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引っ越し時に大活躍! 地域の無料広告掲示板サービスが急成長
展開している事業内容・特徴
みなさんは引っ越しをする時、不要になったものはどうしているだろうか。知り合いにあげるにしても残るものは残ってしまうし、リサイクル業者に売るにしても、近くに店があるとは限らず、店に持っていくのが面倒だろう。捨てるとなると、大型の家具や家電の場合にはお金がかかってしまう。このように、ものの処分に困った経験は多くの人にあるのではないだろうか。
今回は、例えば引っ越しする際に家具・家電が不要になった人が、その引き取り手を無料で簡単に募集することができる便利なサービスをご紹介する。株式会社ジモティーが運営する「ジモティー」だ。
「ジモティー」は地域の無料広告掲示板。個人間取引を中心とした「売ります・あげます情報」「不動産情報」「求人情報」「イベント情報」等の目的に分類された募集広告や告知を無料で掲載できる。メールアドレスの登録だけで利用することができ、入力項目が少なく自由度が高いこと、利用料が無料であることから、いつでも誰でも気軽に利用することができる。また、取引にあたって一時的にジモティーのメールアドレスを付与することにより、双方の連絡先を伝える必要がなく、セキュリティについても配慮されている。。また、欲しいものが見つからない場合は、キーワードを入力しておけば、それに関する投稿があった場合にメールで知らせてくれる便利な機能もある。
「ジモティー」の特徴は、誰でも簡単に無料で利用できるところだ。事実、インターネットサービスの多くは、IT感度が高い10代~20代がメインユーザーとなるが、「ジモティー」のメインユーザーは30代~40代。中には70代の人からの投稿もあり、幅広い年齢の人たちに利用されている。
投稿フォームや問い合わせフォームをあえて複雑にしておらず、例えば売買情報に関する投稿を行う場合には、タイトル、説明文、価格を入力すれば投稿は完了することができる。 また、無料で利用できるので、例えば、淡路島の別荘や、地方の土地を無料で譲りますなど、これまでのインターネットの個人間取引では見ることのできなかった出品もまれにある。これらの投稿には、社員も驚いたという。
また、「ジモティー」では誰でも利用しやすくするために、サイトの雰囲気作りに注意を払っているという。本格的なECサイトのように類似の商品が多数出品され、サイトに並んでいる状況では、個人のユーザーが投稿する際のハードルが上がってしまうと考えた。
当初、「ジモティー」では大型の家具・家電の取引を中心に活性化した。利用が無料であること、また地域ごとに情報が掲載されるため、通常廃棄費用がかかる大型の家具や家電でも無料で引き取り手を探せるとともに、直接対面で商品を取引することが可能なためだ。このような大型家具・家電の取引は2013年4月現在でも伸びている。
全投稿のうち2~3割を無料で譲りたいという投稿が占めており、いいものだと投稿してから5分で成約が完了するケースもあるという。成立する比率は約3割だが、ヤフオクが1割ほどと考えると、かなり高い値だということが分かる。
現在特に投稿数の伸びが顕著なカテゴリは里親募集。身近な範囲で里親を募集することができるため、どのような人が飼い主になるのか、またはどんな環境で育てられていくのかということを確認することができ、安心して譲り渡すことができる。動物愛護法により登録を行っていない個人が動物の売買をすることは禁じられているので、「ジモティー」でも生体の有償販売は禁止している。里親募集のカテゴリでは、あくまで動物愛護への貢献ができればと考えているという。
収益モデルは広告掲載。投稿一覧の上位枠を広告スペースとしており、ユーザーが課金をすると、そこに掲載できるようになっている。1日100円~という低価格には驚きだ。他にアドネット広告も取り入れており、PV数の増加に比例し順調に伸びているという。
2011年4月にテストサイトをオープンし、半年後の2011年11月、サイトを全面リニューアルし、本格化。これ以降、ユーザー数は継続的に伸び、約1年後の2012年末には月間訪問者数60万人を突破。2013年4月現在、PV数は月600万強にまでに成長している。
