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これからのコミュニケーションが激変する!? メールから自動的にスケジュールを登録してくれる『プロミスメール』
展開している事業内容・特徴
今回紹介する、株式会社AnchorZ(アンカーズ)は、従業員わずか3名というベンチャーだ。東京・神田にある小さなオフィスの一室で、日本、韓国、インド、中国、EU、米国など世界各国の特許を取得し、その技術力の高さが注目を集めている。
同社が開発しているのは、『プロミスメール』というアプリ。メールを送受信する際に、メール本文内の日時や場所などの情報を独自開発した“構文解析エンジン”に読み込ませることで、システムに対応するカレンダーへ自動的にスケジュールを登録してくれる。
現在は、スマートフォン用(Android版、iPhone版)アプリケーションとして展開している『プロミスメール』。この技術により、メールとカレンダーという独立したプログラムを“構文解析エンジン”で繋つなげることにより、ユーザーが「登録したい」と思うさまざまな内容や状況を即時にスケジュールとして反映することが可能になったのだ。
つまり、『プロミスメール』を使えば、アポイントメールを送信した後に、従来のようなカレンダーに同じ内容を再入力するといった手間が一切かからない。そのほかにも驚愕の優れた機能が多数搭載されている。
株式会社AnchorZの創業者である徳山真旭氏の行うデモを、筆者が初めて見せてもらった瞬間、「このサービスは日本国内のみならず、世界のデファクトスタンダードになるのではないか」と確信した。これからは、メールをベースとしたコミュニケーション活動が、飛躍的に効率化されるに違いない、と。
世界特許取得後すぐ、同社の“構文解析エンジン”の技術力の高さが多方面から注目され、大企業からの受注や引き合いが急増加しているそうだ。
ビジネスモデルとしては、『プロミスメール』の有料版販売のほか、同アプリを法人顧客にカスタマイズして導入したり、マーケティング情報を法人顧客に提供して収益を獲得することを計画している。すでに、大手のアミューズメント施設やプロスポーツチームなど数社から問い合わせが殺到しており、一部受注もしている。
電子手帳の使い勝手の悪さ、不便さからアイデアが生まれた
ビジネスアイデア発想のきっかけ
徳山氏は、株式会社AnchorZを設立する前に、大手メーカーやシステム会社などで多く商品やビジネスモデルを企画・立案し、多くの優秀な開発実績を持つエンジニアと太いパイプを持っている。特に、DVD/CD仮想化の企画・開発・販売では偉大な功績を挙げている。
徳山氏が、『プロミスメール』のビジネスアイデアを発想したきっかけは、大手メーカー在籍中に開発を手がけていた、電子手帳の使い勝手の悪さにあった。電子手帳内にあるスケジュールや、メモ帳、議事録などの情報が一体化されておらず、業務上の非効率さや不便を感じていたそうだ。それを解消するためにどうすればよいかと考えて、現在の“構文解析エンジン”の特許出願と自社での開発に踏み切った。
ただし、電子手帳で感じた非効率さや不便さに関しては、遠からずそれらを解消するソリューションやデバイスが登場すると徳山氏は感じていた。その予想は当たり、マイクロソフトがMicrosoft Outlookと連動したスケジュール管理システムを発表。ほかにも、ビジネス上の不便さを解消するスマートフォン・アプリが続々とリリースされ始めていった。
『プロミスメール』の開発に苦労した点を聞いたところ、「機械が人間の作成するメールの文章を認識するために、多くのパターンが存在します。多言語であればなおさらです。それに合わせて解析エンジンを変更・開発しなければならなかったことでしょうか」という答えが返ってきた。
もうひとつ、20年ほど前から日本国内でも学術的に日本語の構文解析の研究が進んでいたため、「このアプリケーションが国内で特許取得できるか」を弁理士たちと調査・検証することも大きな懸念材料だったそう。
そうしたなかで、2007年1月9日に開催されたMacworld Expo 2007でスティーブ・ジョブズが発表したiPhone(ハードウェアキーがない端末)を見せられた瞬間、「これが必ず世界中に席巻する」と確信した徳山氏。その後、数千万円の開発費をかけて、『プロミスメール』をリリースした。
モバイル×スケジュール管理で新マーケットを開拓。行動管理情報を活用した新しい収益モデルを構想中!
将来への展望
モバイルデバイスは、「その人そのもの。すなわち分身である」と語る徳山氏。確かに、メールや電話などで他人とコミュニケーションを行うツールであり、デバイスにはその履歴も残される。そして、人と人のコミュニケーションが最後に辿り着く先は、アポイントメントに代表されるスケジュール管理、TODOリスト を含む行動管理となり、それもデバイスには行動履歴として記憶されるからである。
すべてのコミュニケーション情報をモバイルデバイスへ記録・統合するために、徳山氏は携帯業界の各キャリアやさまざまなハードウェアベンダーに対して、『プロミスメール』を組み込んでもらう戦略を立てている。さらに、ホームネットワークやゲーム機、カーナビといったハードウェアへ応用も視野に入れているそうだ。
また、個人の行動管理をマーケティング情報として活用する収益モデルも検討中だ。日本経済の低迷とともに減少傾向にある広告のなかで、モバイル広告のマーケットは2012 年は1200億円の実績と、唯一の伸びを見せた。2014 年には2400 億円に成長するといわれており、徳山氏は、2014年にその10%に当たる24億円の収入を目標として、『プロミスメール』の展開を進めている。
『プロミスメール』を使うことで例えば、広告メールを受信した時に、アプリケーションの画面上にサイネージが表示され、ユーザーは広告の内容に応じて、カレンダーに登録したり、動画を表示したり、Webページへリンクしたりすることも可能となるだろう。
スケジュール登録というユーザーのリアリティ“今”に即したログを解析し、行動ターゲティング広告を展開できるためとの親和性が高まるため、高いコンバージョンの広告効果獲得が期待できることから、そして、「もっと消費者に訴えかけることができる素敵な広告、もっと踏み込んだかたちで企業と結び付けたビジネスモデルを確立したい」と徳山社長は語る。
温和な雰囲気でインタビューに応じてくれた徳山氏の眼には、『プロミスメール』の確かな手応えと“構文解析エンジン”の技術力に対する自信がみなぎっていた。まだまだスタートしたばかりの同社のビジネスだが、これからの成長と徳山社長の奮闘を応援していきたい。
株式会社AnchorZ | |
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代表者:徳山 真旭 | スタッフ数:3名 |
設立:2009年4月1日 | URL:http://anchorz.co.jp/ |
事業内容: ユーティリティ関連ソフトウェア・パッケージの企画・開発・販売。通信、セキュリティ、関連商品の販売代理店業。インターネットによるソフトウェアのダウンロード販売とASPサービスの運営。 特許出願(出願番号:特願2009-154378) |
当記事の内容は 2012/12/4 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。