写真版ウィキペディアを狙う九州発ベンチャー「ズカンドットコム」

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

写真を投稿、分類して誰でも手軽に図鑑が作れる新サービス
展開している事業内容・特徴

oder-1インターネット上には日々、大量の情報が生成・流通されている。その大きな原動力の一つが、ユーザーが自発的に情報を出す仕組み、CGM(コンシューター・ジェネレーテッド・メディア)といわれているものだ。もっとも有名なものでいえば、Wikipedia(ウィキペディア)だろう。

Wikipediaは主に文章による情報が大半だが、今回紹介するのは「写真」に主眼を置いた「ズカンドットコム」というサービスだ。

その名のとおり、ユーザーたちが画像を投稿し、分類して一緒になって図鑑をつくりあげていくサービス。みんなで作る“育てる図鑑”というわけだ。

2014年4月時点で「ズカンドットコム」に掲載されている図鑑は、「Web魚図鑑」、「Webバラ図鑑」、「韓国料理図鑑」、「海辺の風景図鑑」など、計11種類。登録ユーザーになると、新図鑑の開設、既設の図鑑への画像投稿や分類、コミュニティ参加などが行える。トピックスの開設、画像投稿のWebサービスとみれば、画像まとめサイトに近しいが、画像を「分類」できるツリー構造を搭載していることが同サービスの肝であり、「ズカン」たるゆえんだ。

「ズカンドットコム」での分類は、従来の図鑑の「目次」に該当する。人気カテゴリであるWeb魚図鑑を例に挙げれば、Web魚図鑑>〜網>〜目>〜科>〜属といった具合で、投稿した魚の画像をデータとして詳細に整理することができる。もちろん、投稿ユーザーは初めから魚の情報を把握しておく必要はない。

画像をアップしておけば、その情報に詳しいユーザーの目に止まり分類してくれる。つまり、情報を得たいユーザーと教えたいユーザーが共存しており、その循環で自然に図鑑が作られていく仕組みであり、そこが同サービスの最大の魅力なのだ。

Web魚図鑑に登録されている魚種は現時点で約2900種、画像数は約37000件超。Googleで「魚」と検索すると2位に登場することから、一般検索ユーザーからの注目度も高い。また、2014年の2月にはiPhoneユーザー向けのアプリ版をリリースしており、登録ユーザーが軒並み拡大している。

同サービスを運営する株式会社ズカンドットコムは、2013年3月に設立されたばかりのベンチャーだ。2014年4月時点で、サイトへの来訪者数は月間10万から20万人。「KDDIムゲンラボ」の第5期生に採択されている。

パソコン通信「ニフティサーブ」の元シスオペが仕掛けた、九州発のベンチャー
ビジネスアイデア発想のきっかけ

order-2株式会社ズカンドットコムは、代表取締役である山出潤一郎氏と取締役兼エンジニアの直江憲一氏と中城亮祐氏で、2013年3月21日に設立された。3人とも九州の出身であり、ズカンドットコムを世に広めるべく上京した。

代表の山出氏は元々はエディター・編集者として、九州の出版・広告業界で活躍をしていた。フリーペーパーがまだ認知されていなかった時代から、数々のフリーペーパーの創刊を手掛けており、その分野でのパイオニアでもある。

また一方で、山出氏は無類の”釣りキチ“であったことから、ニフティサーブの「釣りフォーラム」のシステムオペレーターも務めていた。ニフティサーブと言われても、最近の方はピンと来ないかもしれないが、インターネット登場前のパソコン通信時代に国内最大の利用者数を誇ったサービスだ。

「釣りフォーラム」は釣行データや魚の画像などが掲載され、釣り人たちのプラットフォームとして会員数約14万人を数える人気ぶりで、1987年からスタートし、2005年まで運用されていた。この中で山出氏はネットを介して魚の画像を分類し、共有していければ面白いと考え、WEB魚図鑑の運用を開始。こちらも人気コンテンツとなった。このWEB魚図鑑のシステムをあらゆる分野に応用するために汎用化できないかという着想が、ズカンドットコムが生まれたキッカケとなった。

とはいえ、開発工程が膨大であることからなかなか取り組みが進まないでいたところに、友人から紹介された直江氏と出会った。片や40代の山出氏と、片やまだ20代で九州大学大学院でシステム情報科学府情報知能工学を専攻していた直江氏は、山出氏の構想・アイデアを聞いて意気投合。エンジニアとして参加を申し出た。

