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入居者決定率100%!55万円でリノベーションするサービス
展開している事業内容・特徴
近年、サラリーマンの間で「不動産投資」が流行っているという。先行きが不透明なこの時代、私的年金形成が目的だそうだ。しかし、賃貸用不動産を購入しても、入居者が入らなければ意味がない。2009年に総務省が行った住宅土地統計によると、全国平均で18.9%が空室の状態。約5件に1件は家賃回収できないというわけだ。
今回は、空き物件に入居者をつけたいサラリーマン大家さんを支援すべく、立ち上がったサービスを紹介する。それが、イエスリノベーション株式会社が運営する「リノベワン」だ。
「リノベワン」は、単身向けの賃貸物件に限定して、建物に新たな付加価値を与える工事を施すリノベーションサービスを提供している。「リノベワン」の一番のポイントは、早くて安いこと。あらかじめ7つのデザイン・テンプレートを用意しており、施工内容が決められているのだ。ちなみに価格は、20平米までの部屋は55万円、30平米までの部屋は65万円とリーズナブル。
従来のリノベーションは、注文ごとに一つ一つデザイン案をつくり、それから見積もり書を作成。工事が始まるまでに1カ月近くもかかっていた。また、工事の途中で追加工事の必要が出てくると、さらなるコストが発生する。多くの場合、最終的な費用は工事が終わるまで明確にわからない。大家にとって、数カ月の機会損失に加え、リノベーションコスト回収の計算も立ちづらかったのだ。
しかし、「リノベワン」であれば、7種類のデザインの中から一つを選び、決まった金額を支払うのみ。「リノベワン」に注文が入ると、物件を内覧し、リノベーションプランを提出。職人の手が空きしだい工事が始まる。施工する職人は、イエスリノベーション株式会社が直接提携しているため、中間マージンも低く抑えている。工事期間はわずか7日~10日。注文からリノベーションが完成まで3週間もあれば、新たな空間が誕生するというわけだ。
リノベーション後は、家賃を平均9%上げて賃貸に出すが、2012年12月までにリノベーションした300戸の物件は、すべてて入居者がついた。平均すると、工事が終わって24日以内に入居者が決まっている。なかには、半年間ずっと空いていた部屋が、リノベーション後1週間で埋まったケースもあるというから驚きだ。
「リノベワン」が提供する7つのデザインは、ターゲットとなる一般居住者からの詳細インタビューにもとづいてつくられたオリジナル。20代中盤から後半の男女をターゲットにしたカフェ風の部屋や、部屋のいたるところにピンク色を散りばめた女子大生向けの部屋などがある。どれも個性的で、同社のHP上の写真を見るだけでも住んでみたくなるものばかりだ。
イエスリノベーション株式会社は多くのベンチャー企業と同じく、営業に大きなリソースを割くことができない。そのためHP上で集客をしているが、これがサラリーマン大家さんのニーズにはまった。物件が埋まらなくて困っているサラリーマン大家さんが、インターネットのキーワード検索で、物件を埋める方法について調べると「リノベワン」が引っかかり、そこから相談・契約に結びつくというわけだ。
賃貸物件にはデザイン性があるものが少なく、入居者の選択肢を狭めていると考えた。
ビジネスアイデア発想のきっかけ
「リノベワン」は、商業施設開発事業会社を経営していた齋藤英一氏と、ベンチャー投資会社で新規事業開発をしていた溝内良輔氏によって開発されたサービス。齋藤氏は、デザイン性のある商業施設をつくっていたが、ある時、賃貸住宅環境、特にマンションの部屋にデザイン的要素が少ないことに気づいた。
不動産業界は保守的で、発想の転換が生まれにくい業界。齋藤氏は不動産業界に革命を起こそうと、前職でつながりがあった溝内氏に声をかけた。そして、溝内氏は当時の会社を退職し、齋藤氏の事業に加わった。それから、2人でブレストを重ねながら「リノベワン」のビジネスモデルを構築していくことになる。
ビジネスアイディアが浮かんでから1年後の2010年7月、齋藤氏の会社の一事業部として「リノベワン」のサービスをスタート。しかし、不動産業界で、このビジネスモデルを理解してもらうまでに時間がかかった。「1年間も空き状態の物件を、リノベーションしたくらいで簡単に埋められるわけがない」という声が多かった。
また、不動産管理会社・仲介業者にとって、「リノベワン」を利用して物件が埋まってしまったら、自分たちの立場がないということになる。大家さんが興味を持ってくれても、管理会社・仲介業者の反対で、結局不採用となってしまうことも多々あった。
