- 目次 -
倍率5倍の人気コワーキングスペース。入居者とのコラボで新しい収益機会を創出
展開している事業内容・特徴
東京・渋谷にある、「StartUp44田寮(ヨシダリョウ)」という変わった名前のCo-workingスペースをご存じだろうか? あるいは、最近ベンチャー界隈で話題となった「リポD大賞」というイベントなら耳にしたい方も多いかもしれない。「StartUp44田寮」を主催する一方、「リポD大賞」を仕かけたのが、今回紹介する株式会社レスもあ代表の赤木優理氏だ。
「44田寮」という名前の印象どおり、学生寮のような雰囲気のコワーキングスペースだ。名前の由来は、赤木氏がかつて通っていた京都大学の学生宿舎「吉田寮」から。1席あたり月額1万円で貸し出しており、相場から考えるとかなり安い。赤木氏曰く、「実は採算はとれてない(笑)。」とのこと。
それでは、どうやって事業として成立させているのか?
その秘密が「リポD大賞」だ。
「リポD大賞」というイベントは、大正製薬がスポンサーとなって2013年4月に開催された「ベンチャーコンテスト・StartUp支援プロジェクト」だ。このイベントの仕掛け人が赤木氏というわけ。
また、過去には半導体世界最大手のインテル社と組んだ企画も手がけている。ほか、名前は出せないが、某大手不動産会社と都内某所の都市再生プロジェクト企画にも参加している。
こうしたイベントや企画参加による売り上げが、「44田寮」の維持費の一端であり、株式会社レスもあの主な収入源。そして、ユニークなのが、こうしたイベントや企画に「44田寮」の入居者たちが参加していたり、彼ら起業家独自のノウハウやスキルを活用していることだ。
「44田寮」自体が、ベンチャーマインド溢れる優秀な人材を集めるための装置になっている。タレント事務所のようなイメージに近いだろうか。
「44田寮」に入居しているメンバーは、2013年6月の取材時点で約30名ほど(第一期生+第二期生)。申し込みは今迄150名ほどあったそうで、倍率5倍という人気だ。現在は第二期生の募集を引き続き行っている。
入居メンバーの構成は、3分の1が会社員、残りが起業家。入居している会社員の多くには、「起業する前、まずは勤務会社以外の活躍できる場で修業しておきたい」という思いがあるようだ。
こうして集まった人材にチームを組ませ、大企業とのコラボレーション企画に彼らのアイデアを生かすのが赤木氏の狙い。赤木氏と入居者たちの思惑が合致したビジネスモデルといえる。
こうした取り組みは「オープンイノベーション」という概念に近い。しかし、それを起業家および起業家候補が集まるCo-working事業に結びつけたことが、斬新な取り組みかつ、成果を生んだ取り組みとして注目されているのだ。
建築家の父の教えで、世の中の仕組みをアーキテクトしようと決意
ビジネスアイデア発想のきっかけ
赤木氏は京都大学で建築を学んだ。父親も建築家だったそうだが、幼少期から父の教えとして「おまえは建築家になるな。アーキテクトになれ」と言われて育った。
そうした父の教えから、建築家になるのではなく、起業家を目指したのがそもそもの始まりだ。
アーキテクトという言葉は、日本語訳では建築家となる。しかし、赤木氏はそうではないと解釈している。
アーキテクトの語源は古代ギリシア語で、「アーク」「テクト」「オン」という3つの言語から成り立っている。「アーク」は、「モノの始まり」を示す。「テクト」は「構築する」。「オン」は「人」。
なので、アーキテクトとは、「世の中にない始まりをつくる人」。これがアーキテクトという定義というわけだ。つまり、家を建てる人、設計をする人がアーキテクトだという認識ではなく、世の中に初めて何かをつくる人はすべてアーキテクトであると赤木氏は考えている。
さらにその考えを発展させ、起業家そのものになるというよりも、世の中の仕組みを変える仕事をしたいと思うようになっていく。
