- 目次 -
家族でつながるSNSが誕生!互いに離れていても近況がわかる
展開している事業内容・特徴
多くのSNSは、友だちや仕事仲間、趣味仲間、イベントなどで知り合った人たちとつながるツールとして利用されてきた。しかし今回、今まで注目されてこなかった人たちとつながることができる新たなSNSがリリースされた。それが、「家族」とつながるSNS、「楽家記(らくがき)」だ。
「楽家記」は、2012年7月23日にリリースされた。ITに慣れ親しんだ若年層だけが使うのではなく、親や祖父母の世代も簡単に使えるよう、サイトのレイアウトはシンプルになっている。ページの左部には「○○家」という大きな表示があり、その下に家族の写真を設定する。家族からのメッセージが表示されるのは、中央部の「リビング」と名付けられたスペースだ。更新情報もすぐに確認でき、誰でも一目見ただけで、無駄がないことがわかるレイアウトが設計されている。
Facebookのように、機能拡張を繰り返し、画面いっぱいに言葉や画像があふれたサイトは、SNSの操作に慣れている人にとっては便利かもしれないが、初めて使う人にとっては何をしていいかわからず、不便に感じてしまうと考えた。そのため、シンプルな設計にしたという。
利用方法も簡単。登録の際は、名字、家庭がある都道府県、作成者情報を記入して家族のページをつくり、あとは家族を招待するだけ。登録した家族間でのやり取りは、メッセージ投稿と見たことを表す「見たよ」ボタンを使う。SNSのもっとも基本的な操作である。
家族ごとに閉鎖的なグループをつくることができるのも特徴のひとつだ。Facebookやその他のSNSでもグループをつくることはできるが、設定のカスタマイズが煩雑だったり、逆にグループ毎の垣根が低くなりがちだ。公開範囲を限定する機能があったとしても、それを知らずに全体に向けて投稿してしまうこともあるし、オンラインでのつながりたくない相手からの友達申請を無視しにくいこともある。
しかし、「楽家記」では、完全にグループわけがされており、誤って異なるグループにメッセージを送信したり、知らないユーザーから招待されたりする心配はない。このような仕様になっていることも、誤操作を防ぐための工夫である。
家族の中でも、例えば母親には話せるが父親には話せないこともあるだろう。その場合は、家族全員のページとは別に、母親と自分だけのページを作成することで、よりプライベートな単位でのコミュニティをつくることも可能。家族間にありがちな問題にも配慮してくれているのだ。
同サービスを運営する株式会社エアーリンクの「楽家記」プロジェクトリーダーの鈴木氏は、「楽家記」を冷蔵庫のマグネットボードのような役割を担うものとイメージしている。例えば、「週末にお姉ちゃんが子供つれて帰ってくるよ」という投稿があれば、「見たよ」ボタンで応答することで、家族みんなが確認していることを伝えることが出来る。そんな、家族間の何気ないやりとりが気軽にできるアットホームな場にしていきたいと考えている。
さらに、緊急時の連絡手段としても活躍してくれる。緊急時にはメールや電話はつながりにくくなりがちだが、「楽家記」を利用することで、家族の状況を知ることができ、また、自分の状況を家族に知らせることもできる。このような連絡手段が家族間にあることで、緊急時の不安を抑えることができるのだ。
仕事や身の回りのことで忙しい毎日。家族とゆっくり話す時間がとれなかった
ビジネスアイデア発想のきっかけ
起業当初、エアーリンク社はWEBデザインを主な事業内容としていた。なぜ、このようなサービスができ上がったのだろうか?
