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魅力的なスタッフがいる飲食店を探せる新サービス「カンバン娘」展開している事業内容・特徴
「カンバン娘」は、魅力的なスタッフという切り口から飲食店を探せる、新しいWebサービスである。飲食店検索サイトとしては、ぐるなびや食べログが有名だが、従来のメニュー、エリア、料金、口コミ評価といった検索軸に加えて、「人」にスポットを当てて飲食店を探せるという、これまでとはまったく違ったアプローチがウケている。
同サービスは、株式会社オンライフというモバイル広告を扱うベンチャー企業の新規事業として始まった。2010年3月にベータ版、5月にサービスをローンチ、10月に正式版として本格的にカットオーバー。そして2011年2月に、オンライフから分社化するかたちで、株式会社カンバン娘が設立された。現在16名いる社員は、すべてオンライフからの転籍組だ。
スタート時から、実際に使えるサービスとして、事前に営業・取材活動を行い、約100店舗を掲載。2011年9月時点で、カンバン娘、カンバン男子約360人を紹介済みで、その後も1月30~40店のペースで掲載件数が増え続けている。業績も好調で、2012年3月までには単月黒字化する見通しだという。
同社のビジネスモデルを紹介しよう。まず、ユーザーからカンバン娘、カンバン男子の推薦を受ける。その情報ををもとに同社の店舗担当者が当該飲食店に問い合わせをする。その後、インタビュー取材を行い、カンバン娘のサイトに掲載。その飲食店は、ほぼ確実にこれまで以上の集客・リピート客の増加を実現するのだという。
飲食店で働くスタッフの本当の価値とは?
ビジネスアイデア発想のきっかけ
株式会社カンバン娘の創業者である高崎航氏は、オンライフの創業者でもある。高崎氏が立ち上げたオンライフは、ほかに数社からなるグループを形成しているが、その中の一つがカンバン娘というわけだ。
高崎氏は、学生時代から独立した個人事業として、web制作、webマーケティングの仕事をしつつ、グローバルダイニングという飲食店チェーンでも働いていた。その理由は、「対面営業、接客が好きだったから」だという。
当時、高崎氏が働いていたグローバルダイニングでは、店長が異動になると、スタッフも自主的に異動願を出すということが常識のようになっていた。それがアルバイトスタッフであっても、だ。チームワークを重視することから、このような文化が生まれたらしい。つまり、店長が変わるとスタッフも変わるので、同じ店舗であっても、まったく雰囲気の異なる店舗になる。そして、店長やスタッフたちを気に入ってくれていた常連客も、異動した先の店舗を利用し始めるという現象が起きていた。
「飲食店の顧客は、店舗ではなく、そこで働く人に対して常連化する」ことに気づいた高崎氏は、飲食店の最大の差別化要因は「人」であると確信した。
しかし、飲食店のアルバイトスタッフは、一般的に時給いくらの世界。店側は、そのスタッフにどのくらいの常連客がついているかを把握しておらず、また、本人たちもそういった意識が薄い。そこで、飲食店スタッフの価値を可視化することができれば、スタッフの給与は「時給×労働時間」という単純なものではなく、スタッフについている常連客の数によって明確な成果報酬体系にできるのではないか。あるいは、その店にいるスタッフの価値を合算すれば、日々の売り上げも高い精度で予測できるのでは、と考えた。
そのアイデアを突き詰めていった高崎氏は、「カンバン娘」のビジネスにたどり着く。そして、カンバン娘のビジネスをスタートさせた高崎氏は、オンライフの副代表であった持丸氏に代表を譲り、自身はカンバン娘のスタートアップに集中。オンライフから新規事業を分社化するかたちで、株式会社カンバン娘の代表に就任した。2011年7月にはNTTインベストメント・パートナーズと三菱UFJキャピタルからの資金調達を獲得。6月にはグリコとのコラボレーション企画をスタートさせるなど、事業を急拡大させている。
人の価値を可視化するビジネスを突き詰めていきたい
将来への展望
