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カワイイ写真の共有サービスが世界で人気。Facebookページとソーシャルサービスで急成長中のベンチャー
展開している事業内容・特徴
「Kawaii Museum JPN」というFacebookページをご存じだろうか。2012年6月からスタートし、2014年4月時点で570万もの“いいね!”を集めている、大人気のFacebookページだ。
開発・運営元は株式会社Kawaii Museum。同社のサービスはFacebookページの「Kawaii Museum JPN」と「Kawaii Museum」というソーシャルサービスの2つ。
百聞は一見に如かず。ご覧いただければわかるだろうが、「Kawaii Museum JPN」も「Kawaii Museum」も、とにかく「カワイイ」写真が大量に掲載されている。気になったものがあれば、SNSでシェアしたり、スタンプをつけたりできる。そうやって友人間で共有し合って楽しむわけだ。といっても、この楽しさは実際に体験してみないとわからない。写真共有サービスとして「Pinterest」が有名だが、同サービスはそのカワイイ版というと伝わるだろうか。
日本独特のカルチャーをネットで流通させるサービスが、ここ2、3年で急速に成長している。同様のサービスで「オタク」文化を世界に発信している「Tokyo Otaku Mode」が有名だが、オタクというサブカルチャーに比べて、「カワイイ」のほうがより広い層に受け入れられやすく、実際にGoogleトレンドなどで見ても、「カワイイ」関連のキーワードのほうが成長率が高いことが伺える。
同サービスのユーザーは8割が女性で、年齢層は10代がメイン。また、9割が海外のユーザーとのことで、フィリピンやインドネシアなどの東南アジアから、チュニジアなどのアフリカにまでユーザーが広がっている。言語圏でいうと英語を筆頭に、スペイン語やフランス語、アラビア語など、実にグローバルに支持されているのだ。登録されている写真は2014年4月時点で5万枚。もちろんすべてユーザーが投稿したものである。
そんなワールドワイドなサービスだが、開発・運営元であるKawaii Museum代表の田中 丈登氏によれば、維持費はさほどかかっていないそうで、スタッフも13名という体制で運営している。
マネタイズはまだこれからだというが、これだけの“いいね!”が集まっているため、広告を出したいという企業からの引き合いも多く届いている。まず広告収益を取りにいき、その後の「カワイイ」をキーとしたEC事業や、LINEスタンプのようなデジタルデータでの課金モデルも構想中だ。しかし、今はもっとしっかりとしたサービスとしてブラッシュアップさせていくタイミングと見ており、収益化はもう少し先でと考えているようだ。
最初の1年間は試行錯誤の毎日が続いた。300万の“いいね!”を超える大ヒットはある日突然に
ビジネスアイデア発想のきっかけ
田中氏は1984年生まれ。父親は国家公務員という堅い家柄。小学校まではオーストリアに住んでおり、そこでMacに触れたのがパソコンとの最初の出合いだった。中学ではパソコン部に入部し、自分でプログラムを書いてゲームなどをつくっていた。進学した東京工業大学でもコンピューターサイエンスを学んでいる。
しかし、もともと起業する意識はなく、公務員か大企業への就職を考えていた田中氏。転機となったのは、大学3年生の時に参加したプログラミングコンテストで最優秀賞に選ばれ、シリコンバレーに行ったこと。その時に、初めて起業という選択肢を意識したという。
大学院時代、大手電機メーカーでインターンをしていた田中氏だったが、就職したのはDeNA。世界を変えるプロダクトがつくるなら、大企業でなくベンチャーだろうと考えた結果だった。
DeNAで働き始めたが、徐々にゲーム以外のビジネスをやってみたいという思いがふくらみ、1年で退職。2011年に、田中氏と仲間3人で、Eunoを設立する。資本は100万円でのスタートだった。
最初に取り組んだのは位置情報を活用したコミュニティーサービス。しかし、これはうまくいかず、その後もさまざまなサービス立ち上げを検討する日々が続いた。
売り上げがないため、資本金の100万円はあっという間に底をつく。そこで受託のシステム開発などで稼ぎつつ、なんとか自社サービスの開発を継続していた。
2012年頃といえば、Facebook上でサブカルチャーを発信することが流行っていたタイミング。しかし、田中氏は、「カワイイ」をコンセプトにしたPageがまだなかった事に気づく。そして、ついにヒットしたのが「Kawaii Museum JPN」だったというわけだ。
特に宣伝やPRもしていなかった「Kawaii Museum JPN」だが、リリース直後からユーザーが殺到することになる。結果、開始半年で300万を超える“いいね!”が集まった。
開発資金として創業補助金を獲得できたことも大きかった。さらに日本政策金融公庫からも融資を得る。そうやって当面の開発費を確保し、サービスを磨き込んでいる。
2014年中には、さらに大きな資金調達も計画している。また、「KDDIムゲンラボ」の第4期にも採択されているが、そこでの取り組みや指導も、同社の成長を支えている。
2015年中にユーザー数1000万人が目標。アップルやディズニーのようなブランドをつくりたい
将来への展望
田中氏に今後の展望を伺ったところ、「2015年中に1000万人のユーザー獲得が目標」という回答をいただいた。また、「ゆくゆくはアップルやディズニーのような世界的なブランド企業に育てていきたい」とも。そんな田中氏から、リスクをとって挑戦したいという気持ちがヒシヒシと伝わってきた。
ちなみに、父親が国家公務員であり、理系の大学院で学んだ田中氏が、不安や迷いを感じず起業したことに、30代後半の筆者は正直驚いた。
そうした若い起業家に出会って話すたびに、起業やベンチャーに対する若い世代の意識が本当に変わってきていると感じる。グーグルやアップルのような、世界を変えるスーパーベンチャーが日本から登場するのは、そう遠くないのかもしれない。
株式会社Kawaii Museum | |
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代表者:田中 丈登氏 | 設立:2011年6月 |
URL: http://www.kawaiimuseum.net/ https://www.facebook.com/KawaiiMuseumJpn |
スタッフ数:13名 |
事業内容: ・ソーシャルサービス「Kawaii Museum」の開発・運営 ・Facebook Page 「Kawaii Museum JPN」の運営 |
当記事の内容は 2014/4/24 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。