さらには、直江氏の誘いで同級生の中城氏も参加。若いエンジニア2人を得てWeb図鑑はプロジェクトとして飛躍的な加速しはじめた。

また、同プロジェクトに参加した直江・中城両氏は。25歳未満の優れたITクリエーターの発掘を行うIPA(情報処理推進機構)の2012年度未踏スーパークリエータに採択された。

元々、起業までは考えてはいなかった山出氏だったが、若き天才エンジニア2名と出会い、可能性が広がったことで、Web図鑑を本格的に事業化させたいと考えるようになった。また、直江・中城の両氏も、大手企業からの誘いを断り、大学院の卒業を間近に控えても、変わらずシステム構築に続けていた。

流石に心配になった山出氏は「就職はどうするんだ」と尋ねると、このままズカンドットコムを続けたいと言われ、否応なく2人の若いを「食わせる」ためにも、起業する決断をした。

そうして起業に至るまでの道のりを、山出氏はこう振り返る。「2人との出会いや、さまざまな方々の応援に背中を押されたと感じます。第三者割当増資を前提とする法人設立について、右も左もわからないので、地元の弁護士さんに相談に行きました。しかし、私たちのようなケースは珍しく要領を得ないため、どうしたら良いものか模索する日々でした。そうした中で転機となったのは、たまたま読んだ磯崎哲也さんの『起業のファイナンス ベンチャーにとって一番大切なこと』という書籍です。この書籍で起業のための手続きから、マネタイズや資本政策、IPOなどについて勉強しました。そして、試しに自分で作成した投資契約書を、ITベンチャーで実積のある増島雅和さんにいきなり送って、いろいろと指導を仰ぎました。このように、まったくの手探りでの起業でしたが、Web図鑑を世に広めていきたい一心で準備を進めました。」

そして集めた資金は1,550万円。山出氏のアイデアと若き才能を応援する地元の有志たちが出資してくれたそうだ。

会社を設立した後、最初にリリースしたのはWeb魚図鑑だ。釣りフォーラムから培った膨大なデータはまさに図鑑に呼ぶに相応しく、リリース後すぐに多くのユーザーを獲得し、順調な滑り出しを見せた。

その後も、数々の図鑑が誕生していく中で、「世界に通用するインターネットサービス」をコンセプトにKDDIが主催するインキュベーションプログラム「KDDIムゲンラボ」の第5期生にも採択され、2014年の1月に「オーディエンス賞」、「グローバルクリエイト賞」に輝いた。

KDDIムゲンラボでは毎月のように発表する場があり、そこに向けて事業計画やプロダクトを磨き込む日々が続いた。また、ムゲンラポのメンターからの指導も熱意溢れたものだったそうで、同プログラムを通じて事業はさらに加速していった。

対象ユーザーは全世界に! めざすは知を楽しむ人々の巨大プラットフォーム
将来への展望

山出氏に今後の展望を伺ったところ、同サービスを一層、汎用性のあるサービスとしていくためシステムのブラッシュアップを重ねながら、まずは企業向け有料サービスも視野に入れているという。

また、近日中には同サービスの起爆剤となり得る画期的なサービス展開を予定しているそうである。

ゆくゆくは多言語対応、海外進出計画も進めており、目標として国内外でユーザー1000万人達成を目指している。

山出氏曰く、これまで書籍で出版されてきた日本の図鑑は、海外のそれに比べ非常にクオリティが高いそうだ。山出氏の思いとしては、日本の図鑑をインターネット時代に即した、新しい「ZUKAN」として全世界に波及させていきたいと語ってくれた。

インタビューの最後に山出氏から、これから起業を考える人に対してメッセージを頂いたのて紹介したい。

「起業や新しいサービスを考えるにせよ、まず大切なのは 、自分の“思い”ではないでしょうか。『何をしたい』『どうなりたい』といった思いを突き詰めていけば、自ずと必要なアイデアや縁が生まれてくる。実際問題として起業や会社の経営には対峙しなければいけない試練は多々ありますが、結局はその思いがあればこそ、乗り越えていけるものだと確信しています。」

株式会社ズカンドットコム
代表者:山出 潤一郎氏 設立:2013年3月
URL:http://zukan.com/ スタッフ数:3名
事業内容:みんなで作るWeb大図鑑「ズカンドットコム」の運営
・多分野・多言語によるWeb図鑑システムの提供

当記事の内容は 2014/4/4 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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