登録者10万人。総登録額50億円!働き方を変える”お仕事市場”サービス「Lancers (ランサーズ)」

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執筆者: ドリームゲート事務局

登録者10万人。総登録金額50億円突破! 働き方を変えるサービス
展開している事業内容・特徴

lancers1スマビ総研では、これまでにさまざまなクラウド型ビジネスを紹介してきたが、クラウドソーシング国内最大規模のサービスを展開している「Lancers (ランサーズ)」をまだ取り上げていなかった。今回は「Lancers」を創業した秋好陽介氏に、ビジネスの立ち上げから、最大手にまで急成長した秘密、今後の展望までを伺ってきた。

「Lancers」は仕事をしたい人(ランサー)と、仕事をお願いしたい人(クライアント)をつなぐマッチングサービスの一つで、仕事のマーケットプレイスと呼べるものだ。

登録しているランサーは、デザイナー、ライター、プログラマー、翻訳者といった専門職から、主婦や学生、普通のサラリーマンなどと幅広い。依頼される仕事もシステム開発、Webデザイン、DTPなど難易度の高いものから、テキスト入力やデータ収集など、誰でも手軽にできる作業までさまざま。仕事単価は、数千円から数万円程度のものがメインボリュームだが、仕事単価は上昇傾向にあり、高いものでは100万円を超える案件もあるそうだ。

実は、クラウドソーシングという言葉が一般的になる前から、同じようなサービスは存在していた。有名どころでは「楽天ビジネス」などがそうだが、ランサーズはその中でも際立った成長を遂げており、2012年11月でランサー(登録者数)が10万人を超えて、1カ月で約1万人のペースで増加している。

また、これまでに登録された仕事の金額が総額で50億円を突破しており、依頼された仕事数も2012年11月時点で累計約8.6万件。仕事数自体も毎月110%以上のペースで急成長中している。そんな「Lancers」だが、秋好氏によれば、「2008年12月にリリースしたあと、最初の2年間感は鳴かず飛ばずで…。とても苦労しました」と意外な答えだった。

急成長のポイントは、とにかく「顧客第一目線」でつくりあげたサービス品質

急成長の要因を秋好氏に尋ねたところ、「コツコツと地道に進めてきたことが花開いた」という謙虚な返答。しかし、あえてポイントを挙げてもらったところ、「顧客第一目線」という答えが返ってきた。

秋好氏はランサーやクライアントからの要望を聞くことに毎日決まった時間を割いている。問い合せも含めれば、50~100件の要望に目をとおしているそうだ。また、クライアントやランサーに電話でヒアリングをしたり、時には直接会いに行って意見を聞くなどして、サービス品質の向上に努めているのだ。

「顧客第一目線」を反映した機能の一つが、タスク方式の導入だ。秋好氏が実際に登録しているランサーにヒアリングしてわかったことは、単純作業のニーズがとても高い点だった。ランサー側は「誰でもできる仕事が欲しい」、一方のクライアント側も、「ある程度まとまった単純作業を低コストで依頼したい」というニーズが多かったのだ。そこで、一つの案件を複数人が担当できるようにし、ランサー側は空いた時間にちょっとだけ作業する、というやり方が可能になった。時間給にすれば700円~1000円程度だが、隙間の時間でも仕事ができて稼げる、この仕組みが支持された。

また、2011年12月には時間報酬の仕組みも導入。これは、登録しているエンジニアが、とある仕事に見積書を出したが、その倍の作業が発生してしまい大変だったという話が届いた。これを受けて、見積の精度が難しい場合に、時間報酬でも仕事を受けられるようしたわけだ。これであれば作業時間に応じた報酬になるので、当初の見込みをオーバーしても、ランサー側はそれなりの報酬を受け取ることができる。クライアント側も下手に安い見積もりを選択して成果物が低品質になるよりも、実績のある人には、納得するまできちんと時間をかけて高い品質を求められるというメリットが生まれた。

ほかにクライアント側に支持されている機能を挙げてもらったところ、作業を依頼したランサーが、実際にどの程度作業を進めているかを管理できる仕組みが好評だそうだ。これは、作業者がパソコン上で行った操作が記録されていて、進ちょく具合が一定時間毎に見られるというもの。プライバシーを侵さない範囲で、キーボードの入力回数からマウスの動く回数まで把握しているという。

