自動で会計帳簿を処理!元Googleマーケターが仕掛けるクラウド会計サービス「freee(フリー)」

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執筆者: ドリームゲート事務局

専門家いらず! 専門知識も不要! 自分で経理を簡単処理!
展開している事業内容・特徴

 freee1経営リソースが少ない個人事業主、中小ベンチャー企業経営者にとって、「経理処理」は悩ましい業務といえる。経理の専門家に依頼すると経費がかかり、自分でやるなら知識をつけなくてはならない。しかし、ビジネスが始まった瞬間から、経理処理は日を追うごとに、その必要性を増していく。

今回は、そんなスモールビジネス経営者にとってうれしいサービスをご紹介する。CFO株式会社が運営するクラウド型会計ソフト「freee(フリー)」だ。簿記の知識がなくても簡単に利用できる優れ物「freee」が、リリース直後から大きな注目を集めている。

 「freee」のラインナップは3種類。青色申告に対応した個人事業主プランは月額980円から、会社法に対応したプランは月額1980円から提供している。2013年3月にリリースされたばかりで、6月までは完全無料のキャンペーン中なので、実質3カ月は無料で利用可能。気に入ればそのまま継続すればよいだろう。

また、ユーザーを追加するだけで、経理担当者と経営者、経営者と税理士事務所・会計事務所・アドバイザー間での共有も簡単に可能となる。

「freee」の一番のウリは、銀行、クレジットカードの情報を登録することで、自動的に会計帳簿が作成される機能だ。例えば、明細に「タクシー」という言葉が入っていたら、「旅費交通費」にひもづけられ、「電気代」という言葉が入っていれば「光熱費」にひもづけられるなどして、経費の科目別に適切な仕分けをしてくれる。

単語を読み取り自動処理をする精度は現在のところ7、8割程度となる場合もある。この仕組みにより、経理の作業にとられる時間は通常に比べ、なんと50分の1程度に短縮できるそうだ。経理処理にかける時間を軽減し、本業に集中してほしいのだ。この一連の機能は特許出願中だ。

 ただ、銀行口座番号やクレジットカード番号を、サービスと連携させることに抵抗を持つユーザーは少なくない。その不安を払しょくするため、「freee」は個人情報の取り扱いについて、ある一定基準を満たしたWebサイトだけに与えられる「TRUSTe(トラストイー)」という資格(一般社団法人日本プライバシー認証機構提供)を取得した。

 2013年3月18日にサービス開始後、すぐにアクセスが集中し、2週間で1600ユーザーが登録している。ちなみに、アクセスが集中しすぎてサーバがダウンしたこともあった。ビジネス向けのプロダクトなので静かなスタートを予想していたが、ここまでの好反響は予想外だったそうだ。

中小企業を応援したい! 自分がやるしかないと思った
ビジネスアイデア発想のきっかけ

freee2佐々木氏は大学生時代、現在は再編を経てマクロミルに統合されたインタースコープというベンチャー企業でインターンをしていた。そして大学卒業後は、博報堂に就職したが、それまで経験してきたベンチャー企業とのスピード感の違いに違和感を覚え退社。その後、株式会社ALBERT(アルベルト)というベンチャー企業でCFO(最高財務担当責任者)を経験し、Googleに入社した。

Googleでは中小企業向けアドワーズ広告事業のマーケティングチームを立ち上げた後、アジア・太平洋地域での同マーケティングを統括。当時、月の半分以上はインド、シンガポール、シドニーなどに出張で飛び回る忙しい日々を送っていた。

グローバルに事業を展開する Google ならではのエピソードだが、その時、感じていたことはマクロ指標の弱さ。特に起業率などの点で、日本は圧倒的に他の諸国よりも活発でなく映ることが、グローバルの視点でアジア戦略を担う佐々木にとって気になる事実であった。日本の活性化に自分なりに貢献するには、「ベンチャーや中小企業、フリーランスの役に立つ事業ドメイン」で「自らも起業すること」なのではないかという思いも、佐々木氏の起業意欲をふくらませていったようだ。

