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デジタルとリアルライフの融合を加速! 今ホットなデジタルウォレットサービスに登場したリピート率50%を超えるサービス。
展開している事業内容・特徴
ベンチャー界隈でホットな分野の一つが決済系サービス。以前スマビ総研でも紹介した「CLO」や「ユビレジ」。最近はリクルートなどの大企業も参入している。
今回紹介するのは、そうしたホットな業界の中でもぜひ注目しておきたいベンチャー、株式会社Showcase Gig(ショーケース・ギグ)。「O:der(オーダー)」というモバイルウォレットサービスを展開している。これはスマートフォンを介してユーザーは、クーポンやポイント、決済などを行えるもので、まさにこれまでの消費者が抱いていたサイフの概念を覆す次世代サービスだ。
2013年10月にサービスインを果たしたデジタルウォレットアプリ「O:der」は、iOSとAndroid OSの双方に対応しており、いわゆるO2O領域のサービスだ。
スモールビジネスを生業とする飲食店等のプラットフォームとして開発された、飲食・小売り店鋪と消費者を結びつけるアプリである。各店舗はO:derの加盟店になることで、デジタルスタンプや来店促進クーポン、近隣店舗検索機能を展開でき効果的な集客を望め、かつこれまで必要としてきた販促費用も大幅にカットすることが可能になる。また、デジタル顧客管理機能も備えており、マーケティング戦略も立てやすいといったメリットもある。
ユーザーサイドは同アプリをスマホにインストールすることで、各登録店舗が取扱う商品の「事前オーダーや決済」を行え、「デジタルスタンプやクーポンの特典」も受けることができる。
現在、サービスインから約半年が経過した同アプリの加盟店はおよそ50店舗。表参道のとあるバーガーショップではたった3ヵ月で約1500人という驚異的な顧客数を獲得している。またそのうちのリピーター率は50%〜70%。同サービスは販促ツールの決定打に乏しい“リアル消費”と“デジタル”の画期的な架け橋へと順調に成長を遂げている。
世界を見渡すとモバイルウォレットサービスで先行しているのはアメリカ。特にスターバックスが展開しているモバイルペイメントアプリは興隆を極めており、店頭決済の約10%以上がこのアプリによって行われている。
この成功例を受けて、追随する形でバーガーキングやダンキンドーナッツもモバイルウォレットへの参入を開始した。さらに、オークションサイトeBayの子会社「PayPal」やモバイル決済を事業とする「Spuare」、言わずと知れた「Google」などの企業群もプロジェクトを進行させており、今後もさまざまなサービスが展開される、サービス競争は苛烈さを増すと見られている。アプリ上で決済を行うという行為は、いずれグローバルスタンダードになるだろう。
しかし、一方の日本では、モバイルウォレットサービスはまだ産声を上げたばかり。実は携帯を使用した決済サービス自体は以前からあった。2004年7月にNTTドコモがサービス提供し、その後各通信キャリアがこぞって採用した「おサイフケータイ」である。ソニーの開発したFelica技術を携帯に採用したこのサービスは、携帯電話所有者の54.1%、スマートフォン所有者の45.8%(※FeliCa Networks 調べ)と、高いシェアを誇る。しかし、携帯電話やスマートフォン端末に依存したサービスであり、スマートフォン市場でもっとも人気のiPhoneがFelica技術を採用していないことから、国内のモバイルペイメントサービスは伸び悩みつつある。
ある意味、ガラパゴス化した日本のモバイルウォレットサービスの業界だが、ベンチャーがこぞって参入しているホットな分野でもある。
東京ガールズコレクションのプロデューサー、ミクシィなどを経て、起業。
ビジネスアイデア発想のきっかけ
O:derを展開する株式会社Showcase Gigの代表取締役を務めるのが新田剛史氏の起業に至るまでの経歴を紹介したい。
まず、仙台に居た中学生の頃に読んだ本の中で「将来社長をやるなら文学部や経済学部より法学部が良い」というくだりを見つけたことが記憶に残っており、新田氏は、東北大学法学部に進んだ。だが、実は大学入学直後から、法律の授業には興味が持てず、自身が本当にその道に進みたいのか、疑問を持つようになったという。高校時代から取り組んでいたバンド活動にのめり込み、普通の仕事よりも世の中にインパクトを残すような仕事をしたい、という想いが日に日に増していった。
「その後、バンド熱はヒートアップし、活動拠点を東京に移すため親に頼み込んで学業とバンドを両立させるからと言って、東京の大学に再入学までしました。当時のメンバーの中には今でもプロで活躍している人間もいますし、自分たちとしてはけっこう良い線までやっていたと思うんですが、なかなか思うようには行かないし、メジャーデビューしてもアルバイトをやめられない先輩がたくさんいることもわかって、さすがにそれで食べていくのは無理だと判断しました。ここで就職を選ぶことになったのは大きな挫折でした」
