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「知識の地図」が、学習を冒険に変える
展開している事業内容・特徴
新しい何かを学ぶということは、未知との遭遇であり、本来ワクワクする冒険のようなものだ。しかし、子どもの頃から、テスト、成績表、受験といったものにしばられ、学ぶことの楽しさを忘れてしまっていないだろうか。そこで今回は、学ぶことの楽しさを思い出させてくれるツール、無料学習サービス「ShareWis(シェアウィズ)」を紹介したい。
「ShareWis」のサイトを訪れると、画面上に「知識の地図」と呼ばれるたくさんのサークルがレイアウトされている。一つ一つの丸は5分~30分で完結するレクチャーになっており、レクチャーを完了すると丸の色が青色から黄緑色へと変わる。実際には目に見えない学びの成果が可視化され、気軽に達成感を得ることができるのだ。「知識の地図」上のサークルは分野ごとに線でつながっているので、ゲームのステージをクリアするような感覚を味わいながら、継続的に学習を進めることができる。まさに、「学習が冒険に変わる」のだ。
2012年5月末、「ShareWis」は、「英語」「会計」「プログラミング」のレクチャーの3本柱でスタートした。これは「社会人が学習したいことトップ3」なのだという。「社会人の学習というと資格試験の勉強が代表的ですが、スクールに通ったり、教材を購入したりすることを考えると、どうしてもハードルが高くなってしまう。もっと気軽に幅広い分野の知識を、ゲーム感覚で学べる場をつくりたかった」と「ShareWis」を提供する株式会社シェアウィズ代表取締役社長の辻川友紀氏は語る。現在、レクチャーの分野は増え、「経営」「経済」「数学」のほか、「日本史」「カリグラフィ」「ポーランド語」など、マニアックな分野も網羅している。
「ShareWis」の具体的な使い方を解説しよう。まずは「知識の地図」上にあるさまざまなレクチャーから興味のあるものを選ぶ。各レクチャーは2部構成になっており、まず前半では動画やテキストを使って内容を学習する。そして後半では4択問題や穴埋め問題に答えることで、即座に理解度チェックができる仕組みになっている。理解度チェックの問題に全問正解すると、そのレクチャーは完了だ。「知識の地図」上のサークルが青色から黄緑色に変わる。
「知識の地図」上に散りばめられたレクチャーは、外部の投稿から成り立っている。さまざまな人が投稿することで、「知識の地図」自体も無限に広がっていく仕組みだ。「ShareWis」は利用も投稿も無料。レクチャーの投稿者は、教育関連書籍の著者、社会人向けスクールの講師などが多い。自らの著作や授業動画の一部をレクチャーとして無料公開することで、集客につなげようという目的もあるようだ。「我々が目指す役割は、ゆるい学習と本格的な学習の橋渡し。まずは『知識の地図』上で気軽に学習を始めてみる。ゲーム感覚で学習を続けていき、もっと深く学びたいという状態になった時に、書籍やスクールなど、既存の有料教育サービスへと誘導していくようなかたちです」と、辻川氏。既存の教育サービスの競合相手となるのではなく、その入り口部分を広げる役割をするのが「ShareWis」というわけだ。
ひとつの学びが次の学びにつながる場所をつくりたい
ビジネスアイデア発想のきっかけ
辻川氏が「ShareWis」を始める際に発想したキーワードは「つなげる」だ。既存の教育産業は、簿記なら簿記、英語なら英語、というように分野毎に学ぶ場所が完全に分かれている。先生といわれる専門家を揃えて囲い込み、書籍やスクールといったかたちでコンテンツへのアクセス権を販売する――そんなシステムだ。「これでは学習の幅は狭まる一方で、分野をまたいだ知識同士のつながりが見えなくなってしまう。それはすごくもったいないので、どうにか学びと学びをつなげていけるような場所をつくりたかったのです」。
一つの学びが次の学びにつながる場所――それが「知識の地図」だ。地図上には、分野は異なるが、似通った要素を持つレクチャーが隣り合わせに並んでいる。「ある主婦の方は、ファイナンシャルプランナーの資格を取るために簿記を勉強しようとやってきたが、たまたま『知識の地図』上の簿記の隣にプログラミングのレクチャーがあった。プログラミングなんて今まで触れたこともなかったけど、少しレクチャーを受けてみたら面白くなって、プログラミングの学習を続けているそうです」、と辻川氏。その主婦は、「知識の地図」を冒険しているうちに、新たな学びに出合ったというわけだ。
