悪質ユーザーを排除!クレジットカード業界の弱点に切り込むベンチャー。Cacco(かっこ株式会社)

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

“高精度性”と“低価格”を兼ね備えた、世界唯一の「不正利用対策システム」
展開している事業内容・特徴

cacco1今や買い物は、ネットショッピングが当たり前の時代となった。多くの人々がECサイトを気軽に利用している。しかし、商品を手にしてお金を支払わない悪質なユーザーが跋扈している。とあるECサイトでは、全取引の約1.6%が不正取引だという。このような不正取引を、自動で検出するサービスを提供している会社がある。

それが今回紹介する「かっこ株式会社」。展開しているサービスの名称は「FDS(不正検出システム))。事前に不正ユーザーを判定し、不正利用を防止できるというものだ。

従来、各ECサイトには自前で不正検出を行っていた。不正検出といっても、担当者をつけて「怪しい」取引を目視で追うのが一般的。しかし、規模の小さい事業者では、そのノウハウや「ブラックリスト」がなかなか集まりにくい。人件費もかさむ。

そこで同社は、事業規模の小さなECサイトでも手軽に利用できる「FDS」というシステムを開発したわけだ。このシステムを導入すれば、人件費などのコストを下げつつ、非常に高い検出率を実現(同社では不正利用者の60%を捕捉できるとしている)。そのうえ、商品販売代金の未回収率を大きく下げてくれる優れ物。

「FDS」はASPのかたちで提供されており、精度も高いく、個別に不正対策を実施するケースに比べると、圧倒的に安い。

では、「FDS」のどこが優れているのか? まずは、“精度の高さ”だ。「FDS」は、不正ユーザーを自動的にシステムで検出し判断する「自動審査機能」と、システムでは判断できない時は人間が調査する「目視審査機能」の2つで構成されている。この二重化の仕組みで非常に高い検出率を実現しているのだ。

自動審査機能は、約10万件ものブラックリストと照合をしてくれる。もちろん、ブラックリストは、厳重なセキュリティをかけている。個人が特定できる情報はすべて暗号化し、各事業者にしか解読できないため、仮にリスト情報が流出したとしても、個人の特定は不可能だ。

また、「FDS」は、悪質なユーザーが氏名・メールアドレス・住所などの情報をわざと一字違いで入力したり、旧漢字で入力したとしても、同一人物であると判定する。こうした高精度の“名寄せ”技術も同社の強みだ。

「FDS」の強みの2つ目は“低価格”である。かっこ株式会社は、この分野では新規参入したベンチャーなので、業界でみると後発だ。そこで、世界で戦っていくために、 “高精度性”と“低価格”の2つを同時に実現することに成功した。

不正利用対策が進まない、業界構造にベンチャーのチャンスがあった
ビジネスアイデア発想のきっかけ

かっこ株式会社の代表を務める岩井裕之氏は、起業前、某ネット企業に勤めていた。新入社員の頃から、「いつかは独立したい」と心に決めていたものの、なかなか一歩が踏み出せないまま、気づけば40歳手前。起業のきっかけは、ビジネススクール。そこで知り合った友人に、「いつまでにやるか決めないと始まらないよ」と背中を押された。38歳の時だった。そこで起業の決意が固まり、半年後に退職して2011年1月に会社を設立した。

創業メンバーは4名。メンバーで出資し合った数百万の自己資金でスタート。不正対策のコンサルティングビジネスを始めたが、スタート当初は売り上げが挙がらず苦労した。運転資金が底を突きそうになり、毎週のように「いつまでやるか。あと何日でこの会社は死ぬか?」と、必死の思いで事業に取り組む日々が続いた。

そんな綱渡りの経営を続けるうちに、大型のコンサルティング案件を受注。その注文書のおかげで、制度融資から運転資金を確保。ようやく会社に余裕が生まれた。

その後、徐々にコンサル案件が増加していったが、毎回同じようなことをやっていることに気づいた。これを、自動化・システム化すればもっと安く、多くの企業に提供できる。そうすれば、より大きなビジネスになるのではないか――。

