運営メンバーは全員大学生。本の選び方を変える新サービス「Booklap(ブックラップ)」

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

フレーズから本を選ぶ? 新たなサービスが誕生
展開している事業内容・特徴

booklap1いきなりだが、皆さんはどのような方法で本を選んでいるだろうか? ふらりと立ち寄った書店で気になった本、テレビで紹介されていて面白そうだと思った本、好きな作家が書いている本などなど、そんな感じで本を選んでいるはずだ。

しかし、近年は書店数が減りつつあり、ネットの情報で本と出会うことが多くなった。Amazonや楽天ブックスなどのサイトが好調と聞く。

さて、今回紹介するベンチャーは、これまでとは違った角度から本を選ぶきっかけを提供するサービス「Booklap(ブックラップ)」である。

「Booklap」では、読書をするなかで、心に残ったフレーズを保存して共有することができる。保存したフレーズは、Facebook上の友達やほかのユーザーに公開することができ、その中から嗜好に合った本を見つけるという仕組みだ。

また、ユーザーには個人のデジタル本棚が与えられ、読んだ本をそこに並べていくこともできる。同じ本を読んだユーザーとつながる機能もあり、さらなる新たな本との出会いの機会が広がっていくというわけだ。

運営・開発元は株式会社Prosbee。代表は20歳になったばかりの笠井レオ氏。大学1年の時から起業の道に進み、リリースするサービスは「Booklap」が2つ目だ。他の起業メンバーも全員大学生という若々しい陣容である。

2012年6月に、300人限定でクローズドベータ版を開始。同年12月には正式版をローンチした。クローズドベータ開始後の半年間は、完全招待制で運営。半年間のユーザー投稿数は1700、書籍登録は3500冊。今も、1日に書籍が200冊ほど、投稿数も数十件のペースで増え続けている。

この数字について代表の笠井レオ氏は、「今まで多くの読書家が、好きな言葉やフレーズをメモ書きしていたが、オンラインで共有される場がなかった。そのような場ができたことで、大きな反響を呼んだのであろう」と分析している。

現在のビジネスモデルはシンプルで、書籍の販売による手数料のみ。「Booklap」に掲載されたフレーズを通じて本と出会うことで、本が売れる機会が発生する。今後は、出版社などと共同プロモーションによる売上も計画している。いつか電子書籍が一般化すれば、本の流通は劇的に変わる。ネットで気に入ったフレーズと出会って、すぐに電子書籍を購入して読書ができる――。同社はそのような環境変化に、ビジネスチャンスを見出しているのだ。

大学1年時につくったサービスがきっかけで起業
ビジネスアイデア発想のきっかけ

booklap2実は笠井氏は、プロサッカー選手を目指していた。しかし、15歳の時に米国に旅行し、そこで出会った経営コンサルタントに「起業家」をたくさん紹介され、起業に興味を持ち始めた。そして、16歳でオートラリアに留学。高校生ながらソーシャルコマースのベンチャーや有名家電メーカーでインターンとして働いていたという。

起業への意欲をふくらませて帰国した笠井氏は、大学に入学するとすぐに、大学生向けに講義ノートをネット上で300円から購入できるサービスを開発。それがサービス開始後わずか2日間で5000人のユーザーに使われるという反響だったが、教授に目をつけられ、このビジネスモデルは頓挫。

しかし、このサービス立ち上げがきっかけとなって、インキュベートファンドの和田圭祐氏と出会うことになる。和田氏から「書籍サービスで一緒にやろう」と言われ、インキュベートファンドが運営する「インキュベートキャンプ」という起業家輩出プロジェクトに参加。そこから「Booklap」の開発に取り組み始めた。当初、考えていたのは、さまざまな人のメモ書きを共有するというコンセプト。そこからビジネスプランを練り上げて、現在の「Booklap」のサービスにいきついた。

共同創業者である池田知晶氏との出会いも大きい。彼女も大学生(3年生)だが、以前に本を出版した経験があった。出版業界の知識と業界とのコネクションが強く、そこから「書籍に関連するサービスを」という流れができた。

また、笠井氏自身も子供の頃から大の本好き。3日に1冊くらいのペースで本を読むそうで、中学生の頃の愛読書は「文芸春秋」。当時、考古学者であった祖父の勧めで読み始めたという。「Booklap」は、自分自身で使ってみたいと思うサービスだったわけだ。

もう一人、エンジニアの吉原氏(大学1年生)とは、ソーシャルランチで知り合って意気投合。吉原氏も加えた3名の創業チームで開発を開始した。

2012年5月に、株式会社Prosbeeを設立。資本金は600万円。起業資金の一部はベンチャーキャピタルからの投資も受けている。「Booklap」のクローズドベータ版は1カ月で完成。知り合いなど300人ほどに限定公開し、反応を見たところ反響がよかったため、本格的に開発を進めていくことになった。