鈴木氏は2010年頃、一ユーザーとして、SNSの操作に難しさを感じており、もっと簡単に使えるSNSができないかと考えていたという。それから構想を練り始め、たまに社内の打ち合わせの際に案出しをしていたそうだ。
鈴木氏は独り暮らしをしており、親とコミュニケーションをとる機会が少なかった。電話をすればいいものの、仕事や生活を優先してしまい、親との会話は後回しになりがちで、忘れてしまうことがよくあったという。そこで閃いた。「自分以外にも、親と連絡がとれない人が多いのではないか」と。
独立した子どもと親の間での連絡は通常、電話やメールで行われている。そのため、1対1でしか情報交換ができない。しかし、SNSであれば、二者以外の人も情報に触れられるため、直接話さなくてもみんなの状況を家族全員が把握することができる。
例えば、父親と連絡を取るのが照れくさいと感じる人でも、「楽家記」で母親とやりとりすれば、そのやりとりを父親も見る。自分の状況をそれとなく父親にも知らせることができ、父親はそれだけで安心する。また、連絡が疎かになりがちな祖父母も登録することで、彼らにも自分の近況を知ってもらうことも。鈴木氏は、「楽家記」が親子の絆が深まるきっかけになることを願っている。
また、新婚夫婦で、新朗が新婦の家族と、新婦が新朗の家族との絆を深めることにも可能性を感じている。直接的な会話ではなく、間接的な会話を拾うことが会話のきっかけになるからだ。
自分の思いを伝えるには、お互いの顔を見て何度も話すことが大事だということを学んだ
「楽家記」のアイデアを思いついた鈴木氏の職業はデザイナー。システムに関してはずぶの素人だった。そこでシステム開発を三重県の加藤氏と朝山氏に相談したところ、この企画に賛同し、共同開発してくれることとなった。
その際、開発側とのすり合わせに予想以上に苦労したという。鈴木氏にとって、システムは未知の世界。言葉や言い回しが独特で、まずはその理解から始めるしかなかった。打ち合わせの場では、共通認識が持てたと思っても、実際にシステムを見てみると、想像とは異なる仕上がりだったこともあったという。
そんなトラブルを経験して以降、両者間の認識をしっかりと一致させるため、メールや電話だけでは、なく、スカイプなども利用し、顔が見える状態での会話を心がけた。さらに、一度よりも二度、三度と、何度も回数を重ねて自分のイメージを伝えるよう心がけた。このやり取りは、一見非効率に見えるかもしれないが、結果的には「楽家記」のイメージどおりな開発につながった。
価値観やものの考え方が異なる者同士で上手くコミュニケーションを取ってつくり上げてきた「楽家記」は、異なる世代間をつなげるコミュニケーションプラットフォーム。異分野のタッグが、このサービスをつくるためには最適だったのだ。
新たな機能を付加しても、「シンプルさ」の追求は忘れない
将来への展望
「楽家記」はまだスタートしたばかりのサービスである。今後ユーザーの行動をウォッチし、要望を分析しながら、バージョンアップを進めていく予定だという。
ほとんどのSNSがスマートフォンに対応したアプリをつくっているが、「楽家記」はあえてアプリ制作を見送っている。ターゲットユーザーの一部である高齢者や地方の人たちは、まだまだフィーチャーフォンのユーザーが多いのだ。
もちろん、ユーザー数の増加を目指してはいるが、「家族」という限定されたコミュニティがメインターゲットであるため、他のSNSと同じような「増やせ、増やせ」のマーケティングはしない。
収益化は広告収入を考えているが、ここでも独自性を出していく。例えば広告を出すにしても、登録している家族の地域の生活に密接した店に絞るなどして、家族を起点としたものにする計画だ。例えば、新婦の居住地のスーパーの特売品を姑が教えてあげたりすることができたら面白い。そんなコミュニケーションがきっかけで、家族の会話が盛り上がり、絆が深まる。それが、「楽家記」の存在意義なのだ。
今後、家族の写真を保存できるアルバム機能や家族で共有できる機能を追加したいと考えているが、いずれにせよ「シンプルさ」を損なわないという軸はぶらさない。家族の絆を深めてくれる新サービス「楽家記」。今後の発展が楽しみだ。
株式会社エアーリンク | |
---|---|
代表者:木村 淳子 | スタッフ数:6名 |
設立:2000年5月(楽家記 開始:2012年7月27日) | URL:http://rakugaki-family.com/ |
事業内容: 広告代理業務、Webシステムの設計/開発/運用、SNSサービス「楽家記」の開発・運営 |
当記事の内容は 2012/8/29 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。