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公務員の転職・独立志望者を対象とした情報サイト
展開している事業内容・特徴
一般的に公務員が転職・独立をするというイメージはあまりないだろう。安定した収入が得られ、休みも十分にとることができるので、手放してしまうのはもったいないという考えから、途中で退職する人は珍しいようだ。しかし、中には転職・独立を考えている公務員が少なからず存在する。今回は、そのような人に情報提供している珍しいサイト「公務員プラス」を紹介する。
「公務員プラス」のコンテンツは、公務員から転職・独立起業などで退職した方へのインタビュー記事。“なぜ公務員になったのか?”“なぜ公務員を退職したのか”“退職してよかった点”“現在公務員の人に向けたアドバイス”などが書かれている。意外にも、転職よりは起業・独立する方も方が多いそうだ。
国内には約350万人の公務員がいる。その数%だけでも真剣に転職や独立起業を考えているとすれば、数万人から十万人以上の潜在層がいることになる。この人数を大きいと見るかどうかでビジネスの見方も変わるだろう。
「公務員プラス」は、公務員に特化した唯一の情報サイトということから、日々会員が増えて続けており、現在の会員数は3500人を超え、国内で最大規模の公務員特化型の情報サイトに成長している。ニッチなテーマでナンバーワンを取るという戦略だ。
最近では、Webサイトの知名度をさらに高めるため、モノマネ芸人のアントキの猪木さん(実は元かすみがうら市の職員だったそうだ)や2010年ミス・ユニバース代表の板井麻衣子さん(この方も元大分市役所の職員)など著名人のインタビューを掲載することで、サイトのブランディングを図っている。
また、会員限定のイベントやセミナー、交流会なども企画しており、他の公務員で退職を希望している人と情報交換をしたり、同じ思いを持つ仲間を作ることができる。将来的には、現役公務員のQ&Aコーナーを作ったり、悩み相談ができるコンテンツを開設することも予定しているという。
収益源は、公務員の転職支援だ。同サービスを運営する株式会社くらしナビは、求人事業やシステム開発事業も手掛けている。この関連で、大手人材紹介会社との提携し、公務員の転職支援を収益源としている。同社代表の須田氏によれば、このマーケットは今後、大きなビジネスになると見ている。
公務員が転職?と思われる方も多いだろう。しかし、350万人のうち1%が真剣に転職や起業を考えるとしても35000人になる。しかも、ここ数年は団塊世代の退職のあおりで大卒新人の地方公務員が大量に増えているのだが、この若手層の離職率は民間企業には及ばないものの近い水準だという。就職難の時代、苦労して公務員になったものの、思い描いていた理想の現実のギャップで転職を考える若手層も多く、そうした状況から転職支援対象者(20代、それなり以上の学歴の大卒)が多く発生しやすい土壌ができつつある。
また、転職支援以外にも、公務員だけというサイト登録属性を活かした保険や住宅など広告収入や講師をすべて元公務員にした受験予備スクールの開設も検討している。
公務員を辞めた時、利益の得かたか分からず、どこに相談すれば分からなかった
ビジネスアイデア発想のきっかけ
「公務員プラス」を運営するのは、株式会社くらしナビというベンチャーだ。その代表取締役である須田晃暢氏自身も、実は元公務員。自分自身の体験が「公務員プラス」に繋がっている。
須田氏は6年間大阪市役所の職員として働き、2006年に退職した。公務員を辞めることは稀で、とにかく転職や起業の情報を探してもなかなか見つからない状態だったという。
民間企業から民間企業への転職情報や、広い意味での独立・起業情報は山のようにあったが、全体の奉仕者として、対価性、収益性は求めない存在とされる公務員は、そもそも“利益を得る”という考え方がほとんどない…。民間では当たり前の収益を上げるというビジネスの枠外に居た存在として、ビジネスの当たり前なこともわからないため、まずはどこに相談していいのかも分からず大変苦労したという。
そもそも公務員になったら定年までずっと公務員というのが当たり前とされており、民間企業で培った経験や知識を行政に反映させるために、民間企業から公務員に転職して知識を活かすことは年齢制限などの制約で実質的にできなかったりする。須田氏はこのような今の制度は根本的におかしいと感じていた。
それならば、自らがこの悩みを解決できるような情報を発信しようと考え、最初はブログで情報を発信し始めたという。このブログは現在も続いており、アメーバブログの公務員のジャンルで上位を維持し続けていて人気だ。
その後「公務員プラス」の事業を思いつき、開発をはじめた。「公務員プラス」は、公務員というニッチな分野に特化しているため、ライバルが少ない。また、参入障壁が低くないということもポイントだという。自治体などの組織へ向けたサービスは考えられるが、“公務員”という一般職員層に向けて事業展開をしかけようという企業はまずない。そのため、今のところ独占的で、今から参入しても容易には「公務員プラス」に追いつけないと須田氏は自信を持って語る。
ちなみに、株式会社くらしナビは主力事業はもう1つあり、それは国内唯一の「求人サイト」の開発に特化したシステム開発事業「ジョブマイスター」だ。求人サイトに特化したシステム開発ということで引き合いも多く、2007年に事業を開始して、100サイト以上を開発したという。また、開発以外にもコンサルティングなども行っており、同社の収益の柱となっている。
日本経済回復のため、官と民の架け橋を作っていく
将来への展望
「公務員プラス」は着々と会員数を増やしているが、須田氏によればまだまだ満足のいく水準ではない。
現在、約350万人いる公務員のうち、「公務員プラス」のユーザーとなっているのはわずか約0.1%。須田氏は、「公務員プラス」を通して、官民の隔たりをなくし、350万人の労働市場をより流動化させたいという強い思いを持っている。そのために、ユーザーの増加は欠かせない。
今後は1年間かけてサイトを強化していくことで、転職・起業情報はもちろん、公務員ならではの悩みを解決できるさまざまなサービスを提供していく予定だという。また、現役公務員に特化した企画や、これから公務員になりたい方人向けの企画なども進めようと考えているという。
「公務員プラス」と提携したいという企業や、現役・元公務員の方からのアイデアがあれば積極的に実現したいと考えており、意見を大募集しているそうだ。
須田氏は、官民が双方のことをよく知り、活性化させることが日本経済をより良いものにするための1つの方法と考えているという。官民交流をさらに進めるために、大義を持って公務員プラスを運営していきたいと語る。
日本の未来の姿をかえるかもしれない「公務員プラス」。今後の展開も楽しみだ。
株式会社 くらしナビ | |
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代表者:須田 晃暢 | スタッフ数:8名 |
設立:2006年8月 | URL:http://www.yakuninhaigyo.com/ |
事業内容: 求人媒体・人材支援事業「ヤッパシゴト」 求人サイト構築システム「ジョブマイスター事業」 公務員の情報サイト運営「公務員プラス」 各種ポータルサイトの運営 人材紹介事業 厚生労働大臣許可:27-ユ-010227 (平成19年8月1日取得) |
当記事の内容は 2012/10/31 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。