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「オフィスの空きスペース」と「安く借りたい」をマッチング。仕事で返せば賃料ゼロも? そんなサービスが登場!
展開している事業内容・特徴
最近、「シェアオフィス」という言葉をよく耳にする。これは、スタートアップしたての起業家や個人事業主など、独自のオフィスを持つ資金がない人たちのための、いわば共同オフィスである。
今回紹介する「シェアゼロ」は、2011年6月にスタート。オフィスの空きスペースを有効活用したいと望む企業と、安価にオフィススペースを確保したいと考えているスタートアップベンチャーや個人事業主を結び付けるサービスだ。
そのビジネスモデルはこうだ。まず、貸し手である企業は、オフィスの余分な空間を貸すことで、デッドスペースの収益化を図ることができる。それに対して、借り手は安価なスペースを確保することができる。これまでもベンチャーが知り合いの会社の一角を間借りして営業を開始するケースは多かったが、そういったやり取りを仕組み化したわけだ。
一番の特徴は、スペースを提供してもらう対価として、お金を支払うか、あるいは、開発・制作・営業・アドバイスなどの労務・スキルを提供することでもOKという点。金額は4人掛けテーブルを1カ月借りて5万円という設定だが、スキルを提供すればオフィスをタダで借りることもできるのだ。「シェアゼロ」のユーザーは、社員数5人以下、月商100万円程度のベンチャーが多いという。
ある企業にとって不要だった空きスペースが、優秀な人同士の出会いの場となり、双方にとって有益な新しい価値を生み出すことができる、斬新なビジネスモデルといえよう。
運営元であるシェアゼロ株式会社の収益は、提供企業と借り手双方からのマッチングフィーと、月額利用料からの手数料。「シェアゼロ」で空きスペースの借り手を探したい企業は、取材をした後にホームページに掲載されるが、その時点では費用は発生しない。オフィスと借り手がマッチングした時点で初めて費用が発生する、成功報酬型となっている。
現在、「シェアゼロ」の業務はフルサポート型で、借り手と貸し手の相性を加味したマッチング、面談同席、契約書の取り交わし、さらに、契約後の双方からの要望調整・クレーム処理、家賃回収までを行っている。このようなフルサポート型に切り替えてから、顧客満足度が高くなっている。
「シェアゼロ」ユーザーの貸し手については、オンラインで申し込んできた新規ユーザーが3割、知り合いなどを通じたものが7割。一方の借り手は、オンラインからの新規ユーザーと知り合いや紹介が半々だそうだ。
現在、「シェアゼロ」でオフィスを借りたいという問い合わせが月30件ほどある。しかし、シェアゼロ株式会社 代表の中川亮氏によれば、「これはまだまだ少ない。まずは月100件を目標にしている」と語る。
「そもそも自分たちだけのオフィスは必要か?」。厳しい状況のスタートアップ企業を見て感じたことがビジネスモデル発想のきっかけ
ビジネスアイデア発想のきっかけ
「シェアゼロ」を起業するきっかけとなったのは、中川氏が30歳で独立して、あるプロジェクトに参加した時の実体験にある。その時、中川氏たちのプロジェクトは、クライアントのオフィスを一部間借りして仕事をしていた。「こういうかたちでオフィスを確保したい人は意外と多いのでは?」と直感したことが、このビジネスモデルにつながっていく。
その後、スタートアップ企業を支援する会社に一旦再就職し、インキュベーションオフィス事業を全国で展開する仕事に携わっていた。インキュベーションオフィスとは、レンタルオフィスに対して起業に必要なノウハウやサポートがついてくるレンタルオフィスサービスである。
この事業は比較的順調に成長したが、利用者であるスタートアップ企業は、事業が厳しくなったり、他の企業に間借りをして出て行くケースも少なくなかった。そのような中で、「そもそも、自分たちだけのオフィスは必要なのか?」という考えに至り、「シェアゼロ」のビジネスモデルの骨格ができ上がった。
「シェアゼロ」が成功した理由を中川氏に伺ったところ、「重要なポイントは、人と人の相性を見てマッチングすることだ」という。日本では、貸し手と借り手のビジネスや事業の相性はもちろんよりも、互いのユーザーの相性を重視する傾向にある。そして「シェアゼロ」で実際にオフィスの貸し手となる企業側(主に社長)も、セキュリティなどの課題より、入居者との相性や「出会い」を優先するタイプが多いという。
中川氏は、「オフィスやスペースといったもの自体に大きな価値はなく、そこで生まれる人と人との出会い連携にこそ価値がある。特に日本はその傾向が強い。なので、シェアゼロのビジネスは、スペース・シェアだけでなく、スキルやネットワーク・シェアの意味合いがある。オフィスをそのようにリプレイスしている出会いを生み出している点にこそ、シェアゼロの価値があると思っている」と語ってくれた。
「シェア」という概念に追い風が吹いている。今後はアジアへの進出も
将来への展望
2011年の震災の影響もあり、「分かち合い」に価値を見いだす風潮が強くなってきた。それが追い風となって、日本でも「シェア」という概念が急速に広まりつつある。中川氏はこの傾向が今後も続くとみており、シェアサービスのマーケットはさらに拡大していくと予想している。
この流れに乗って、2011年11月には、起業家やフリーランス、ノマドワーカーといった、「シェアゼロ」ではサポートしきれない人のためのワーキングスペースLightingSpot Shibuya」をIT企業と立ち上げた。渋谷駅徒歩30秒(新南口)という好立地で、プロフィールカードなどを用いることで、利用ユーザー同士がつながりやすいさまざまな工夫も凝らしている。
また、今後はアジアへの進出を目標としている。アジアに新しく進出する企業は、オフィススペースだけでなけでなく、現地でのマーケティングやネットワークが必要となる。もし、オフィスシェアを通じてでうまくマッチングができれば、借り手はこの両方を安価に手に入れることが可能となるわけだ。これは、借り手である本格進出前の実験段階にある企業にとって、かなり魅力的なサービスだろう。
さらに、貸し手にとっても、借り手との協働による新たなビジネスチャンスの創出や、賃料収入の獲得といったメリットもある。日本国内だけでなく、海外でも定着しそうな「シェアゼロ」のビジネスモデル。まさに、これからが楽しみである。
シェアゼロ株式会社 | |
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代表者:中川 亮 | スタッフ数:1名 |
設立:2011年3月 | URL:http://www.share0.net/ |
事業内容: オフィススペースのシェアマッチング事業「シェアゼロ」の運営・開発。 ワーキングスペース「LightningSpot」の運営 |
当記事の内容は 2012/7/19 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。