また、ALBERTでのCFO経験も、「freee」を立ち上げるきっかけの一つ。佐々木氏は、「クラウドを利用すれば、ベンチャーや中小企業を経理業務の煩わしさを軽減できる」というアイデアをずっと温めていたのだ。そして2012年7月、Googleを退職して会社を設立。友人の紹介で出会い、意気投合した横路 隆氏(現取締役)と2人でビジネスをスタートした。

起業後、すぐに取り組んだのはユーザー調査。4カ月間ほどユーザーからの声を集めて、プロダクトの開発をスタート。2012年11月には、テスト版をリリースしている。また、同年12月、アメリカの著名ベンチャーキャピタル“DCM”から約5000万円の出資を受けた。

ユーザー調査中に佐々木氏が気づいたことは、「既存の会計ソフトユーザーは、提供側が予想もしなかったような使い方をしている」ということ。例えば、会計ソフトのデータファイルをドロップボックスに上げて、会計事務所と共有することで業務効率化を図っているという事例があった。個人レベルでも複数のサービスをつなぎ合わせ、より便利な使い方しているわけだ。逆をいえば、まだまだ便利なサービスが提供できていない証左であり、こにに大きなビジネスチャンスがあると考えた。

ちなみに、佐々木氏の母は美容室の経営者。新しくレジを購入したと聞き、それを見に行った佐々木氏は驚いた。レジは100万円もする高価なものだったが、「このシステムなら自分でもつくれそうだ」と。最近では「ユビレジ」のようなサービスも出てきているが、こうした高価な商品が売れるということは、中小零細向けのマーケットにベンチャーが参入するチャンスがまだまだあると感じたという。

CFO株式会社の陣容は、2013年4月現在、正社員4名を含むスタッフ8名の体制。社員は全員エンジニアで、佐々木氏本人もエンジニアとしてコードを書いている。ちなみに佐々木氏は、起業してからエンジニアとしてデビュー。ネット上にはさまざまな教材や学習サービスがあるので、プログラミングの勉強は特に困らなかったそうだ。

1年間で3万アカウントの登録が目標。ビジネスのプラットフォームをつくりたい
将来への展望

佐々木氏は、「フリーランスのクリエイターなどが、より創造的な仕事に時間を使えるよう、とにかく会計を簡単にしたい」という思いで「freee」を開発した。ただし、「freee」を単なる会計ソフトというカテゴリーではなく、個人事業主やベンチャー経営者の間接業務の負担軽減を図るためにツールの一つと捉えている。

インタビューの最後に今後の目標を伺ったところ、「1年間で3万アカウントはいきたいと思う。リリース前は1年間で1万アカウントが目標だったが、この調子だともっといけそうだ。そして、5年後の目標として、アジアなど世界を視野に入れ、200万ユーザの獲得を目指す」と、強気の計画を教えてくれた。

今後3~5年は 「freee」の投資期間として、短期的に利益を出すことは考えていない。設定している価格もすぐに利益が出る水準ではなく、ユーザーを獲得するために戦略的な設定なのだ。

 また、将来的には「中小企業のビジネスプラットフォーム」づくりを目指しており、バックオフィス業務を徹底して効率化し、商談、決済などのサービスも手がけていきたいそうだ。

中小企業マーケットへの参入は難しいとよくいわれるが、「それは間違い。徹底的につくりこんだプロダクトがないだけ」というのが佐々木氏の考え。多くの中小企業向けのサービス・商品は、質が悪くても営業力で売ることができていた。しかし、営業力で売れる時代は終わる。特にフリーランスや小規模事業者が増えていくと、販売方法はBtoCに近くなる。そうなった時、「freee」のようなユーザーがDIY的に使えるサービスは必ず伸びるはずだ。

ちなみに、佐々木氏は32歳。まだまだ若い経営者だが、取材をしていて感じたことは年齢よりずっと年上の経営者をインタビューしている気分だったということ。「freee」というコンテンツを武器に、CFO株式会社がどこまで成長できるか、期待して見守りたい。

CFO株式会社
代表者:佐々木大輔 スタッフ数:正社員4名を含むスタッフ8名
設立:2012年7月9日 URL:http://www.freee.co.jp/
事業内容:
全自動のクラウド型会計ソフト「freee (フリー)」の開発・運営。

当記事の内容は 2013/4/11 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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