- 目次 -
従来の目覚ましの概念を覆す、光を使った新しい目覚まし時計。2012年9月から累計1万台弱を販売。
展開している事業内容・特徴
最近よく耳にする“朝活”というキーワード。意識的に早く起床し、始業前の時間を活用して運動や読書などの趣味を行う、新しいライフスタイル、ワークスタイルだ。
最近では、過剰な残業時間を削減し業務を効率化し、社員の健康増進にも寄与できると企業も注目しはじめている。例えば、日本を代表する総合商社である伊藤忠商事は、「午前5時から午前9時までの時間帯に勤務を行った社員」に対して、賃金を引上げる制度を2013年10月から導入した。近い未来、趣味、仕事のゴールデンタイムと言えば“朝”という時代がやってくるかもしれない。
しかし、そんなことが流行っても困るよ…朝早く起きるのは辛いという方も多いだろう。目覚まし時計を使っても、起きるのはいつもギリギリ。眠気まなこで会社に出勤、ようやく仕事のやる気が出るのは昼を過ぎてから。朝に弱い人々にとって、“朝活”はハードルが高い。
そんな朝に苦手意識を抱く人へ朗報がある。それが、今回紹介するムーンムーン株式会社が開発・販売を行う、画期的な目覚まし時計「OKIRO(オキロー)」だ。
従来の目覚まし時計といえば、けたたましい音が鳴るのが一般的。大音量で強制的に眠りを覚まさせるものである。しかし、「OKIRO(オキロー)」は音を一切出さない。では一体、何が深い眠りに落ちた我々の目を覚まさせるのか? それは、「光」だ。音ではなく、光で起きる目覚まし時計なのである。
形状と機能はデスクライトに似ている。使い方は、従来の目覚まし時計と同様に、起床時間をセットして床につく。すると、設定時間30分前からライト部が徐々に明るくなり、起床時には最大光量が照射される。72個のLEDが照らし出す光の最大光量は1万3000lx(ルクス)。晴天時の朝の太陽光以上の明るさで、家庭用の蛍光灯の約25倍以上だ。
人間の体は、睡眠中に網膜に一定(2500lx以上)の光を受けると、脳の覚醒を促進させる物質であるセロトニンが活性化し起床体制に入る。つまり、この生理現象を利用したのが、光目覚まし時計の仕組みなのである。
また、OKIROは快適に目覚められるだけでなく、同時に、質の高い睡眠も促してくれる。
“眠らない”社会になって久しい。コンビニやファミレス、パソコンにスマホなどは、際限なく我々に刺激を与え続ける。朝もなく夜もなく、24時間いつまでも制限されないので、活動する分には理想的かもしれないが、この状況は睡眠にとっては悪環境である。現に、なかなか寝つけず、起きたい時間に起きれない、いつまで寝ても足りないといった睡眠障害が現代人に増えている。
この障害の要因はいくつかあるが、我々の遺伝子に組み込まれている「体内時計」の乱れが、大きな一因である。元来、人間は1日24時間ではなく、約25時間周期のリズムを持つ。そのままであれば外界とのズレが生じるが、それをリセットし24時間周期に適応させるのが太陽の光であり、強い光を浴びて目覚めると、14~16時間後に眠気を促すメラトニンという物質が分泌されることが確認されている。つまり、太陽の光を浴びることが、快適な睡眠を生むのだが、「朝日を浴びて起きる」ことは上述したように、時に制限されない刺激の多さやライフスタイルの多様化を鑑みれば現代人には容易ではない。睡眠障害は現代病と言ってもいいだろう。だからこそ、太陽と同等の光を放つ当製品はいわば “快眠時計”でもあるのだ。
2012年9月の発売以降、順調に販売台数は増え、2014年1月時点で累計1万台弱。価格は1台2万円ほど。消費者からの反響も大きく、楽天では半年ほど目覚ましランキングで堂々の1位を取得、アマゾンの快眠グッズランキングでは継続して上位をマークしている。ムーンムーン株式会社は「快適な睡眠」をコンセプトに当製品以外にも「睡眠アロマオイル」、「睡眠CD」、「休息サプリメント」などの快眠グッズを販売し、収益としている。設立から4年目を迎えるが、拡大する現代の睡眠関連市場で確たる地位を築きつつある。
自身の不眠症が改善した感動を伝えるべく、企業を決意。
ビジネスアイデア発想のきっかけ
「OKIRO(オキロー)」が誕生したのは、代表取締役を勤める竹田浩一氏自身が不眠に悩まされていたのがきっかけである。寝つきが悪かった幼少期に端を発し、成人となってからの昼夜逆転の生活で深刻な不眠状態に陥っていた。なんとか快眠を得ようと枕やマットレスなど、あらゆる寝具にトータル100万円以上は費やしたそうだ。
そしてある時、たまたま知人から海外では音ではなく光で起きる目覚まし時計が普及しており、特に米国ではニーズが確立されているとの情報を聞く。
当初、竹田氏は自分の不眠に対する効果は期待していなかったという。しかし、物は試しと、取り寄せ使用してみると、その効果はすぐに現れた。昼夜逆転、決まった時間に起きるのも困難だった不眠が改善され、毎日、規則正しく朝5時に起床し、夜は10時に眠る生活を手にした。
不眠を改善できたという実感と、光で起きる特異性を広めたいという気持ち。これが、会社設立のきっかけでもあるが、OKIROが製品になるまでの試行錯誤の始まりでもあった。
ここで、開発に至る経緯を記す前に竹田氏の経歴を紹介しておきたい。
