1年間で600万件投稿。出会わない人同士をつなぐ新型ミニブログ「Arrow(アロー)」

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執筆者: 谷垣 俊介

必ず返事が返ってくる!? 他人とつながるミニブログが大人気
展開している事業内容・特徴

arrow1夜中にお酒を飲みながらリラックス――。わざわざ誰かを呼ぶほどさみしいわけではないが、ちょっとだけ誰かと話をしたい。こんな気持ちになったことがないだろうか。

そんな時、気軽に自分の気持ちを発信できるのが、ミニブログ「Arrow(アロー)」だ。“Arrow”は日本語で“矢”。あなたがArrowを放つと、知らない誰かから、短時間で必ずメッセージが戻ってくる。

そのため、「Arrow」では呟きのことを「アロー」と呼ぶ。Twitterやfacebookと違い、誰がアローしたかわからない仕組みとなっているので、「こんな気持ちをアローしたらどう思われるだろう?」と心配する必要もない。

「Arrow」の仕組みは、まず、個人のアローがランダムでほかのユーザーのもとに届く。そして、そのアローを受け取ったユーザーは、それに返事をすることで完結。仮に、答えにくいアローが届いた時は「TM(TaraiMawashi=たらいまわし)」ボタンを押すことで、別のユーザーに回答権が移る。また、自分のところに刺さったアローを一定時間放置すると、自然と「TM」されるようになっている。

スタート当初に狙っていたターゲットは20代だったが、意外にも熱心に使っているユーザー層の多くは30代~40代なのだという。現在、「Arrow」のユニークユーザー数は40万人、登録者数は5万人。ローンチから4月末までの投稿数が累計600万件という巨大ミニブログに育ちつつあるのだ。

「Arrow」では、本来出会わないだろう人同士の交流が生まれている。例えば、学生の「授業つまらない」というアローに対して、40代の会社員が「勉強は今しかできないんだから、その時間を大切にしなさい」という回答があった。まるで近所の学生とおじさんが触れ合っているようなコミュニケーションが、ネット上で形成されている。

「Arrow」をつくった野田貴大氏によると、「これが本来目指していたかたち」だと言う。サービスの理念として、あくまで「健全な他人との関係」というところに細心の注意を払っている。そのため、サイトの品格にかなりこだわっており、デザインでピンク色は使わない。また、男女をわからないようにする、出会い目的で使っているユーザーのアローはすぐに削除するなど、サービス品質を維持するための配慮を徹底している。

このような努力の成果か、他人間でつながるサイトのなかでは珍しく、女性のユーザーが約50%という高い数値を誇っている。現在の収益源は広告のみ。しかし、将来的には、返事を返してくれた人やアローを飛ばした人に直接アローを送ることができる「ダイレクトアロー」を、課金方式にすることを検討しているそうだ。

ふと、一人でたそがれる時、自分の声に返事がくれば嬉しいと思った
ビジネスアイデア発想のきっかけ

arrow2野田氏は、もともと起業家になりたいと思っていたわけではなく、どちらかというと一生同じ会社で働きたい――と考えていたという。というわけで、起業前は、いわゆる普通のサラリーマン。しかし、勤務していた広告代理店では企画を担当しており、新しいビジネスを考えることは好きだった。

サラリーマン生活を送るなか、夜中に自宅でタバコを吸いながらたそがれている時のこと、「疲れたー」という自分の独り言に、返事をくれる存在がほしいと感じたそうだ。そんな小さな思いが、「Arrow」誕生のきっかけ。当時2010年末は、ツイッターやFacebookが爆発的に流行り始めた頃。しかし、ネット上とはいえ、個人が特定される場所で「本音」は呟きにくい。

個人が特定されない場所で、思う存分、本音を呟きたい――。人間は誰しも、誰かがちょっとした言葉を返してくれるだけでも嬉しくなるもの。例えば、Facebookの左上が赤くなっていたら嬉しいと感じるように。だから、毎回のように必ず返事が来たら、気持ちいいはず。そして、それが憩いの場になればいい。

これは新しいビジネスになるのではないか? そう直感した野田氏は、大学の後輩や友人に計画を打ち明けた。そうしたところ思いのほか多くの知人が共感してくれ、そんなサービスをみんなで一緒につくることができたら楽しいのではと、すぐに盛り上がったという。

そして当時、参加メンバーは皆別の仕事をしていたが、震災直後だったこともあり、「思いきって好きなことをやろう!」と本格的に行動を開始することに。2011年4月にはファーストバージョンをローンチした。

最初にローンチしたサービスでは、単純に「逆輸入のサービスに見えるとかっこいい」との考えで、海外版(英語)のみで「外国人向け」のサービスとしてスタート。しかし、「自分たちが使いたくてつくったサービスにもかかわらず、自分たちがつぶやけないという矛盾にすぐに陥った」と、野田氏は笑う。

そして、ローンチしてしばらくしたタイミングでサーバがおかしくなり、システムの調子が悪くなったため、サービスを維持するためには英語版か日本語版かのどちらかを選択しなければならなくなった。

当然だが、自分たちが使ってみたいサービスなのに使えないことに大きなジレンマを感じていたため、日本語版のサービスを選択。逆輸入サービスという演出は失敗に終わったが、逆に「Arrow」は、サーバがパンクするほど大人気のサービスへと急成長していくことになる。瓢箪から駒とはこのことだ。

また、あのプレスリリースをご覧になった方も多いだろう。(まだ見たことのない人はこらちから) http://prnews.jp/view/1838/

まだ起業一年目のベンチャーなので赤字だったそうだが、その敗戦の弁がプレスリリースとしてはあり得ないような「本音の内容」が、ネットの世界で一時大きな話題となった。Yahooニュースなどにも取り上げられた本音プレスリリースは、相当なプロモシーョン効果があったと思われる。アイデアマン野田氏の狙いとおりといったところだろう。

狙うは「他人」マーケット。将来は1億人を癒せるサービスを構築したい!
将来への展望

野田氏に今後の展望を聞いたところ、「私たちにとって“Arrow”はわが子のようにかわいいサービス。まずは収益的に自立できるサイトに育てることが一番の目標」と答えてくれた。

数値的には、まずは今年度中に国内で100万人の会員を目指す。さらに、海外も視野に入れながら、月間アクティブユーザー1億人超えも。そのため、次のステップとして、翻訳機能を充実させる計画だ。

オンライン上で身近な人といつでもつながることができるようになった現在、これからは「他人」というマーケットが大きくなると野田氏は予想している。ただし、出会い系サイトのようなつながりではなく、健全な他人とのつながりを求める人が増えるのではないか、と。

「月に一度、ふとした瞬間に使ってもらえる程度でいい。ただ、自分が必要とするタイミングで使ってもらいたい。そして、世界中に非日常の癒しを提供したい」と、取材の最後に野田氏は語ってくれた。

株式会社Green romp
代表者:野田 貴大 スタッフ数:社員4名、インターン2名
設立:2011年5月 URL:http://www.arrow-arrow.com/
事業内容:
ミニブログ「Arrow」の運営

当記事の内容は 2012/5/17 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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