- 目次 -
「包む」専門店という新たな定義づけをしたサムギョプサルチェーン店
展開している事業内容・特徴
「包まぬ豚はただの豚」というユニークなキャッチフレーズと緑の豚のキャラクターが目を引くサムギョプサル専門店「ベジテジや」。2006年京都に第1号店がオープンし、現在では系列店も含め全国に22店舗を構えるチェーン店に成長している。
サムギョプサルとは韓国料理の定番メニューのひとつで、一般的には豚の三枚肉を焼き、タレを付けたりサンチュなどの葉で包んで食べる料理だ。しかし、ベジテジやでは「サムギョプサル=何でも包んで食べること」という新たな定義付けをし、一般的なサムギョプサルの常識にとらわれない多彩なメニューを展開している。たとえばチーズや納豆などトッピングは30種類、包み方はなんと10,000とおりもあるという。自分オリジナルの食べ方を楽しむことができる娯楽性と、野菜をたくさん摂ることのできるヘルシーさを兼ね備えたベジテジやのサムギョプサルは、特に若い女性からの熱い支持を集めている。
自分が宇宙一知っているサムギョプサルを日本で広めるためには
ビジネスアイデア発想のきっかけ
ベジテジやを運営する株式会社ゴリップの代表取締役勝山昭氏は、20代前半の頃からいくつかの起業をし、20代後半の数年間は韓国で中古ゴルフクラブの販売を手掛けて過ごした。30代突入を前に日本へ戻り、新たな事業を始めようと考えた時、たどり着いたのが「サムギョプサル」だったという。
「せっかくだから大きなスケールで、自分が宇宙一になれるものは何だろう、と考えた時に、もしかしたら僕は世界で一番サムギョプサルを食べているかもしれない、と思ったんです。というのも、韓国在住時、お金の無い僕は会社で寝泊まりをし、会社の目の前にある安いサムギョプサル屋で毎日サムギョプサルを食べていました。どんなにサムギョプサルが好きな韓国人でも、1年365日ずっとサムギョプサルを食べている人はいませんよね」。消費者として自分が宇宙一知っているサムギョプサルなら、事業としても戦える。この感覚がベジテジや立ち上げの第一歩となったのだ。
しかし、サムギョプサルを日本で展開するには、文化の違いによる決定的な壁があった。というのも、韓国では焼肉と言えば豚肉を指すのに対し、日本では牛肉がイメージされる。サムギョプサルをそのまま日本に持ち込むと、「焼肉のサイドメニュー」「牛肉の廉価版焼肉」というだけの位置付けになってしまうのだ。
どうすれば日本でサムギョプサルを浸透させることができるのか、この問いに勝山氏が出した答えが、「サムギョプサル=何でも包んで食べること」という新たな定義付けをすることだった。
「『包む』ということにコンセプトを置いた飲食店は日本でおそらく初めてだったと思います。サムギョプサルの定義を『豚の焼肉』から『包んで食べる料理』に替えた途端、韓国料理という縛りからも解放されて、一気に自由な発想ができるようになったんです」。日本人の味覚にあわせて「何と何を包んで食べたらおいしいのか」と考えていくと、チーズと豚の組み合わせなど、韓国料理としてはあり得なかったメニューも誕生した。こうしてベジテジやは日本オリジナルのサムギョプサル専門店として歩み始めたのだ。
誰もやっていないことでNo.1になって、徹底的に深めていく
成功のポイント
「起業して成功する為にはどうしたら良いのか?」、この問いに対する勝山氏の答えは「最初から業界No.1であること」、そして「徹底的に深めていくこと」だ。
まず、最初からその業界のNo.1であること、一見難しそうにも思えるが、つまりは誰もやっていないことをすれば、最初からオンリーワン、かつNo.1の存在になることができる。ベジテジやの場合、焼肉の延長ではないサムギョプサル専門店はこれまで存在しなかった。「包む」ことに焦点を当てるビジネスモデルにしたからこそ、ベジテジやは最初からサムギョプサル業界でNo.1になることができた。「そもそも敵がいなければ、何でも一番になれます。新しい価値、市場を創り出しているからこそ、値下げ合戦に陥ることもなく、利益が出てビジネスが成り立つんです」というのが勝山氏の見解だ。
しかし、参入障壁の低い飲食業界では、新しいことを始めて成功したら、すぐに真似されるのが当たり前。それでも生き残って勝ち続けて行く為には、ビジネスモデルを徹底的に洗練させ深めていくことが必要不可欠となる。
ベジテジやの場合、まずは食材に徹底的にこだわっている。「包む」動作の主役であるサンチュは、包んでも折れず、女性に一口で食べていただけるよう女性の手のひらのサイズに合わせたものを独自に研究開発し、今では自社農園で自ら栽培も手掛けている。
ソフト面については、「べジテジカレッジ」という教育システムの下、アルバイトも含めスタッフ全員がプロフェッショナルな「サムギョプサルの伝道師」となるべく、数百ページの教科書を学習する。たとえば焼きあがった豚肉を男性は2.5㎝、女性は2㎝に切ってサービスするなど、ベジテジやには非常に細かいマニュアルが数多く存在する。そのどれもが、膨大な時間と労力を掛けた研究と分析によって編み出されたものだ。
このようにビジネスモデルの深化を徹底することにより、他店の追随を許さない存在となり、No.1で在り続けることができる。このサイクルこそ、ベジテジやが拡大を続ける要因と言えるだろう。
農業と飲食店が一体となったビジネスモデルを確立させて世界へ
将来への展望
サンチュを筆頭に、野菜をすでに自社栽培しているベジテジや。次のターゲットは、サムギョプサルの心臓部でもある豚肉だ。すでに来年には自社で養豚場を経営する計画が進んでいる。自らの手で作りあげた美味しい豚肉を武器に、今後はサムギョプサルだけでなくトンカツ等も含めた豚肉料理業界で日本一になることを目指している。
さらに、農業への取り組みにもさらに力を入れ、第一次産業(農業)から第三次産業(サービス業、小売業)まですべてを手掛ける企業になることがベジテジやの次なるステップだ。まず農業+飲食店というビジネスモデルを日本で確立させ、そのビジネスモデルごと海外輸出することも視野に入れている。
自らのビジネスをサムギョプサル「革命」と呼び、常に新しい価値観を模索、提案してきたベジテジや。その根本にあるのは『美味しい物を世界中に広めたい』というシンプルな思いと、洗練されたビジネスモデルが、世界の食事情に革命を起こす日は近いかもしれない。
株式会社ゴリップ | |
---|---|
代表者:勝山 昭 | スタッフ数:46名(アルバイト含む約380名) |
設立:2005年5月30日 | URL:http://vege-teji.com/ |
事業内容: 飲食店経営 |
当記事の内容は 2013/10/23 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。