時は2004年。熊本の大学でキャンパスライフを送っていた竹田氏が起業への興味を抱いたのは、DREAM GATEがきっかけだ。起業に興味を持ち、ECサイトを立ち上げた。興味本位で始めたことだったが、これが成功して、大学生では考えられない額の収入を得るようになった。
そこで、ビジネスの妙味を知り、在学中の2005年に本腰を入れて起業した。サッカーや野球など、スポーツ系ノウハウDVDの販売を主事業とするチクデン株式会社という名の会社を設立。
立ち上げてすぐ多くの引き合いがあり、起業家として順風満帆の日々を送る。そして、設立から5年が経ち、光目覚まし時計と出会った。
先に述べたように睡眠障害を克服できた感銘を世に広めたいと、チクデン株式会社は他人に譲渡し、2011年7月にムーンムーン株式会社を設立。日本版光り目覚まし時計の開発に着手した。
竹田氏はまず、世界で販売されている光目覚まし時計を数十台取り寄せ、構造を把握すべく研究を行った。しかし、これまでものづくりの経験はなく、商品開発においても素人同然で。容易にできると考えていたが、開発は難航した。20万円を支払い中国のメーカーに試作機を発注した時は、外見だけで、中身はもぬけの殻…といった失敗も経験もあった。
最終的には、自身が効果を実感した光目覚まし時計を生産する米国メーカーに直談判に行き、ノウハウを習得。ようやく製品化に至った。
そこから、「OKIRO(オキロー)」販売が始まるわけだが、まず心がけたことは製品を売り込むのではなく、「光で起きる文化」を広めることだったという。スタッフとともに各出版社やテレビ局を一件、一件訪ね歩き、根気よく説明していった。
この営業スタイルは功を奏し、徐々に情報自体の珍しさと製品の特異性が広まり、各メディアからの取材依頼も増えていった。特に関西で放映されている朝の情報番組「おはよう朝日です」内で「OKIRO(オキロー)」が紹介されたのを期に、販売数が軒並み増えていったという。
現在、同社は熊本と東京に本社を置き、スタッフは総勢7名。熊本本社は在庫管理と顧客サポートと受注を担当し、東京本社では販路開拓や新製品の考案、メディア対応を行っている。東京と熊本間にはテレビ会議システムを導入し、24時間リアルタイムで会議を行えるようにしている。
広がる光の用途。光のパイオニアとして暮らしの健康に寄与していきたい。
将来への展望
「OKIRO(オキロー)」は目覚まし時計という以外に、「リラックス」、「医療」といった分野に応用でき注目を集めている。セロトニンの活性は鎮静作用があることから、業務効率の向上を目的に社員のリラックスを図るため、日中の社内での使用に購入する企業もあるそうだ。
特に注目されているのが医療分野である。20万部を超えるベストセラー「脳からストレスを消す方法」の著者であり、セロトニン研究の第一人者でもある東邦大学名誉教授 脳生理学者 医師の有田秀穂氏が「OKIRO(オキロー)」を使用したセロトニン増加実験を実施、その優れた効果を確認し、自身が主催するメンタルヘルスケア施設「セロトニンDojo」に導入している。また、睡眠障害治療に実績を持つクリニックのRESM新横浜でも当製品が採用されている。さらに、海外では照度の高い光を照射することでうつ病を治療する“高照度療法”が行われていることから、うつ病治療への適用にも期待されており、医療機関からの注目度は高い。
また、海外へ渡航した際に悩まされる”時差ボケ“にも効果を期待でき、海外遠征を行うプロスポーツ選手などの時差ボケ改善グッズとしての展開も視野に入れている。
同社は当製品をベースに、上記のようなさまざまな分野のユーザーが利用しやすいように形状や大きさなどに改良を加えたニューラインアップの開発を推進させている。そして、当製品の市場価格は19,800円であるが、従来の目覚まし時計と比較すれば高額なことから、製造コストを見直し買い求めやすい価格での提供を検討し、一層の普及をめざしている。
インタビューの最後に、今後の目標と、起業家としての豊富を竹田氏に語ってもらった。
「OKIROをはじめ、販売事業が主力となってはいるが、あくまでも大切なのはどう売るかではなく、光で起きる文化を日本に根付かせ、光と睡眠の関係性を知ってもらうこと。光目覚まし時計の効果を実感した私がそれを広く啓発し、人々の快眠と暮らしの健康に寄与していきたいと思っている。そして、起業家としては数年先になるだろうが、睡眠関連の先進国である米国へ渡米し、先端の技術やノウハウを吸収し、日本の睡眠におけるパイオニアをめざしたい」
目覚ましの音で起床すると、ストレスの元となるノルアドレナリンが分泌されやすいという。ストレスフリーの光目覚まし時計「OKIRO(オキロー)」と竹田氏の啓発は、必ずや日本の睡眠関連市場に革命を起こしていくことだろう。
ムーンムーン株式会社 | |
---|---|
代表者:竹田浩一 | 設立:2011年7月 |
スタッフ数:7名 | URL:http://www.moonx2.com/ |
事業内容: 睡眠関連事業 健康関連事業 |
当記事の内容は 2014/2/6 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。