高崎氏によれば、インターネットの世界はWeb1.0から2.0で量を追求してきたが、爆発的な成長を続けているソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が台頭した今、さらなる大きな変革期を迎えているという。
SNSの上では、従来のようなWebページ主体のモデルは通用しない。また、SNSの力で個人の影響力がより顕在化し、キュレーターが生まれることで、ソーシャルス・ストリームをアクセスへ転化させることが新しいWebサービスのあり方になってきている。それによりユーザー獲得コストが極端に下がりつつあり、そこにこれまでとはまったく違った可能性が秘められているのだ。
また、匿名で大量に流通している情報よりも、SNS内で自分が知っている人間からの情報や評価が重要視されるようになってきており、これもまた個人の価値が可視化されつつある現象、というのが高崎氏の持論だ。
カンバン娘の狙う市場は、国内に60~70万店舗ある飲食店マーケットだが、その中でも積極的に宣伝やシステム投資をしている5万店ほどが、優良顧客になると予測している。また、大手ハンバーガーチェーン店のスタッフから、移動販売のたこ焼き屋のスタッフまで紹介することができ、従来の飲食店支援ビジネスの枠外にあった領域も自社のマーケットとして見込めるのだという。海外展開も検討しており、まずは来年、韓国へ進出する計画だ。
「ベンチャーキャピタルからの投資を受けた以上、投資家の期待に応えるのが当面の自分の責務」と高崎氏は語る。中期的な目標は、4年後にIPOもしくはM&Aなどのエグジットまでもっていくこと。ただ、現在はとにかく変化の激しい時代で、あてになるのはせいぜい半年先までの数字。「半年毎に計画を練り直し、臨機応変な体制で、カンバン娘を成功に導いていく」。そんな高崎氏とカンバン娘の今後に注目していきたい。
『カンバン娘』がリニューアルOPEN (編集部 追記)
先日紹介した「カンバン娘」が、カンバン娘・カンバン男子とコミュニケーションが取れるソーシャルプラットフォームとして、2011年11月1日にリニューアルOPENした。
新しいカンバン娘では、今日のまかないやお店での様子など、カンバンスタッフが近況をシェアできる機能が追加されている。ユーザーはスタッフの近況にコメントしたり、メッセージを送ったり、応援コメントを残したりできるため、インタラクティブなコミュニケーションによってカンバンスタッフとの関係をより深くすることができるという。
新たに追加された主な機能は以下のとおりだ。
・発掘投稿
これまでは、ユーザーから推薦のあったカンバンスタッフを運営事務局が取材して掲載していたが、今後はユーザーにより投稿されたカンバンスタッフの情報がダイレクトにサイトに反映されるという。
・“おひねり”
“おひねり”と呼ばれるネットチップをスタッフにプレゼントすることができるようになった。ユーザーは登録時に100ポイントを付与され、1回10ポイントずつスタッフにプレゼントできるという。ポイントは発掘投稿することによっても取得可能。カンバンスタッフは、受け取ったポイントをQUOカードやアマゾンポイントに替えることができるため、いつも楽しませてくれるスタッフに、ちょっとした感謝の気持ちとして、“おひねり”で応援が出来るのは楽しそうだ。
・ごひいき
「このお店やスタッフを応援したい」というユーザーは、“ごひいき”という機能が使えるようになった。“ごひいき”になることで初めて、店舗やスタッフはユーザーとダイレクトにコミュニケーションを取ることが可能となり、また店舗やスタッフ側からはユーザーの食事の好みやステータスを閲覧することも可能となるため、より深いサービスを受けることができるようになるという。
株式会社カンバン娘 | |
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代表者:高崎 航 | 設立:2011年3月 |
社員:16名 | URL:http://k-musume.jp/ |
事業内容 スタッフにスポットをあてた新しいタイプの飲食店情報サイト「カンバン娘」の運営。 |
当記事の内容は 2011/10/13 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。