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懸賞サイトで大儲け! 生き残り戦略で超高収益体制へ
展開している事業内容・特徴
お得な情報に目がない消費者と、自分たちのサービスを広めたいと願う企業との間をつなぐサイトの一つに懸賞サイトがある。利用したことがある方も多いだろうが、そんな懸賞サイトの草分けである「懸賞のつぼ★」を運営している株式会社ツボックスを紹介しよう。
株式会社ツボックスの創業は2000年に遡る。プレゼントやショッピングなど、お得な情報に敏感なユーザーを数多く保有する日本最大級(メールマガジン会員約30万人、月間約300万ページビュー)の懸賞情報サイト「懸賞のつぼ★」や、ネットで申し込みや購入ができる無料サンプル・トライアルセット・モニター情報の総合ポータルサイト「サンプルボックス」など、12の自社オリジナルサイトを運営。そのほか、本店所在地である東京・高円寺発の超地域密着型フリークーポンマガジン『HAPPY! 高円寺』の発行も手がけている。
また、こうしたメディア運営事業に付随して、「自社サイトの会員を集めたい」「サンプルを配りたい」といったクライアントから依頼される、プロモーション戦略のコンサルティング、メディア企画も同社の提供するサービスだ。
かつては乱立気味であった懸賞系サイトだが、ポイントサービスなどに業態を変えたり、苛烈な競争に耐え切れず撤退する会社も多く、大手として生き残っているのは「懸賞のつぼ★」ともう一社だけだという。
他社が撤退するなか、地道に懸賞サイトを運営し続けていた同社は、結果として残存者利益というかたちで、懸賞系のプロモーションを行いたい企業から常に指名される状態に。ほとんど営業活動を行わずに広告やプロモーション企画が持ち込まれるため、営業コストがかからず、同社の経営はどんどん高収益化。その収益力を生かして、地元のフリーペーパー事業を買収するなど、経営の多角化も図ってきた。
変化の激しいインターネット業界で12年、同社のこれまでの歩みには、実にユニークなエピソードが満載なのだ。
趣味で始めた懸賞サイトをサイバーエージェントへ売却。
後日、サイバー社から買い戻し、さらに強力なサイトへと発展!
ビジネスアイデア発想のきっかけ
株式会社ツボックス代表の大坪秀行氏が起業への第一歩を踏み出したのは34歳。起業前はシステム開発会社でSEとして働いていたが、1996年頃からインターネットの魅力にはまり、趣味としてウェブサイトをつくりはじめた。
最初につくったのが、懸賞情報を集めたサイトだ。同時期にインターネットのバナー広告が出現し、試しに自分のサイトに張ると、クリックされるごとにお金が入ってくるようになった。何もしなくてもサイトがお金を稼いでくれる! その魅力にはまった。会社員としてのSEの仕事も忙しいため、当然ながら夜遅く帰宅してからやっと自分のサイトの作業ができる、という生活が続いた。
そして2000年になると、「懸賞のつぼ★」の広告収入は急増。1カ月間で200万円以上を稼ぐサイトになってた。ここまでくると二束のわらじ生活は厳しい。中途半端なままではダメだという思いがふくらみ、会社を退職。インターネットの世界一本で勝負することを決意した。2000年4月、自己資金の300万円を資本金として、有限会社ツボックスを設立。起業家として、スピードとダイナミックな進化が求められる苛烈な世界に身を投じた。
スタートは、妻と2人、オフィスは自宅。開業にかかった経費は会社設立費用以外では印鑑や名刺など、3万円程度だったという。そして本格的にメディア運営ビジネスに乗り出した大坪氏だったが、当時はネットバブルの最後。もうすぐ弾けるタイミングだったが、この先まだまだ伸びると信じて疑わず、先の見とおしなど考えず走り出した。また、事業計画を立てないままのスタートだった。
買収額は5000万円! プラス月200万円の報酬!?