しかし、2012年1月、テレビ東京の人気経済番組「WBS」で紹介されたことで、「リノベワン」のブランドがブレイク。不動産屋さんからの厳しい意見が急速に沈下した。そして同年中には、累計300戸のリノベーションを達成。事業を黒字化できたことで、「リノベワン」専門の法人「イエスリノベーション株式会社」を設立したというわけだ。そして、同社の代表を溝内氏が務めている。
最近、管理会社からの問い合わせが増えている。また、地方に住みながら東京の物件を保有しているサラリーマン大家さんと直接会わず、電話やメールのやり取りだけで契約するケースもあるという。「『リノベワン』のHPが非常にわかりやすく、メリットが伝わり、信頼を得られている証拠だ」と溝内氏。
これまで「マンション一棟を丸ごとリノベーションしてほしい」という、大型案件をいくつか紹介してもらったことがあるが、標準パッケージでの対応が難しい案件は原則お断りしている。「それでは、普通のリフォーム屋と変わらない。単身向け賃貸物件のみをターゲットとし、短期間で安く納品するサービスに集中したい」と溝内氏。このように、ターゲットを徹底的に絞り込んでいることも、「リノベワン」の成功の大きな要因だろう。
「リノベワン」のブランドを構築し、関わる人みんなをハッピーに!
将来への展望
溝内氏に今後の展望を伺うと、「2014年までには全国の主要都市に直営の支社を置きたい。その先は、フランチャイズ形式での展開も計画している」と語ってくれた。現在は1都3県の都心を中心にサービスを提供しているが、空き物件は全国に存在している。すでに、さまざまな地方都市の業者からフランチャイズの申し出が何件も届いているそうだ。
地方には、デザイン性をもったリノベーションを提供してくれる工務店が少ない。しかし、「リノベワン」の事業をフォーマット化すると、常に決まった資材を調達でき、また、同じ作業の繰り返しなので職人の熟練度も上がる。さまざまな面で効率のいい運営ができるのだ。確かに、フランチャイズに適したビジネスモデルといえる。
「『リノベワン』のブランドが全国に浸透し、かかわる人みんながハッピーになってほしい」と溝内氏は語る。空室が埋まることで初めて、サラリーマン大家さんは家賃収入を得ることができる。不動産会社は、大家さんの信頼を勝ち取り、管理手数料を得ることができる。入居者にとっては物件を選ぶ楽しみが増え、素敵な部屋に住むことができる。みんながハッピーになれるからこそ、やりがいがあるのだ。溝内氏は、「リノベワン」のブランド価値をブラッシュアップするために、今日もさらなる成功を目指して走り続けている。
成熟しきった業界だからこそチャンスがある!
最後に、溝内氏にこれから起業する人に向けたメッセージを聞いた。「事業計画はしっかりと練り、明確にイメージができるプランでないといけない。イメージができても、実際にやってみると、2、3割しか成功しない。仮に失敗しても資金が底をつく前に、いかに早く次の手を打つかということが重要だ」と言う。
現在、IT分野での起業は多いが、成熟しきった業界に新たな視点を取り入れることも面白い。溝内氏には、成熟した業界に新たなものを投じて革新を起こしたいという願望があった。「リノベワン」はまさにそれを目指しているわけだが、溝内氏がもともと賃貸不動産業界にいなかったからこそ、違う視点でものごとを見ることができたともいえる。
成熟した業界に革新を生み出すポイントを聞いてみると、「それは、“新たな業界で成功した事例を置き換えてみること”だ」。例えば「リノベワン」の場合は、小売業界やIT業界が当たり前にやってきた“ターゲットの明確化”を、不動産業界に導入したわけだ。このような模倣が、成熟した業界で成功するための一つのキーワードなのかもしれない。
不動産業界に革命を起こしつつある「リノベワン」。今後の展開も楽しみだ。
イエスリノベーション株式会社 | |
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代表者:溝内 良輔 | スタッフ数:3名 |
設立:2012年12月28日(事業開始2010年7月1日) | URL:http://www.reno-one.com/ |
事業内容: ワンルーム・1Kの賃貸物件専門のリノベーション【リノベワン】の運営 |
当記事の内容は 2013/3/5 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。