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起業半年で黒字化達成! 金融ノウハウのコンテンツビジネスで急成長中
展開している事業内容・特徴
情報の非対称性、あるいはノウハウを秘密にすることで儲けるビジネスモデルは、インターネットの登場・普及とともに瓦解しつつある。金融業界もその流れの中にあるが、まだまだ手つかずのままのマーケットも多い。
例えば、証券会社の営業マンは、顧客にさまざまな情報を提供して、金融商品を販売している。超大手の証券会社であれば社内に優秀なアナリストやリサーチ部門を抱え、独自の情報やノウハウを自前で用意できるが、中小の証券会社や金融機関ではそうはいかない。そうした金融業界、特にリテールの営業担当者向けに情報提供しているベンチャーが、今回紹介する株式会社ZUU(ズー)だ。
2012年9月に創業し、2013年4月に法人化。その半年で、すでに黒字化を達成し、今も急成長を続けている。
同社のビジネスモデルは2つの軸から成り立つ。1つは金融情報を個人投資家向けに提供しているメディア事業。もう1つが金融アドバイザー事業で、主に富裕層を顧客とするするプライベートバンカーや独立系のファイナンシャルプランナー向けの営業情報支援サイト「ZUU Advisors」を展開している。
メディア事業に関しては2014年1月現在、富裕層向け金融ポータルメディア「ZUU online」をはじめ、最近よく耳にするNISA専門メディア「NISA online」、海外向け国内不動産メディア「Tokyo Premium Real Estate」、海外に移住しようと考えている富裕層に対して情報提供する「海外進出online」など7つのWebサイトを運営中。2月には8つめのサイトもオープンする予定だという。
これら各メディアで提供している金融コンテンツは、専門のライター200人以上が執筆。独立系の各金融関連のプロフェッショナルや金融業界をリタイアした主婦などを集め、良質なコンテンツを低コストで大量生産。主な読者ターゲット層は、国内に1000万世帯以上あるといわれている保有金融資産3000万以上の個人。いわゆる富裕層に向け、“金融問題解決型メディア”というコンセプトで、さまざまな情報を提供している。
一方、金融アドバイザー事業は、金融商品の販売に携わる会社員、ファイナンシャルプランナー等が対象だ。当然だが、大手金融機関に比べ、中堅金融機関、個人は情報力が圧倒的に足りない。株式会社ZUUの代表を務める冨田氏によれば、一番手の会社が持つ情報力を100とすると、二番手の会社では50、三番手になればさらにその3分の1程度になるという。その格差解消が狙いだ。
創業前に想定していた同社の収益源は、広告収入と金融アドバイザーサービスの利用課金。しかし、ふたを開けてみれば、それ以外にコンサルティングや講演依頼や営業担当者向けの研修、あるいは他サイトからのコンテンツ制作の依頼など、想定外のニーズがあることがわかった。そうしたウェブサイトが起点となり、インバウンドでの想定外収益もあって、起業後半年での黒字化が実現したそうだ。
2014年1月現在、同社のスタッフは25名。ほか、各業界の専門家といわれる協力者が約50名、コンテンツ制作ライターが200名以上という陣容で、すでに海外拠点の開設も進めている。
まだ手つかずの巨大市場の存在に気づき、金融×ITの強みを生かして参入
ビジネスアイデア発想のきっかけ
創業者の冨田和成氏が起業に目覚めたのは、大学に入学してからのこと。高校まではサッカー漬けのスポーツ少年だったそうだが、1日14時間もの猛勉強で一橋大学経済学部に合格。そこでスイッチが入った冨田氏は、大学在籍中にソーシャル・マーケティング・ビジネスで起業した。
しかし、そのまま起業家・経営者としての道は歩まず、いったん大きな組織で営業力と財務周辺スキルを身につけようと思い、野村證券に入社する。支店営業にて同年代のトップセールスや会社史上最年少記録を樹立し、最年少で本社の超富裕層向けプライベートバンク部門に異動。その後、シンガポールのビジネススクールへの留学、タイへの駐在を経て、企業オーナー向けのコンサルティング業務に従事した。
独立のきっかけは、2011年5月に、シンガポールでビジネスプランコンテストに出場したこと。フィナンシャルタイムズの「Masters in Finance Post-experience」で世界No2、アジアNo1を獲得するSingapore Management Univのビジネススクールのプログラムが主催したコンテストだったが、5人のファイナリストに選ばれた。その時に、世界中の金融×ITビジネスを調べていたところ、まだ誰も手をつけていないマーケットがあることに気づいた。