大学卒業後、新田氏は出版社を経てモバイルEコマース事業を運営する会社に入る。
「ネットは学生時代から大好きでそれこそ1日中見ていましたが、仕事においては出版という古い業界をまず見て、その後いきなりモバイル業界に飛び込んだので、かなりのギャップがありました。でも、imodeの白黒の画面だったので、今よりはまだ近い領域だったのかもしれません。当時は“モバイルバブル”とも呼ばれ始めた時期でもっとも勢いのあるビジネスに触れて興奮し、この世界を極めていこうと決めました」と新田氏は語る。
IT分野を自身のフィールドに定めた新田氏はその後、モバイルEコマースとリアルイベントの連動を標榜する東京ガールズコレクション草創期のプロデューサーを務め、2009年に株式会社ミクシィに入社する。東京ガールズコレクション時代にはソフトバンク孫正義社長にも直接プレゼンする機会を得て、その場で数億円のスポンサー発注を受けたこともあったという。ミクシィでは毎年300万人ものユーザーが参加するオンラインイベントである「mixi Xmas」や「ソーシャルバナー」などの大ヒットサービスを手掛け、確たる業績を残した。その背景の中で、新田氏に起業を勧める引き合いが多くなっていったこと、また当事者としてビジネスの栄枯盛衰を垣間みたことが起業への熱意に繋がった。2012年、Showcase Gigを設立した。
起業のタイミングに関して新田氏は「起業した時点では33歳と、若くはないと思います。早く独立すべきだ、というアドバイスは20代のころからたくさんもらったのですが、周囲に何を言われても、私自身が納得できるビジネススキルやノウハウ、コネクションを持ち併せているのか? ということを自分に問いながら最善と思われる時期を待ちました。ただ、最後の決め手となったのは仲間です。Showcase Gigのコアメンバーはミクシィから一緒に働いていたメンバーですし、取締役CTOを務める石亀も過去に合弁会社を共に設立した同志です。やはりITの領域でもっとも重要な、開発チームを得たことは大きかったと思います」と語る。
事業領域に定めたのは新田氏がこれまで実績を築き上げてきたO2O領域のサービス。その中でもスマートフォン、特にシリコンバレーの動向も見据えつつ、今後オンラインに閉じずに“リアル消費”分野でもそれらに準拠したサービスが必要となってくることは明確であることから、モバイルウォレットアプリサービスの構想を練った。そして、会社設立からおよそ一年後にリリースしたのがO:derというわけだ。
同社はO:derの他にも、O2O/オムニチャネル領域のサービス開発支援という形で、BtoBのソリューションも提供している。ソーシャルやO2Oなどの領域に圧倒的に長けたメンバーで、他にはないノウハウを持っている。そんな中で生まれたのがAppstore総合1位も記録したPontaポイントアプリ“ポンタイム”だ。今後はこういったBtoBビジネスにも引き続き力を入れていくという。
「日常の消費を向上させる」という大義を持ちサービス展開を行っていく。
将来への展望
インタビューの最後に新田氏は社としての展望と若き起業家へメッセージを語ってくれた。
「あくまでもO:derなどのサービスは手法であり、大切なのは私たちが掲げている『日常の消費を向上させる』という目標です。難しいテーマですが、そこを曲げずに今後も、ユーザーの生活にちょっとでも貢献できるサービスを展開させてきたい。そもそも圧倒的に規模の大きいアメリカはもちろんのこと、日本の市場規模の10分の1程度しかないと言われる韓国でも、その辺りを大きく掲げて王道を追及するベンチャーが日本より出ているように思います。日本はさまざまなスタートアップ、シードアクセラレーターやベンチャーキャピタルが短期間に登場しており、いろいろな意見が飛び交い、ある意味カオス的な状況で盛り上がっていますが、これから起業する方々は、あまり惑わされずに大切なことは何なのか、自分やチームの力量など含めて冷静に判断しながら、資金調達やサービス開発に取り組んでいくと良いのではないでしょうか。そんなベンチャーには日本はかなりチャンスが転がっている市場だと思います」
株式会社Showcase Gig | |
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代表者:新田 剛史 氏 | 設立:2012年2月 |
URL:http://www.showcase-gig.com/ | スタッフ数:17名 |
事業内容:ソリューション事業 プラットフォームサービス事業 |
当記事の内容は 2014/4/1 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。