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自分の時間をお金の代わりに寄付する?SNS型ボランティア人材マッチングサイト
展開している事業内容・特徴
今、我々、日本人のボランティア活動への関心が高まっている。確かに、昨年の東日本大震災発生後、全国各地から多くの人々が被災地へ駆けつけ、ボランティア活動を行った。しかし一方で、「情報がない」「参加方法がわからない」「負担に感じる」「続けて活動するモチベーションが持てない」などの理由から、実際にボランティア活動に参加した経験のある人は多くないという側面もあるようだ。
そんな人たちでも、気軽に参加できるボランティアのプラットフォームサイトが「CollaVol(コラボル)」だ。同サイトでは、「お金の代わりに、あなたの“時間”を寄付しませんか?」。そんなメッセージを掲げている。
「CollaVol」では、ボランティア活動をマイクロタスク(細切れ)に分解し、「オンラインボランティア」と「現地ボランティア」の2つの形態で、参加するボランティア活動を選択することができる。
従来のボランティア活動は、決まった日時に現地に赴いて活動するのが一般的だった。しかし、「オンラインボランティア」 であれば、パソコン、携帯などがあればオンラインでいつでも参加できるというわけだ。
たとえば、翻訳スキルを持っている人であれば、ニュースレター翻訳で3時間協力することで5000円相当の寄付をしたことになる。このように、自分のスキルを生かして、自分のペースで、気軽に参加できるオンラインボランティア=“時間の寄付”という概念を考案、実施したことが「CollaVol」の最大の特徴といえる。
また、ユーザーの活動履歴を定量化してトラッキングする機能があり、各ユーザーがボランティア活動に費やした時間を、ボランティア依頼者が節約できた人件費に換算し、その貢献度を可視化している。
サイト内の各ユーザープロフィール画面は、「ボランティア履歴書」という履歴書風のデザインになっており、履歴書に活動履歴が自動的に反映されていくという仕組み。
さらに、ユーザーは活動に応じて、サイト上での「資格」や、提携企業の特典などを獲得できる機能を追加する予定だ。ボランティア参加を単発で終わらせず、継続的に参加するためのモチベーション向上につなげるなど、昨今注目されているゲーミフィケーションを取り入れる工夫もされている。
「CollaVol」では質の高い情報を提供するため、ボランティア依頼者の募集内容を事務局側が精査し、文章の校正なども手伝っている。正確性を期すため、作業負担が多く、届けられるすべてのボランティア情報を掲載できない点がまだ未解決だが、現状まで成約率90%以上という驚異的なボランティア・マッチング率を記録している。
近日中には、マイクロボランティアに分解しやすい機能と全項目にテンプレートがついた、高機能な募集投稿フォームをリリース予定で、より簡単に質の高い情報を掲載できるわうになるという。
「エンジニア・スタートアップ・ミーティング」への参加で生まれたコラボ
ビジネスアイデア発想のきっかけ
「CollaVolを立ち上げた渡邉亜紀氏は、以前、NPO法人を運営していた時に、さまざまな方法でボランティアを募集したが、ほとんど効果がなかったという。そして、「どうしたらボランティアに関心をもち、参加してもらえるか」真剣に考えるようになったそうだ。
全国に居住する18歳以上70歳未満の男女2,000人を対象に、文部科学省が行った「国民のボランティアに対する意識調査」からボランティア参加率の現状を調べると、継続的に参加している人たちは約1割未満、興味や関心はありつつも実行できないでいる人々が約7割いるということがわかった。そして、なぜ、興味や関心があっても実行できない人が多いのか、その原因を徹底的に調べたという。そこで得た、“実行できない原因”を取り除けばいい。そして、そのためのアプローチを反映させたサービス、「CollaVol」が誕生するのである。
実は、渡邉氏自身、それまでWebサービスやプログラムをつくった経験がなかった。しかし、当初は自分でサイトを制作するつもりで、技術系のサイトチェクやRSSの購読、技術者系のTwitterをフォローして情報収集をしていた。
するとある日、ふと目にとまったTwitterのつぶやきで、「エンジニア・スタートアップ・ミーティング」というイベントを知る。このイベントは、起業を考えているエンジニアとビジネスプラン保有者の出会いの場。プランを発表して、エンジニアが協力するきっかけを提供するイベントというわけだ。
そして、すぐに渡邉氏は、このイベントでプランを発表する。すると、その場で「CollaVol」のビジネスプランに共感した、現CTOを務める吉田卓郎氏が協力を申し出た。その2カ月半後の2012年3月3日、「CollaVol」はベータ版公開にこぎつけ、公開後もユーザーが自分のスキルを明示することで、ボランティア活動の逆オファーを受ける付ける機能を追加。今後もバージョンアップを繰り返す予定だという。
日本人のボランティア参加率を、現状の21%から50%まで高めたい
将来への展望
「CollaVol」によって、多くの人々にボランティア活動を始めるきっかけをつくり、日本にボランティアを広め、日本人のボランティア参加率を現状の21%から50%まで高めることを目指している。
さらに、社会にとって「よい」活動に共感する人を増やすことで、活動の質を高めるという好循環を生み出し(助け合い社会の創造)、その結果、被災地復興をはじめ、あらゆる社会問題を民間の力で解決できる世の中づくりに貢献したい、とも。
確かに、民間の力で多くの社会問題が解決できれば、結果として行政の負担が減り、後世に負担の少ない持続可能な社会が構築できる。「女性の社会進出や子育て支援、メンタルヘルス、まちづくり・地域活性化、環境活動などさまざまな社会問題に取り組んでいる人たちがいる。これらの活動がよい方向に推進されることで、グローバル競争に勝ち抜ける高付加価値労働力の確保、地域への人材の流入、行政負担を下げる“官から民へ”への加速が可能になる。そして、最終的には、経済活性化につなげたい」と、渡邉氏は語る。
素晴らしいビジネスプランを思いついにもかかわらず、インターネットに不得手だったため、実現まで辿り着けなかった人も多いだろう。しかし、今、渡邉氏のような高い志と行動力さえあれば、自分の不得手を補ってくれるパートナーと出会うことができるのだ。そして、「CollaVol」も、ボランティアが“できなかった人を”、“できる人”に変えるための、新しいかたちのコラボーレーションを生み出している。
この記事を読んだ読者の中から、「CollaVol」のような素晴らしいサービスを誕生させる起業家が、一人でも多く生まれることを期待したい。
CollaVol(コラボル) | |
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代表者:渡邉 亜紀 | スタッフ数:2名 |
設立:2012年3月 | URL:http://collavol.com/ |
事業内容: ボランティアのマッチングサイトの運営 |
当記事の内容は 2012/5/22 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。