開発で特に意識した点はUI(ユーザーインターフェイス)だという。例えば、写真の共有サービスであれば写真のサイズが決まっているので画面デザインが決まりやすいが、「Booklap」の場合は、1行でおさまるフレーズもあれば10行くらいの長いフレーズもある。それをどう見せれば使いやすいかという点について、議論、研究を重ねた。

クローズドベータ版公開中の6カ月間に、何パターンかのUIを提案し、ユーザからのフィードバックを参考にしながら、最終的には現在の3カラム(3段組)レイアウトに落ち着いた。「まとめサイト」でよく見られるレイアウトに近いもので、おそらくこのかたちが一番使いやすいと決定したそうだ。

笠井氏に、気になっているサービスを聞いたところ、アメリカの「Goodreads」というサイトを教えてくれた。「Goodreads」のユーザー数は2000万人。書籍のデータベースが3億冊以上の巨大サイトだ。特にSEOが強く、書名で検索するとAmazonとGoodreadsが競い合う状態。

投稿される評価数が圧倒的に多く、しかも実名で登録するサービスというのが強みで、さまざまな人のレビューや気に入ったフレーズ、どんな人がどのような本を読んでいるのかという情報が公開されている。Amazomのレビューサービスも同様だが、こちらは匿名。実名であるグッドリーズのほうがユーザーに信頼され、それがサイトパワーにつながっているのだ。

アメリカで流行ったサービスは、いずれ日本でも流行る。笠井氏もいずれは「Goodreads」のようなサービスが日本で普及すると考えているが、こと実名制という点に置いて日本は遅れている。だからこそ、まだまだチャンスがあるとみている。

Prosbee社は、Voyageグループが運営するシェアオフィス「BOAT」に入居している。スマビ総研で取り上げたベンチャーが、何社も入居している有名なインキュベーション施設だが、「BOAT」に入れたことはとてもラッキーだったと笠井氏。

「BOAT」に入居しているベンチャーは、希望すればVoyageグループ役員のマンツーマンでの経営アドバイスや、同グループのSEO専門家からの指導も受けられる。SEOは、素人では難しい面もあるので、プロから具体的なアドバイスが受けられるというのは、かなりのメリットだ。もし有料でコンサルを受けるとしたら、起業したてのベンチャーではとても払えないコストになるだろう。

ちなみに、Prosbee社では毎週土曜日に読書会を開催している。毎回10人程度が集まり、ご飯を食べながら、最近読んだ本を発表し合うというもの。ユーザーとリアルにかかわることによって距離がぐっと縮まり、サービスに対するフィードバックも受けやすい。今後も、ユーザーとProsbee社の良好な関係を保ちながら、サービスを向上させていく計画だ。

電子書籍時代を見据えて。まずは2013年内に1000万冊の登録を目指す!
将来への展望

笠井氏に、今後の展望を聞いたところ、「まず2013年内に、1000万冊の書籍登録を目指している」とのこと。海外進出も視野に入れており、「具体的には、韓国や台湾、インドネシアなが面白そうだ」と言う。

電子書籍が普及するにつれて、さまざまなイノベーションが起きる。電子書籍で本を読むことにより、今まで使っていた付箋やしおり、マーカーを引くというような行為が、オンラインに持ち込まれる。例えば、友人がある本に引いたマーカーを知ることができる。そこから、その本への興味が喚起される。Prosbee社は、本にまつわる新しい行動・習慣の提案者たるべき存在を目指している。

2015年には、日本の電子書籍市場が1800億円になるという報告がある。ちなみに、2011年の書籍流通総額は約1兆1000億円 (オリコン調べ)だ。笠井氏は、電子書籍普及のターニングポイントは、本の流通総額の10%以上を電子書籍が占めるであろう、2015年から2017年くらいとみている。

この頃には、普通に電子書籍が売れるようになり、一方で従来型の書店は今以上に苦境におかれているはずだ。そうなると、本を選ぶという行為自体を変得ざるを得ない。ネットを通じて、尊敬する人が読んだ本、知人が読んだ本を購買することが普通になっていくのだ。

「Booklap」も同様に、日本中の本好きが集まり、その周囲に影響を受ける人たちがいて――そんな生態系を構築することで、大きな収益源を獲得できそうだ。

最後に笠井氏は、「本といえば『Booklap』。そんな存在になりたい」と語ってくれた。

株式会社Prosbee (プロスビー)
代表者:笠井レオ スタッフ数:5名
設立:2012年5月 URL:http://Booklap.com/
事業内容:
Booklap「本の中の心に残ったフレーズを共有するサービス」

当記事の内容は 2013/1/17 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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