- 目次 -
英語学習ブームが追い風に――。英語学校兼シェアオフィスビジネスを展開
展開している事業内容・特徴
楽天の社内英語公用語化の衝撃は記憶に新しいが、ここ数年、英語学習ニーズはますます熱を帯びてきた。しかし、忙しいサラリーマンが、細切れの時間を見つけて国内で英語を学んだとしても、なかなか身に付きづらい。
やはり直接英語圏で学ぶメリットは大きく、「時間があった学生時代に語学留学していればと…」と後悔しているような方々も多いだろう。今回紹介するのは、英語圏のフィリピンで語学留学カリキュラムを提供しているベンチャー、ユナイテッド・リグロース株式会社だ。
コンセプトは「オトナ留学」。そのキャッチフレーズのとおり、学生向けではなく社会人向けに特化している。フィリピンのセブ島に滞在しながら、短期集中で英語が学べる学校だ。
留学自体にかかる費用は、1カ月で授業料、テキスト代のほか、ホテル宿泊費、食費※1、掃除費、洗濯費など込みで20万円ほど。往復航空チケット代もセットのコースもあるが、こちらも25万円程度とリーズナブル。
※1 食費はホテルの朝食代で昼・夜は別
実はフィリピンのセブ島ではこうした滞在型の英語教育ビジネスが盛んで、すでに100校ほどがしのぎを削っている。しかし、その大半が韓国人向けで、日本人向けの学校はまだまだ少ない。
同社はそこに目をつけて2012年10月に参入。しかし、普通に参入したのでは面白くない。そこで、シェアオフィスも同時に併設したというわけだ。
その狙いはこうだ。英語学校に通いつつ、シェアオフィスも借りれば、現地でも仕事ができる。シェアオフィスには、インターネット回線はもちろん、コピー機なども用意。日本なら無線LANやモバイル環境が整備されているため、パソコン一つあればどこでも仕事ができるようになってきたが、フィリピンではまだそうはいかない。特に安定したインターネット回線がまだ少ないので、ビジネスで使えるインターネット回線が確保されている場所は貴重とのこと。
もちろん、同社の英語学校に通っていなくても、同社のシェアオフィス・コワーキングスペースのみでも利用できる。英語学校が集積しているという立地から、英語学校に通う日本人が集まれるコミュニティづくりというのも狙いの一つだ。
同社がこのビジネスを開始したのは2012年10月。サービスインしてまだ半年足らずだが、英語学校の生徒数、シェアオフィスの利用数はすでに数十人規模に上る。追加募集も行っており、生徒数、利用者数に応じて、増床も検討していくとのこと。また、海外販路開拓サポートなどの事業も同時に展開し、すでに単月黒字化も達成している。
低コストで綺麗な英語を話す人材が豊富なフィリピンに着目
ビジネスアイデア発想のきっかけ
ユナイテッド・リグロース株式会社の創業メンバーは3名。代表の呉宗樹氏と鈴木光貴氏は東急リバブル社の同期社員。鈴木氏は25歳の時に九州拠点のファンド会社に転職し、そこで出会ったのがもう一人の創業者である渡邉和喜氏。
3名とも同世代で元々起業をしたいという共通の思いがあった。どうせやるならば日本に居て起業するだけでは特に注目もされない。最初から急成長しているアジアマーケットに直接出て現地で挑戦してみようと、それならば3人で一緒に挑戦しようと話しが盛り上がったのがきっかけだ。
そして、まずは3人共大の苦手だった英語を克服するために短期間のフィリピン留学を経験。それが2012年8月頃のこと。そこで、同地での英語学校マーケットとその後のさまざまな可能性に気づき、2ヶ月の留学後、そのままフィリピンに滞在し、会社を設立した。
しかし、調べてみるとフィリピンでの法人登記費用は日本円で30万円ほどと日本と同様に意外と高く、法人税率も30%とこれも日本と大差ない。ちなみに、日本での中小企業の実行税率は、資本金1億円未満の場合、2013年8月時点では25%ほど。
ただ、「PEZA(ペザ)」という外資の進出支援制度があり、これに登録すると法人税が3~6年間免除になり、さらに消費税も4年間免除という優遇措置がある。これを活用することを前提に、現地での起業を決断。資本金は3名で持ち寄った。