そして赤木氏は、大企業内の予算編成に注目した。大企業でも、本業とまったく関連のない新規事業開発には予算がつきにくい。しかし、マーケティングやプロモーション予算は潤沢だ。大きな予算を使える部門と仕事をすれば予算が得られやすい。そう考えた赤木氏がたどり着いたのが、「44田寮」のビジネスモデルだった。
インテルや大正製薬の事例がまさにそれだ。大企業側も従来のPRやマーケティングのやり方に限界を感じていた。また、マスメディア広告効果も薄れている。若者の嗜好が多様化し、マスメディア離れという現実もある。そこで若者にリーチする企画として、「起業」というテーマが大企業側のニーズと合致した。
大企業に滞留している優秀な人材の流動化こそ日本再生につながる
将来への展望
赤木氏は、大企業から本当の意味のイノベーションが出てこないという危機感を持っている。そこを打破するのが、「44田寮」のビジネスモデルではないか。
現在の大企業は自社が所属する業界・市場に合った新商品開発に特化した組織体制になっており、まったく新しい市場をつくり出すような製品やサービスを生み出せない。
しかし、日本中の優秀な人材の殆どが大企業にいる。「この人材を流動化させて日本全体を活性化させることができれば面白い」と赤木氏は考えている。
「日本のビジネスの実質的な意思決定権者は3人。1人目は中央官庁の官僚。2人目は大企業。3人目はアメリカです」。これが赤木氏の持論だ。
そのうちの大企業の中にいる、非常に優秀な人間が今まで頑張ってきたので、日本は世界に冠たる経済大国となった。しかし、そうした優秀な人材が新規事業・新市場をつくる方向に動いていない。「つくりたいけど大企業内ではつくれない」というジレンマを抱えている。
そこを解決しようというのが、赤木氏の真の狙いだ。
「この問題を解決しないと何一つ変わらないと思うんですよ。大企業の社員に聞くと、新しいものをつくれといわれるが、いざ企画しても社内で決済が下りないそうです。何が問題かというと、大手企業の決済(稟議)システムと人事評価が古すぎることが原因だと考えています。要はひと昔前の高度経済成長期の事業開発モデル=「新製品導入モデル」に最適化した社内制度を構築して来たため、高度にガラパゴス化してしまっていて、今の様に、ニーズが多様化しトレンドの移り変わりが激しい時代にマッチした事業開発モデルに大企業の中の制度が全くマッチ出来てない。マッチさせようと思っても精密機器のように高度に設計されてしまっているので細部を修正するだけでは対応出来ない。社内の制度をゼロから“がらり”と再構築する必要があるのです……。そんなこと出来ると思いますか? たぶん莫大な予算と大きく失敗するリスクを孕む施策を大手企業は今後も取れないのではないかと思っています。では大企業の優秀な社員たちを日本のイノベーションに活かす為にはどうすればいいのか? 僕が考えていることは単純です。「じゃあ、大企業の外でやろうよ!」 会社員を続けながら起業でき、それを勤務先の企業も応援するエコシステムの創造がソリューションの一つになると確信しています。」とは取材中の赤木氏の弁。
ドリームゲート・プロジェクトの理念「日本に起業文化を確立する」とも通ずる熱い話に、ついつい取材を忘れて話し込んでしまった。赤木氏のクレバーな熱気を感じて、日本が確実に変わってきていると実感した。これからも、赤木氏の面白い仕かけを耳にすることが多くなるだろう。日本を変えるアーキテクト・赤木氏の今後の活躍に期待している。
株式会社レスもあ | |
---|---|
代表者:赤木 優理 | |
設立:2010年3月 | URL:http://www.lessmore-yoshidaryo.com/ |
事業内容: ①【StartUp44田寮】の企画・運営 ②起業家PRサポート事業【44田プロダクション】の企画・運営 ③Webサービス企画・開発・運営 ④事業構築・各種戦略コンサルティング |
当記事の内容は 2013/7/4 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。