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“すごい!”よりも“みんなが使いやすい”を重視したプロジェクト管理ツール
展開している事業内容・特徴
多くのベンチャー企業が、“とにかく便利ですごいサービスをつくる”ため、熾烈な開発競争を続けている。しかし、“すごさ”を追求しすぎた結果、かえって操作が複雑でわかりにくくなってしまい、一部のユーザーしか利用できないサービスも多い。
そこで、今回は“すごさ”よりも徹底的に“使いやすさ”を追求して人気を集めているサービスをご紹介する。それが、プロジェクト管理ツールの「Brabio(ブラビオ)」である。
「Brabio」は、“ガントチャート”と呼ばれる横軸のチャート形式のスケジュール帳の上でタスクを管理する。一番の特徴は、ドラッグして線を引くだけで簡単にタスクの日程が登録可能な点。また、タスクをクリックすると、関係するメンバーを招待したり、詳細情報などを登録することも。それらを登録するだけで、他のメンバーと案件を共有でき、それぞれのメンバーはコメントを記入したり、進歩状況を設定したりすることができるのだ。
さらに、タスク(線)とタスク(線)を連結させて、仕事と仕事をつなぐことも可能。多くの仕事は、一つの工程で終わらない。例えば、Webサイト制作。「企画」「デザイン」「コーディング」という作業に分かれ、それぞれメインになるメンバーが違うとする。このケースの場合、それぞれにタスクを登録・連結させておくと、前のタスクが完了すれば、後に続くタスクにかかわるメンバーにメールで通知してくれるのだ。
仮に日程に変更があった場合でも、タスクを連結させておけばガントチャート上で同時に日程を移動させることができる。こうした連結機能は、高価なプロジェクト管理ツールでは昔から使われてきたものだが、あまり一般的ではないのか、意外とその便利さを知らないユーザーも多かったようだ
また、すべての履歴を閲覧することができるので、担当者に変更があった場合でもスムーズに仕事の引き継ぎをすることができる。
登録はとても簡単。代表者のメールアドレスとプロジェクトの名前を入力するのみで、自分たちのチームの管理ツールが完成。1分もかからないほど短時間で完了する。
さらに、「Brabio」は、メンバーがタスクの管理画面にコメントを書くと、関係者にメールが届く。そして、そのメールに返信をすると、管理画面にコメントが書き込まれる仕組みとなっている。一つ一つのタスクがメーリングリストのようになっているのだ。
従来のメーリングリストだと、誰が何を書いたのかわかりにくく管理が難しかったが、「Brabio」の場合は投稿を整理して履歴も含めたメールを飛ばしてくれるので、読み落としたメールがあったとしても、後から読み返せば状況を把握できる。「Brabio」を共同開発した町田拓也氏は、Webにアクセスする時間が取れなかったり、ネットがつながりにくい場所にいる人への配慮から、このような仕組みを考えついたという。
“あしあと”機能も面白い。誰が何をやったかがログにすべて残り、共有される仕組みになっている。例えば、誰かが資料をダウンロードしたら、その履歴を他のメンバーも見ることができる。できる限り一人一人の履歴をオープンにして、モラルのあるチームにしようという意図があるようだ。
ユーザーの属性は非常に幅広い。ネット系のユーザーが比較的多いが、ヘビーユーザーにはオールドビジネスの人も目立つ。学生が利用しているケースもあるという。
現在、3万5000社ほどがフリープランを利用しており、今でも1日に50社ほどのペースでユーザー数が増加している。一つのプロジェクトにつき5ユーザーまでは無料で利用可能。それ以上は有料プランになり、例えば10ユーザーまでは3150円、20ユーザーまでは6300円というように、人数が増えるほど価格は上がっていく。ちなみに、有料サービスのシェアは、ユーザー全体の3%ほどだという。
世の中に貢献できるものをつくりたい! ユーザー視点で徹底して考え抜いたサービス
ビジネスアイデア発想のきっかけ
「Brabio」の開発元である株式会社ブラビオを創業した田中儀明氏と、共同創業者の町田氏は、元々はサイボウズの社員だった。2人とも独立志向があって意気投合。サイボウズを退職し、一緒にビジネスを始めた。
2人が事業内容を考えている時、「サイボウズでやり残したことがしたい」という話になり、そこから“プロジェクト管理”のアイデアが出てきたという。早速、“プロジェクト管理”の業界について調べてみると、ニッチで競合が少ないという事に気づいた。その後、プロジェクト管理のマーケットで挑戦していくことを決めたという。