海外で当たり前に使われているサービスを、日本に新たに取り入れた
ビジネスアイデア発想のきっかけ
「ジモティー」のようなサービスは、クラシファイドサイトと呼ばれ、アメリカなどの海外のネット先進国では、地域単位での物品や情報のやり取りに広く一般に利用されている。特にアメリカのcraigslistは世界最大のクラシファイドサイトとして有名で、アメリカでは引っ越しする時にはcraigslistを利用し、家具や家電のやり取りを行うのが当然のように行われているという。このように地域内での情報を仲介するビジネスが海外で成功しているなか、日本でも同様のサービスは伸びると考え、サイトの開発が開始された。
開発・運営元の株式会社ジモティーの設立は2011年2月。インフィニティ・ベンチャー・パートナーズというベンチャーキャピタルが中心となって設立された。2012年6月には、三菱UFJキャピタルとKDDIの運営するファンドからも出資を受けている。
実は日本でクラシファイドサイトを立ち上げようとした事例はいくつかあったものの、うまくいかずに撤退しているケースが多い。これまで日本になかったサービスなので、文化的土台から作り上げていく必要があり、立ち上げに時間を要するためだ。実際、「ジモティー」に取材したところ、他のベンチャーのサービスと比較すると、成長は緩やかだという。しかし、投資家サイドやスタッフも含めて、クラシファイドサイトとして飛躍するため、3~5年をかけて地道にユーザー数を増やしていくことの重要性を認識しており、現在まで粘り強くサイトを磨いているという。その成果が実り始め、ユーザー数は着実に伸び、サイトリニューアル後1年半で、サイトの月間訪問者数は80万人を突破した。
サービスを作り上げていく上でもっとも苦労した事を伺ったところ、とにかくユーザーからの投稿を集めることに心血を注いだという。それこそ、創業メンバーは自分達の知り合いから不要品を募集したり、フリーマーケットなどでビラを配ったり、あるいはスーパーで買い物終わりの女性に声をかけて宣伝したりと、実に地道な活動を続けたという。こうして、コツコツと投稿を集めていき、サービスの土台を作り上げたそうだ。
ソーシャル感度の低い人でも同じように利用してほしい
将来への展望
取材の最後に今後の目標を伺うと、まずは国内でユーザー数1000万人を目指し、日本人なら誰でも知っているサイトというところまで少しでも早くサイトを成長させたいとのこと。
将来的にはソーシャル感度の低い人でも便利に気軽に利用できるような「当たり前に使われるサービス」となるべく、とにかく幅広いユーザーを獲得していきたいという。
そのためのキーとなるのが投稿の質。Web上のみで質のよい投稿を集めようにも、なかなか集まらないと考え、前述のようにリアルの場での宣伝を通じて質の良いものを地道に集めた。事業上もQuality Controlを重視しているそうで、QC活動はスタッフ数7名のうち、同社代表の加藤氏も含めて3人掛かりで行っているという。
とにかく多くの成功体験を生み出し、ユーザーの満足度を上げること。多くの成功体験が生まれることが、次のサイト利用につながる。このサイクルを繰り返すことによりユーザー、および投稿数は増加し、さらなる成功体験につながり、ユーザーの満足度がさらに上がっていく。こうした好循環を続けることが重要なのだ。
最終的には、例えば「2時間後にサッカーの試合があるんだけど、誰か来れませんか?」というような、差し迫った案件でも成立するサービスを目指していくという。
株式会社ジモティー | |
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代表者:加藤 貴博 | スタッフ数:7名 |
設立:2011年2月16日 | URL:http://jmty.jp/ |
事業内容: クラシファイドサイト「JMTY(ジモティー)」の企画・開発・運営 |
当記事の内容は 2013/5/9 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。