ここで一つの転機が訪れる。2000年の秋頃、サイバーエージェント社から“懸賞のつぼ★”を買収したいというオファーが届いたのだ。一方、当時、懸賞サイトでは「チャンスイット」というサイトがトップに君臨しており、「懸賞のつぼ★」はなかなか追いつけずにいた。大坪氏は、この事業は勢いのあるサイバーエージェント社に任せたほうがいいと考えて、売却を決断。「買収額は5000万円。その後も引き続き月間200万円で大坪氏に運営委託したい」という好条件だった。以降、大坪氏と妻の2人で、サイバーエージェント社のオフィス内にある「懸賞のつぼ★」チームに常駐することになった。
37歳の大坪氏は、当時のサイバーエージェント社の中では最年長。周りは20代前半の若いメンバーばかり。若さと勢いに任せて超ハイスピードで事業展開しながら、新しいルールやビジネスモデルが生まれる様をつぶさに見ることができた。そんななか大坪氏は、さまざまなノウハウを吸収していった。結果、サイバーエージェント社には4年間常駐していたそうだが、経営者としての知識や体力は、この時に身にけたと大坪氏は語ってくれた。
サイバーエージェント社は、常に“アメーバ”のように変化し続けることがポリシー。そのポリシーに従って次々と事業が変わり、「懸賞のつぼ★」も2004年になって手放されることが決定。そして、「懸賞のつぼ★」事業は、株式会社ツボックスに再譲渡されることになる。ほぼ無償に近い条件だったそうだが、今度は収益の一部を、ツボックス社からサイバーエージェント社に支払うという条件での譲渡だった。その関係は現在まで続いている。そして、サイバーエージェント社との二人三脚を続けていくなか、「懸賞のつぼ★」は、日本最大級の懸賞サイトになっていた。
インターネットビジネスのよいところは、最初に開発費をほとんどかけず、すぐにサービスを立ち上げられるところ。新しいサイトをつくったら、「懸賞のつぼ★」のユーザーを誘導することができるため、集客コストもかからない。そのため、先行投資という概念がなく、撤退もすぐにできる。そんな低リスクな事業展戦略が、ツボックス社の強みともいえる
“先にやった者勝ち”はもう通用しない。これからのネットの世界で生き残るために必要なこととは?
将来への展望
大平氏は最近、某金融機関から、1000万円の新規融資を受けることにした。手元には数千万の資金があるので借りる必然性はまったくないのだが、「銀行取引の実績づくりをしておくと、いざという時に金融機関との関係が有利になる」という話しを聞いたからだそう。今後の事業展開を見込んでの判断なのだろう。
ここまで取材していて感じたことは、実に巧みにリスクを回避して、超がつく堅実経営を実現してきた大坪氏の経営に対する慎重さ。一見すると、華やかで派手なことばかりが注目されがちなインターネット業界にあって、実はこうした堅実さが起業家として生き残っていく一つの秘訣なのだと思う。
取材の最後に、これから起業を目指す方々へのメッセージをいただいた。
「革新的なビジネスを目指すのではなく、それを利用せよ」
大坪氏が創業した頃のインターネットの世界は、“先にやった者勝ち”。確かに「懸賞のつぼ★」をいち早く確立できたおかげで、今日のツボックスがある。しかし、今では星の数ほどのサイトが誕生し、リアルな世界も巻き込みながら、しのぎを削っている。
「インターネットの世界で起業・独立を目指す場合、自分の創業期に比べてはるかに大変だと思う。最初からFacebookやGoogleのような革新的なビジネスを目指すのではなく、まずはFacebookやGoogleを有効利用することを考えましょう。そのビジネスを活用して実績を上げるビジネスを立ち上げてから、独自のサービスを築くというプロセスを踏んだ方がスムーズにいくはずです」と、大坪氏は言う。
最近、注目されているキーワードに、「リーン・スタートアップ」というものがある。起業にまつわるコストが劇的に下がった今、とにかくスタート時はリーン(細身)であれ、という教えだ。
インターネットビジネスは、アイデアが秀逸であれば、ある意味それだけでスタートすることができる。だからこそ、スタートアップ時はできる限りリスクを減らしておくこと。それが継続の重要なポイントであることを、大坪氏は12年かけて実証してくれたのだから。
株式会社ツボックス | |
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代表者:大坪 秀行 | 社員:8名 |
設立:2000年5月30日 | URL:http://www.tubox.com/ |
事業内容: メディア事業、プロモーション支援授業、ウェブシステム開発事業、フリーペーパー事業 |
当記事の内容は 2012/6/5 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。