プロジェクト管理ツールを選択した理由はもう一つある。それは田中氏自身の経験だ。田中氏は会社員時代、プレイングマネジャーとして活躍していた。しかし、プレイヤーとして優れている点と、マネージャーとして優れている点はまったく違うことに気づいていた。プレイヤーとしては自信があった田中氏だが、マネジメントが苦手で、とても苦しんだ時期があったそうだ。この時の経験から、「もっと簡単で高機能なプロジェクトマネジメントツールがほしい」と思うようになり、それが「Brabio」の開発につながっている。
起業するにあたって、2人の間には、「例えお金にならなくても、世の中に貢献できるようなものをつくっていきたい」という共通の思いがあった。しかし当時はお金もなく、人もいない状態。ただし、食えなければ意味がないということで、まずは自分たちが食べていけることを目標に、プロジェクト管理ツ―ルの開発を始めたそうだ。
“このサービスは他とは違う”というインパクトを世の中に与えるため、他のサービスにはないものを考え続けて、実に1年半もの開発期間を置いて、サービスを開始した。
サービスリリースにあたっては、特にWebサイトに力を入れたという。ツールを紹介するWebサイトも一つの製品だと考え、自分たちの主張はなるべく書かず、ユーザーが知りたいであろう、“いくらで何ができるのか?”ということをメインに伝えることを重視した。動画と文字を駆使して制作されたWebサイト。「わからないことは電話で質問してください」と大きく打ち出し、とにかくユーザーのためを思ってつくり上げた。そんなユーザーに寄り添う施策が奏功し、サービスリリース後、サイト訪問者の実に4割もの人々が「おためし登録」をしてくれた。
「Brabio」は今までさまざまなメディアに取り上げられ、紹介されたが、特に「ライフハッカー」の影響力は大きかったという。「ライフハッカー」とは、IT系では有名なサイトで、ITを駆使したスマートな仕事術や生活全般に役立つライフハック情報を紹介するサイトだ。
「ライフハッカー」のような有名メディアにリンクを貼ってもらうと、ある程度ページランクが上がる。それが相乗効果となって、さらに人が来て……というように、自然と知名度が上がっていく。結果的に、SEO対策をせずとも、“工程管理”“プロジェクト管理”“タスク管理”というキーワードでいつの間にか検索1位に。広告も出していなかったが、同社で調べたところ、この分野では国内シェアがダントツの1位になっているそうだ。
ビジネスマンの働き方を変える! 外注社とのやりとりを効率よくしたい
将来への展望
今後は「Brabio」をビジネスソフトのアプリとして販売することを考え、準備を進めているという。プロジェクト管理だけだと、どうしても足りない機能があるので、他のサービスと連携するかたちも検討しているそうだ。
2012年11月中には、タスク自体に外注業者を招待できる機能を搭載する計画だ。もちろん外注業者は、関係する以外のタスクを見ることができない。従来のグループウェアは社内で完結してしまっていたが、仕事は多くの場合外部の人とやるもの。「Brabio」は、社外の人とも効率よく仕事ができるようにリニューアルを重ねていく。
町田氏によれば、このリニューアルは今後のビジネスマンの働き方を変える可能性があるという。ビジネスを進めるうえでさまざまなパートナーや業者と連帯するシーンが多いだろうが、それぞれの業者とのやり取りは他の業者に知られたくない。今までのプロジェクト管理ツールであれば、管理者がパスワードを発行して、それぞれの会社に知らせなければならなかったが、「Brabio」リニューアル後は、同ツールに相手を招待するだけで仕事を始められる。一つのプロジェクトに複数のパートナーや業者を登録していても、他のタスクの閲覧は不可能なので安心して利用ができる。
インタビューの終わりに町田氏は、「このような機能は、実際に『Brabio』を使った人にしかわからないよさがある。人が人を呼ぶ仕組みになっていくと思うので、いかにユーザーを喜ばせて口コミを広げてもらえるか。そこをいかに表現するかが、直近の一番の課題になると思います」と語ってくれた。将来は海外進出も考えているというブラビオ社。今後の発展が楽しみだ。
株式会社ブラビオ | |
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代表者:田中 儀明 | スタッフ数:10名 |
設立:2009年5月 | URL:http://brabio.jp/ |
事業内容: インターネットサービスおよびソフトウェアの開発・販売。広報を含むプロダクトマーケティングコンサルティング。企業内システムなど受託開発。 |
当記事の内容は 2012/11/13 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。