・ビジネスを考え始めたのが、起業のきっかけとなった。

起業の意思が明確になったのは、子どもがいじめを苦に自殺してしまったニュースを見たことだった。自殺した子どもの遺書が紹介され、その内容に衝撃を受けた。ネット上には、その事件に限らず多くの遺書が公開されている。遺書の共通点の1つに、「心配かけたくないので隠していた」という記述がある。周りの誰にも話さずに自殺した子どもの苦渋を考え、どうして防げなかったのだろうと考え始めた。これは、いじめに限らずだが、本当に大きな問題に直面したとき、親子の間に信頼関係があるからこそ問題を伝えられない、ということがありえることを意味する。この壁を越える「伝える仕組み」を作れば、このような事態を少しでも回避することができるかもしれない、と考えた。

そして、「子どもの明るい未来は安全から」という考えに行きついた西谷氏は、自ら起業して子どもの安全を守るサービスを開発することを決意する。

起業準備に1年ほどかけたという西谷氏。コンセプトのみをまとめた数ページの事業計画書を携えベンチャーキャピタリストを回り、サムライインキュベートの榊原氏からの投資を受け、2013年10月に会社を設立、翌11月にはサービスをローンチした。

西谷氏によれば、米国では子どもの安全は親が守るという意識が日本よりも強く、州によっては子どもを一人で車内に放置しただけで罰せられるなど、安全に対する意識が非常に高い。むろん、日本と米国では治安の差もあるだろうが、米国では子どもの安全を守るサービスを手がけるベンチャーが成長している。

代表的なサービスをあげると、「Social Shield」「Secure.me」「Safety Web」「uKnowKids」など10社ほどがあるという。そのうち、すでに数社はExit済みで、大手ソフトウェア会社などに買収されている。

一方の日本では、デジタルアーツ社のi-フィルターや、ガイアックス社のスクールガーディアンといった有害情報のフィルタリングや学校向けのパトロールサービスがあるくらいで、それぞれの企業の売り上げ規模が30億~40億円程度と、まだまだ伸びしろがある。ここに西谷氏は大きなチャンスがあると見ているが、市場がまだ小さいゆえの苦労も多い。

また、スマフォアプリならではの苦労もある。例えば圧倒的なシェアを持つLINEだが、FacebookやTwitterのように外部サービスとの連携を許可していない。しかし、保護者にヒアリングしてみると、LINEへの対応ニーズは非常に高い。そのため、同社では間接的にメッセージング履歴などを収集する仕組みをつくり、対応している。

まずは国内でのメジャー化を急ぐ。5年後にはアジアをはじめとした国際展開へ
将来への展望

西谷氏は、ベンチャーキャピタルからの出資を起業する条件にしていた。ファイナンス的なサポートを受けたいという思いもあったが、何より事業が客観的に評価されるかどうかを判断したかったという。

そして、サムライインキュベートからの出資を取り付けたことで、事業性が認められたと考えた。また、ベンチャーキャピタルを通じて個人ではとても会えなかった人とのつながりを持てたことが、事業にとても大きなプラスになっていると西谷氏は語ってくれた。社名は明かせないが、国内のある大企業とすでに話が進んでいるそうだ。

今後の展望を西谷氏に伺ったところ、「まずは日本国内で「Filii」をメジャーなサービスに育てるというのが目下の目標だ。また5、6年後にはアジアをはじめとした海外でも使われるサービスとし、グローバルに展開したい」とのこと。

最後に、西谷氏からのメッセージを紹介したい。
「将来的には、子どもの成長を自動的に記録し、分析するサービスなども手がけたい。そして、グローバルな分野での活躍を目指す子どもたちの育成支援ができればと思う。そのためには、やはりまずはネットを安全に利活用できることから。できるだけ早く、ネット上でさまざまな被害に遭う子どもがいなくなる日本にしていきたい」。

エースチャイルド株式会社
代表者:西谷 雅史氏 設立:2013年10月
URL:
http://www.as-child.com/
スタッフ数:2名
事業内容:
■ネット上の危険から子どもを守るWebサービス Filii の開発、運用、および関連事業
■Filii展開に関連する情報モラル、こどものネットセキュリティ系セミナーの開催
■Filii 利用技術のB2B展開(コンプライアンス、レピュテーションリスクマネジメントなど)
■Filiiサービスページ:https://www.filii.net
■Filiiスマホアプリ(Android):
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.asc.mfp.app&hl=ja

当記事の内容は 2014/7/1 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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