ユニクロの現場から生まれたツール。短期離職率を改善するサービス「Pozica(ポジカ)」

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執筆者: ドリームゲート事務局

サービス業の現場で深刻な高い短期離職率を改善するツールが登場!
展開している事業内容・特徴

pozica-1ここ数年、「ブラック企業」というワードがメディアで跋扈している。もともとはネットの世界のスラングだったが、最近ではテレビや新聞など大手メディアでもよく話題となっているようだ。労使問題の難しさは、業績の高い組織ほど高く、そもそも人間同士の根本的な課題でもあり、なかなか抜本的な解決は難しい。

労働問題は、管理職やマネージャー職、店長職などの属人的なスキルに依存しがちで、かつそうした管理職側も激務のため部下を気遣う余裕がないことも多い。日本を代表する企業でも高い離職率がニュースとなっているが、そうした問題への対応策として、優秀なアルバイトやパートを正社員として採用することで、人材を確保する動きも出てきている。

今回紹介するのは、そうしたサービス業の現場スタッフの離職率を低下させるツール「Pozica(ポジカ)」。開発・運営元は株式会社wizpra(ウィズプラ)というベンチャーで、2013年3月にスタートしている。

“ポジカ”とは、“ポジティブカード”を略した名称。スマホを使った、社員、アルバイト、パートなどの従業員同士のコミュニケーションツールである。ポイントは「ありがとう」「さすが」などポジティブなメッセージを投稿するようにできていること。利用者はまずカテゴリを選び、全員が閲覧できるタイムライン上にメッセージカードを投稿する。

この仕組み、アナログでは「サンクスカード」というかたちで、スターバックス、JAL、リッツカールトンなどですでに使われている。「Pozica」はそれをスマートフォンで使いやすくしたものと思ってもらえればいい。各スタッフが投稿したメッセージデータから、有用な“改善事例”を集めて可視化し、有効な経営手法として活用できるシステムも搭載している。

取材した2014年2月時点では、クローズドベータ版で開発を進めている段階で、正式版は2014年4月にリリース予定。一人当たり月額400円程度と非常にリーズナブルな価格で、小規模な企業でも導入がしやすいと思われる。

実際の離職率の改善では、実験導入している企業で効果測定を行っており、そこで蓄積した知見、ノウハウを検証しながら、正式版リリースの準備を進めているという。

高すぎる離職率を合理的に改善する方法を模索。ヒントはユニクロの現場から
ビジネスアイデア発想のきっかけ

pozica-2離職率を下げることは、当然だが、効率的な経営をするうえで大きな課題である。とあるサービス系企業は、現場スタッフの年間離職率が100%超。つまり1年以内にスタッフが一回転するという驚きのデータもある。そこまで極端なケースではなくても、年中スタッフ募集を続けなければならないほど高い離職率に悩まされているサービス業は多い。当然、採用費用も膨大になるが、抜本的な解決がなかなかできていない。

wizpraの代表である今西良光氏によれば、高い離職率を下げるポイントは“はじめ”にあるという。

例えば、新しいスタッフが入ってきても、店長や先輩スタッフが忙しすぎて十分にコミュニケーションや指導ができないことは多い。これが離職率を高める大きな原因なのだ。

それを裏付ける根拠として、「あるサービス業界では辞めていく人の半分は2カ月以内の短期離職」、というデータがある。新人が現場に溶け込めなかったり、十分な受け入れ態勢ができていなかったり、そもそも店長や先輩が忙しすぎて仕事を教えられないことがその原因だ。

そこで、新人は入ってすぐスマートフォンのツール「Pozica」を使う。すると新人に宛てて、他のスタッフから、ツール経由で「はじめてまして」「頑張ろうね」「わからないことがあれば私に聞いてね」といったメッセージが届く。そうしたポジティブなコミュニケーションをキーにして、新人の短期離職率の改善ができれば、経営に大きなインパクトが生まれると考えた。

また、ポジティブなコミュニケーションからは、前向きな“改善”も生まれやすい。そうして投稿されたアイデアや事例をスタッフ間で共有することで、忙しい店長や管理職なども、マネジメント向上に関するアイデアをキャッチアップできる。またそれらのアイデアは、経営陣にもそのままフィードバックされる。

もともと、こうした従業員満足度(ES)や現場からの改善要求を管理・運営するシステムはあったが、利用者が無理矢理使わされている為、うまく機能しないケースが多かった。そこで同社は、現場のスタッフ全員が手軽に使えるスマートフォンをメイン端末として利用者が手軽に楽しく使える事にこだわった。

この発想は、今西氏が実際に経験から学んだものだ。

今西氏は過去の就業経験の中で、同僚が精神的な病になってしまったり、自殺する等の状況を目の当たりにし、大変なショックを受けたという。

また、ユニクロ時代には、サービス業の店舗マネジメントの仕事に従事するが、ここでマネージャー職の過酷さを体験した。このままでは部下とのコミュニケーション、指導など十分にできない……。それでも、ユニクロでは、店舗によってESシステムやサンクスカードなどを活用し、従業員満足と顧客満足を向上させ、実際に結果を出している店長もいた。しかし、使いこなせるかどうかは店長の力量しだい。そんな属人的な課題を仕組みで変えてみたいと思った今西氏は、起業を前提にして2012年、早稲田大学大学院のMBAコースに進んだ。そこで共同創業者である飯尾礼治氏と出会い、現在のビジネスプランをつくり上げた。

そうして大学院在学中に、飯尾氏と共に創業。資本金の300万円からのスタートだった。本社所在地は早稲田大学インキュベーションセンター。また、NTTドコモ・ベンチャーズが運営しているベンチャー支援プログラムの第2期に参加している。

ちなみに、ツールの開発自体は順調ではなかったようで、最初に半年ほどかけて開発したシステムは、そのままではうまくいかないと判断し、一度ゼロリセット。現在、リリースを予定している「Pozica」を、そこから3カ月ほどかけて再開発したという。

日本が誇る「おもてなしの心」を、システム化して世界に届けたい
将来への展望

もうすぐ本格リリース&サービスを開始する同社だが、今西氏に今後の展望を伺ったところ、まずは初年度のユーザー獲得目標は100社。

また、3~5年でやりたいことは、ESの部分だけではなく、「Pozica」を現場の非効率や不遇を改善するプラットフォームサービスに成長させること。また、もう少し長いスパンでは、日本だけではなく、世界中の組織の人が、いきいきと働ける現場をつくっていきたいというのが、同社の理念だ。

「日本はおもてなしの国。そんな日本のサービスクオリティを高める仕組みとして開発したのが“Pozica”。これを進化させ、世界中のサービス業の水準を向上させるようなサービスを目指したい」と今西氏。

小売や飲食、理美容などのサービス業の現場スタッフは、過酷な労働を強いられている。離職率の高さはその表れでもあるが、そうした問題を自らの経験から解決してやろうと立ち上がる人は稀なのかもしれない。

日本はモノづくりの国といわれて久しいが、サービス業の質の高さも十分に称賛されている。「サービス業の質、世界一の国はどこ?」「もちろん、日本だよ」。そんな答えが、世界中の人々から返ってくる日も、そう遠くない未来に来るかもしれない。ぜひとも成功してほしいベンチャーである。

株式会社wizpra
代表者:今西 良光 氏 設立:2013年3月
URL:http://www.pozica.net/  
事業内容:社員同士の感謝の気持ちを見える化し、社員満足度と企業の生産効率を上げる、企業向けのコミュニケーションツール「Pozica(ポジカ)」の開発・運営。

当記事の内容は 2014/3/4 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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