YouTubeを利用した動画配信など、今だから可能なことを活用して――
ビジネスアイデア発想のきっかけ
昨年(2012年)12月には、iPad, iPhone向けアプリをリリース。現在、総閲覧者数10万人、アカウント取得者数2万人と着実に利用者を増やしてきた。ユーザー数を増やす仕かけのひとつは、「知識の地図」上のコンテンツを個別検索でもヒットするようにしたこと。「ShareWis」というサービスを知らずとも、学びたいコンテンツが起点となって、ユーザーを取り込める仕組みになっているのだ。
そして「知識の地図」上のレクチャー構成の核となっているのが、YouTubeを利用した動画コンテンツ。レクチャーの投稿者はYouTubeに動画をアップロードし、そのURLを投稿画面に入力するだけで、簡単にレクチャーに動画を組み込むことができる。こうして個人レベルでも簡単に学習教材を作成・発信でき、教材自体が無限に広がっていく。
思い返せば2000年代初めに、eラーニングが登場し、教育のあり方が大きく変わるのではないかといわれていた。しかし実際は、企業の研修コスト削減に利用された程度で、大きく広がることはなかった。その要因は、教材の開発者も利用者も閉鎖的な輪の中にいたことだ。しかしこの10年で、YouTubeなどによって個人が気軽に動画を配信できる時代となった。「ShareWis」は、この環境を外部からのレクチャー投稿というかたちで活用し、個人レベルの無数の教材開発者たちを「知識の地図」上に集めることに成功した。「ShareWis」は、今この時代だからこそ可能になったサービスといえるだろう。
全世界に広がる学習のプラットフォームをつくりたい
将来への展望
iPad、iPhone向けアプリに続き、近日中にAndroid向けアプリもリリース予定。今後もスマートフォンやタブレット端末での利用を主軸とし、アカウント取得者数年内10万人超を目指している。
企業や塾向けのBtoBサービス、「ShareWisエンタープライズ」も近く提供開始予定。「知識の地図」の上にクライアント独自のコンテンツや教材を載せることで、手軽に学習管理ができる仕組みを提供する計画だ。
「ShareWis」の特徴は、教材自体を作成、販売するのではなく、その教材を載せる皿の部分、「知識の地図」というプラットフォームを提供しているということ。「これまでの教育系サービスでは、教材販売がビジネスになっていましたが、今は動画やスライドなど教材化されたものが無料で配信される時代。この流れは今後どんどん加速していくと思うので、無料化されたコンテンツを載せる学びのプラットフォームとして、立場を確立していきたいと思っています」と辻川氏は語る。
そのプラットフォームに載せるコンテンツは日本語に限らず、英語やほかの言語にもどんどん広げていく予定。「アメリカから配信されたYouTube上の数学の教材動画をアフリカで学校に通えない子どもたちが見る、というような事例が発生して、アメリカでは教育系教材のあり方が大きく変わる気運が高まっています。学校教育や資格関連のサービスであれば国境を超えて広がることは難しいですが、我々がターゲットにしているような、一般常識などのゆるい学習のサービスであれば、国境も超えてどんどん伝播するはず。そこを狙っていきたいですね」。
最後に辻川氏に将来の野望をおうかがいすると、「教育系サービスで世界ナンバーワンになること」という答えが返ってきた。「例えばSNSならfacebookがナンバーワンですが、教育系サービスのナンバーワンは存在していません。今後も『知識の地図』というプラットフォームを充実させて、10人に聞けば10人全員が、『教育系サービスならシェアウィズ』と答えるような存在になりたいです」。
「ShareWis」を具現化するために会社を辞し、起業家への道を歩み出した辻川氏。その真っすぐな思いが、学びのあり方を変える日は遠くなさそうだ。
株式会社シェアウィズ | |
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代表者:辻川 友紀 | スタッフ数:3名(パートナー、インターンアルバイト含めると15名) |
設立:2012年2月2日 | URL:http://share-wis.com/ |
事業内容: 無料学習サービス「ShareWis」の開発、運用 |
当記事の内容は 2013/5/28 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。