フィリピンの特色として、ビジネスパーソンの英語が綺麗なことがあげられる。もともと英語圏だったことに加えて、人件費も月に2万~3万円程度と安かったため、米国企業などのアウトソースシングやBPOビジネスのマーケットとして発展してきた。また、2010年にはコールセンタービジネスでインドを抜いて世界1位(売上高)になっている。それに伴って、道路やオフィスビル、インターネット回線なども整備され、急速にビジネスインフラが発展している。
韓国系の英語学校が多い理由としては、1999年の通貨危機を契機に、国際化に向けて韓国人学生は全員英語を話せなければ就職すらできないという風潮となり、急速に英語学習熱が高まったそうだ。
日本でも楽天の英語公用語化をはじめ、英語公用語化を宣言する大手企業が増えていることから、近年は社会人の英語学習需要が急速に高まっている。
人件費をはじめとした物価が安いフィリピンなら、リーズナブルな価格で滞在型の英語学校が運営可能。実際、同社の創業者の1人である鈴木氏によれば、「個人だけでなく企業の研修として依頼されるケースも増えてきている」という。しかも研修中も同社のオフィス環境があれば遠隔だが業務も可能。つまりシェアオフィスの利用ニーズも望めるわけだ。
また、英語学校に通って卒業した日本人が、そのままフィリピンでフリーランスとして活動を開始するケースも出てきたという。確かに、物価が安く月の生活費が2万円~.3万円ともなれば、日本から遠隔で安く仕事を受けても成立できそうだ。ちなみに、同社のシェアオフィスには、フィリピンに拠点を構える日本人デザイナーやプログラマーなどのフリーランサーも多く在籍しているそうだ。
次に狙うのはインキュベーション。海外で起業し世界に挑戦する若者を増やしたい
将来への展望
今回インタビューした鈴木氏に今後の展望を伺ったところ、「当面は今の事業を確立させていくことが目標だが、海外で起業したい若者のために語学とスペースの提供だけでなく、投資機能やノウハウ提供も兼ね備えたインキュベーション施設を目指したい。そしてそれはフィリピンだけに限らず、世界各国に設けていきたい」と語ってくれた。
フィリピンであればさほど大きな金額がなくても生活ができるため、事業を立ち上げる際にも日本に比べて驚く程少ない金額で済む。また、フィリピンで英語力を同時に身につける事も出来るし、国内に英語が出来る若い人材が豊富なため、最初から世界に目を向けたさまざまなビジネスを生める可能性がある。
「リアルの場が機能し始めた次の段階としてインターネットを使って、海外で起業したい人や活躍したい人がより進出しやすくなるビジネスを展開していきたい」と語ってくれた。
「僕たちは英語学校とシェアオフィスという“オフライン”の場を提供する事で顔をつき合わせ実際に出会えることができ、ビジネスも生まれている。しかし、実際にその場、その国に来なければ出会えないのも事実である。日本にいながらインターネットを通じてそれぞれが出会え、オンラインとオフライン双方で交流できる場を提供し、より海外に一歩踏み出し易くなる、そういったO2Oモデルをつくりたいと考えています」(鈴木氏)。
アジアの経済センターといえば、香港やシンガポールが主に取り上げられるが、意外と近くて狙い目のマーケット、それがフィリピンなのかもしれない。ユナイテッド・リグロースのような取り組みが次々と広がっていけば、日本人が世界中で活躍する近未来が現実のものになる。同社の今後の挑戦に期待したい。
ユナイテッド・リグロース株式会社 | |
---|---|
代表者:呉 宗樹 | スタッフ数: |
設立:2012年10月 | URL:http://www.u-rg.com/ |
事業内容: グローバルビジネス支援事業 |
当記事の内容は 2013/8/29 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。