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農業に関するさまざまなニーズに対応!農業界の求人サイト
展開している事業内容・特徴
連日、TPP交渉についての報道が続いている。国内の農業分野は、これまで保護や規制が強く、なかなか競争にさらされていなかった。しかし、徐々にではあるが農業を取り巻く環境が変わりつつある。今後も経済全体がグローバル化し、世界規模での競争が進んでいく以上、農業もその激しい競争・変化に対応せねばならないだろう。
今回ご紹介するベンチャーは「第一次産業ネット」。読んで字のごとく、第一次産業=農業がテーマのビジネス。そのビジネスモデルは、農業分野に特化した「求人サイト」だ。
近年、農業従事者の減少、高齢化が進んでいる。実際にそうした傾向は各種調査・統計の数字でもあきらかで、「農業は人手不足」だというイメージが強い。しかし、一概にそうとはいえないようだ。
「第一次産業ネット」を運営する株式会社 Life Labの代表・西田裕紀氏によれば、農家は二極化しつつあり、それぞれで求める人材がまったく違ってきているという。
一つは従来の農家。特に個人でやっている小規模な農家は常に人手不足に悩んでおり、とにかく労働力としての人手を欲している。そのため、Uターン、Iターンを希望する転職者のほか、ベトナム、タイなどの外国人も紹介しているという。
もう一つは、法人化している農家。平成21年の改正農地法により、法人が農業に参入しやすくなった。それにより、「儲かる農業法人」が登場してきたが、そうした農業法人では「社長の右腕」になるような経営幹部候補、営業スタッフが不足している。しかし、そのような人材は一般の企業に流れてしまうので、確保が難しい。そのため、新卒採用の動きも出始めているという。案件によっては応募が殺到することもあるそうだ。
「第一次産業ネット」のビジネスモデルは、基本的に一般の求人サイトと変わらない。求人広告の収益が主だ。しかし、この分野では目立った競合がいないことから、順調に成長を続けている。
また、求人サービスのほかに、コンサルティングビジネスも展開している。「第一次産業ネット」には大量の農業希望者がアクセスしている。ちなみに現在、1カ月で50万~70万PV、UU数は5万ほど。会員数は2万3000人ほどだ。自治体(特に過疎地)の人口誘致活動、一般企業の農業参入時や工場が農産物の生産に乗り出す際など、農業ビジネスをキーワードとしたコンサルティング需要は今後も高まっていきそうだ。
祖父の最後の言葉で起業を決意。「事業内容はそれから決めた」
ビジネスアイデア発想のきっかけ
「第一次産業ネット」をつくった西田氏の経歴は平坦ではない。通っていた高校を中退し、ピザ屋でのアルバイト生活を始めた。ただ、当時から漠然と「サラリーマンになりたくない」と思っていたという。しかし、自分がアルバイトをしているピザ屋をどのように運営すればいいのか、当時はまったく想像できなかった。
そこで一念発起。まずは経営を勉強しようと、大検を取って大学に入学。経営学部に進んだ。大学時代のアルバイト先では経営を任せてもらうことができ、実践的な経営を経験している。大学を卒業する時には就活はせず、あるIT系の会社の社長に気に入られてそのまま入社した。
そんな西田氏が起業をするきっかけとなったのは、祖父が亡くなる時に口にした「おまえは会社をやれ」という言葉。その言葉がずっと心に残っていた西田氏は、ビジネスモデルもなにもないまま、とにかく会社をつくりたくなり、2005年11月に会社を設立している。
実は独立前の1年半ほどの期間、西田氏は個人事業としてモバイルサイトを運営していた。これが想像以上に当たり、面白いように稼げた。この時に貯めた資金が起業の元手になった。ただし、モバイルサイトのビジネスにはやりがいを感じることはなく、まったく面白くなかったという。
そうしたなか、独立した西田氏は、自分が本当にやりたいことが何かを考え抜いた。その結果、生まれたのが「第一次産業ネット」だ。事業内容は2006年1月に固まり、4月にプレオープン、5月には正式オープンしている。
しかし、オープン以降、なかなか売り上げが伸びず試行錯誤の毎日が続く。農業をテーマにしたポータルサイトをつくり、農産品販売を始めたり、スクールビジネスも手がけた。
2009年あたりで潮目が変わってきた。当時の自民党は農業の法人化を推進し、第一次産業、第二次産業、第三次産業を掛け合わせた「第六次産業」という言葉も生まれ、農業に元気が出てきた。特に若者がこの流れを敏感に察知し、新しい分野にチャレンジしている農家の門を叩くようになった。
この流れに、「求人ビジネス」のチャンスを感じた西田氏は、それまで展開していたビジネスから、「第一次産業ネット」の求人サービスに集中することを決断。その狙いが当たり、事業は成長軌道に乗っていく。その後も経営的には浮き沈みがあったものの、現在は8期目。
日本の農産物を世界に! 生産者の方たちとともに羽ばたく
将来への展望
西田氏に今後の展望を伺ったところ、「日本の農産物は世界中から求められている。さまざまな日本の生産者の方と一緒に世界に羽ばたいていきたい」と語ってくれた。TPPが話題となっている今現在こそがチャンスだ。
TPPへの参加については賛否両論あるが、反対している人の多くは異口同音に、“日本の農業は国際競争力がない。TPPで農家は壊滅する”という。しかし、西田氏はむしろ日本の農業には競争力がある考えている。
アメリカでは、大きな土地で一気に作物を生産する大規模な工場のような農業が主流だが、日本の農業は小さな土地で高品質・付加価値のあるものをつくるのが得意。安い農産物も、技術的な改良を加え、企画・マーケティング・販路開拓などによって単価の高い「商品」に変えることもできる。世界でも十分に競争していけると西田氏は見ているのだ。
西田氏は、あくまで「ビジネスとしてやっている」と断言する。ビジネスという感覚がなければ、稼ぐことができないし、事業として継続できない。夢や情熱だけで事業を行っていけるという人も多いが、それだけでは続かないのだ。
「農業は保守的な業界。少しでも新しいことをやると、叩かれる。これは面白くない。例え叩かれても、結果的に農業界にいい影響を及ぼすことができる。そんなことを仕かけていきたい」と西田氏は語ってくれた。
夢は日本の農産物を世界に展開させること。まずはアジアから。日本で作られた美味しい農作物を、世界中の人々が笑顔で食べる日がやってくる――そんな期待をせずはいられない。
株式会社 Life Lab | |
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代表者:西田 裕紀 | スタッフ数:7名 |
設立:2005年11月 | URL:http://www.sangyo.net/ |
事業内容: サイト運営 ・農業 林業 漁業に特化した求人情報サイト『第一次産業ネット』 ・農業をもっと身近に感じるための農業ポータルサイト『nocica(ノチカ)』 コンサルティング事業 ・農業法人等への人材コンサルティング ・農業生産等のFC展開コンサルティング ・農業参入コンサルティング |
当記事の内容は 2013/3/21 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。