それは金融に関するノウハウや知見が、大手以外にあまり流通していないこと。日本だけがそのような状態かと思いきや、欧米でもさほど変わらない。つまり世界中でまだそのマーケットは大手が情報を独占し、クローズされたままだったのだ。
日本国内の金融リテールマーケットから得られる手数料収入は、野村証券だけでも年間5000億~6000億円。証券業界全体で考えると4、5兆円という規模になる。銀行や保険業なども合わせると、さらに大きくなる。そして世界中で考えれば、その規模は数十兆円から数百兆円。そうした巨大なリテールマーケットにチャンスがあると気づいたのだ。そこで本格的にビジネスを展開すべく、まずは会社員のまま個人でWebサイトを開始。2013年3月に野村證券を退職し、同社を設立した。
しかし、最初からうまくいったわけではない。まず、金融コンテンツを量産するための人材がなかなか集まらなかったのだ。コンテンツを大量生産する仕組みがビジネスモデルの重要なポイントだったが、その体制が出来上がるまでは不安との戦いだったという。
仕事のやり方を根本的に変えなければならないと考え、コンテンツの社内制作をあきらめ、外部のブレーンにアウトソーシングすることを決断。そこから徐々にユーザーが増えていった。
冨田氏曰く、「コンテンツは量×質だ。ニュース系のメディアであれば事実を追っているだけなので、量があれば問題ない。しかし、うちが目指しているモデルは、違う。質を確保しながらも量産しなければならない」。その思いを早い段階で確立したわけだ。毎月のように新サイトがリリースできるというスピード感、それが同社の加速度的な成長を支えている原動力だ。すでに英語版メディアが立ち上がり、海外展開がスタート、今年中の海外法人の設立も視野に入れながら、コンテンツ強化への投資を続けている。
夢は世界一の大企業! 24年後には時価総額50兆円を目指す
将来への展望
冨田氏に今後の展望を伺ったところ、「夢は世界一の大企業、24年後には時価総額50兆円を目指す」という答えが返ってきた。冨田氏が55歳になるのが24年後。その時点で身を引いて、チャリティー事業に取り組みたいという。
実は、教師になりたかったという冨田氏。教員免許も持っているそうだ。起業時にも金融ではなく教育をテーマにした事業も検討していたそうで、今のビジネスが成功した後に、教育分野に挑戦したいというのがもう1つの夢だ。
チャリティー事業として例を挙げると、マイクロソフトの創業者であるビルゲイツの「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」が有名だ。世界最大規模の慈善基金団体として知られる同財団は、病気や貧困への挑戦、教育機会の提供などを行っているが、冨田氏が目指すのはビル財団よりはるかに大きな100兆円規模のチャリティー事業だという。あまりに壮大なスケール感に圧倒されてしまった。
最後に、取材時にいただいた富田氏のコメントを紹介したい。
「夢や目標を持ってそれに向かって100%で走っている人は、みんな輝いている。夢や目標のために努力したことを後から振り返った時、例えどんなに苦しくても、悲しくても、辛いことがあっても、幸せな状態だったと思えるはず。人生は終わりなき旅というが、夢や目標を追い続けることが人間のひとつの価値であり、人生の醍醐味。恋人や家族、友だち、いろんな幸せがあっていいと思うが、私の中で、特に人に熱が伝えられて、かつ充実する部分は“夢や目標に向かって100%で走っている状態”。それを一言でいうと『南極の氷が溶けるほど世界を燃え上がらせたい』。世界中の人たちが夢や希望を持って熱く燃え上がっている世界をつくりたい」
株式会社ZUU | |
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代表者:冨田 和成氏 | 設立:2013年4月 |
スタッフ数:25名 | URL:http://zuu.co.jp/ |
事業内容: 1. 金融アドバイザーの比較マッチングサイトの開発運営 2. 金融アドバイザー向け営業支援情報サービス「ZUU Advisors」の運営 3. 富裕層向け金融メディア「ZUU online」「NISA online」「Tokyo Premium Real Estate」「Real-Estate online」「FOREX online」「海外進出online」等の運営 4. 金融機関・営業マン/アドバイザー向け研修・コンサルティング事業 |
当記事の内容は 2014/1/28 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。