マーケティング支援をする企業は非常に多いが、不正対策に力を入れている企業はまだまだ少ない。国内にも競合らしい競合も見当たらない。実は、足元にブルーオーシャンがあったのだ。そしてシステムの開発をスタートし、試行錯誤を繰り返しながら「FDS」を完成。2012年6月にリリースした。

しかし、「こうしたサービスを、なぜ大手のクレジットカード会社が開発しなかったのか?」と思われる読者もいるだろう。実はクレジットカード業界の構造に、不正利用対策が進まない秘密があるのだ。

大手のクレジットカード会社は、「3Dセキュア」という不正防止の仕組みを推進している。ECサイト上のクレジットカードを利用する取引の際、従来のカード番号+使用期限に加えて、セキュリティのための暗証番号を入れさせるというものだ。

しかし、クレジットカードのパスワードを覚えている人は少ないだろう。筆者も「クレジットカードにパスワードなんてあったかな?」と首をかしげたほどだ。

一方で、EC事業者側は、できるだけユーザーに簡単に買ってもらいたい。ネット上の決済では、クレジットカード番号の入力という行為が一番の肝だが、ユーザーにしてみれば、怖い・不安・面倒といった面があり、神経を使う。そのうえ、さらにクレジットカードのパスワードまで入力させるとなると、利用者数が減ってしまう恐れがある。

そうした懸念から、大手EC事業者はそのような動きに反対している。このような背景もあり、実は3Dセキュアは普及していないのだ。しかし、不正利用対策はしなければならない……。しかも、ネット上での不正利用に関して、クレジットカード会社は損金を保障してくれない。

もともと、クレジットカードは対面式からスタートした仕組みだ。店舗で買い物する際、カードの提示とサインを求められる。本人のサインがあるので不正利用の防止にもなり、仮に不正な利用があった場合、カード会社が損金を負担するようになっていた。

しかし、ネット上での利用にはそのルールが適用されず、不正利用された場合は事業者負担。多くのEC事業は原価率が高いので、利幅はそれほど大きくない。売り上げのうち、1%でも不正利用されれば経営に対する影響は深刻だ。だからこそ、不正利用対策は事業者にとっては大きな課題だ。ここに、同サービスのニーズがある。しがらみのないベンチャーだからこそ切り込んでいける、未開拓のマーケットがあったというわけだ。

2012年6月にリリースした「FDS」の契約数は順調に伸びている。EC市場規模に関して、現在、BtoCで8.6兆円ほどと岩井氏は見ている。不正をするユーザーは、常にうまみのあるところに集まる。EC市場が拡大すればするほど、不正ユーザーも増えていくだろう。「FDS」への業界二―ズは、ますます増加していくはずだ。

目指すは世界! どの分野でもいいからナンバーワンになる
将来への展望

岩井氏に将来の展望を聞いてみると、具体的な数字までは明らかにしなかったが、「まず年商数十億円を目指す。さらにIPOもしたい」と語ってくれた。

 ちなみに、日本のEC事業者は8万~10万社あり、岩井氏は、先々、市場規模は国内で100億円、アジアも視野にいれている。

EC事業者に限らず、例えばSNSなどのコミュニティーサービスでの悪質なユーザーの自動排除などにも転用可能。そこまでマーケットを広げると、ビジネスチャンスはさらに大きくなるだろう。

かっこ株式会社の経営方針は、「ナンバーワンになること」だという。ほかに圧倒的に強いナンバーワンがいたとしても、その分野で勝てるものをみつければ突破口が見え、ナンバーワンになれる。「ナンバーワンになる強みを持つことが大事」というのが岩井氏の理念だ。

世界でも数社しか手がけていないマーケットで、しかも日本のベンチャーが先端を走っている。取材をしていて、実に嬉しい気持ちになった。ぜひ、世界で圧倒的な「ナンバーワン」になってもらいたい。

かっこ 株式会社
代表者:岩井 裕之 スタッフ数:7名
設立:2011年1月28日 URL:http://cacco.co.jp/
事業内容:
Saas事業コンサルティング事業

当記事の内容は 2013/2/5 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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