自分が使いたいサービスが欲しくて起業。サービスの開発は序盤から大苦戦
ビジネスアイデア発想のきっかけ

lancers2ランサーズを立ち上げたきっかけは、秋好氏の自分自身の経験だった。秋好氏は大学卒業後、ニフティに入社している。同社ではサービス企画・開発などを担当していたが、自分自身が外部に仕事を発注する際、大企業に頼むよりも、フリーランスの方がコストメリットが大きく、フリーランス側も直接仕事を受けた方がうれしいので、みんながハッピーなはず――と考えていた。しかし、企業内の慣習や規則によって個人に仕事を依頼することが難しい状況にあった。

そうした事情に接する中で、企業に勤める働き方以外の選択肢を増やしたいと考えるようになり、その仕組みをつくるためにランサーズを起業した。ちなみに、秋好氏は学生時代に学生ベンチャーを運営していたそうだ。2008年4月に起業。27才の時だった。

秋好氏は元々ITエンジニアでもあり、また自分でデザインもできるというマルチプレイヤーだったが、サービスのリリースを急ぐために、最初は外部の開発会社に依頼した。ところが、これが大きな失敗となった。

開発会社のエンジニアが突然いなくなり、開発が途中で暗礁に乗り上げてしまったのだ。そこで、つくりかけのソースコードを買い取り、自分で開発を引き継いだ。起業時のパートナーだったデザイナーにもプログラム言語の本を渡して、「これを見て開発をしてくれ」といった具合。結局、秋好氏とデザイナーの二人三脚でサービス開発を進め、四苦八苦しながらも、何とか2008年12月にローンチできたのだという。

そこから1年あまりは2名体制のままで運営していたそうだが、なかなか事業としての芽が伸びず苦労したらしい。サービスをローンチして2年間は経営的に厳しい時期だったそうだが、2011年後半から急成長を始めて、現在は黒字化、生まれた利益はサービスの開発・向上に再投資しているそうだ。

ビジネスモデルのポイントは「教育」。市場そのものを創出したい

秋好氏にランサーズのビジネス・ポイントを伺ったところ、「教育」というキーワードが出てきた。

同社では「認定ランサー」という制度を設けており、フリーランサーの能力を計るエキスパート・レーティングという米国のテストを導入している。就職試験のSPIテストのようなもので、Web上でさまざまなスキルをテストし、自分が全体でどのレベルにいるかかがわかる仕組みだ。例えば、プログラム言語のPHPのテストでは、質問に制限時間内で答えていくと、自分のスキルが世界の上位何パーセントにランクしているかを判定してくれる。日本でこれを展開しているのは同社だけだそうだが、このテストはGoogleの社内教育用にも採用されており、全世界でみると1000万人以上に使われている。

エキスパート・レーティングの仕組みを使って自己成長できる場を提供することで、普通の主婦でもランサーズに登録すれば仕事ができるようになる。そして、ランサーたちを普通に稼げる程度の技術者に教育していきながら、市場自体を拡大させていくことが秋好氏の狙いだ。

ちなみに、秋好氏が「普通に稼げる」というのは年収500万程度を想定しているそうで、それくらいの収入をフリーランスでも十分稼げる、それも特に高度なスキルや才能がないい人でも達成できるようになれば、日本人の働き方を変えられると予想している。

2016年には100万アカウント。海外にもサービスを輸出する!
将来への展望

今後の同社の目標は、2016年までに利用者数100万を突破すること。将来的には500万人まで広げたいという構想で、国内のみならず、海外、特にアジア圏に進出したいと考えている。

それも単に作業単価の安いオフショア拠点ということではなく、海外マーケット自体で仕事の受発注を行えるようにしたいそうだ。日本国内でつくりあげたサービス・プラットフォームを海外市場に輸出したいという秋好氏の構想は、とても面白い視点だ。

数あるクラウド型ビジネスでも、「働き方を変える」という壮大なテーマで事業を推進している秋好氏。名だたる大企業が軒並み大赤字を出し、大規模なリストラが進むなか、ランサーズのようなベンチャーが切り開くマーケットで、新たなビジネスチャンスが大量に生まれることを期待したい。

ランサーズ株式会社
代表者:秋好 陽介 スタッフ数:20名
設立:2008年4月 URL:http://www.lancers.jp
事業内容:
クラウドソーシング事業。

当記事の内容は 2012/11/29 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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