PeaTiX(ピーティックス)  チケット販売の常識が変わる!? 元Amazonのメンバーが手がけた、業界を革新する新サービス

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執筆者: 清水 智

大イベントから結婚式の二次会まで。新たな巨大市場を創出するネットベンチャー
ビジネスアイデア発想のきっかけ

peatix01Orinoco株式会社が運営している「PeaTiX(ピーティックス)」は、誰でも手軽にチケットが発行できるインターネットを活用したサービスである。2011年5月のスタートからまだ半年にも満たないが、1カ月間(8/6~9/5の30日間)で300イベント(内、60%が有料イベント)、1200 チケットの販売実績を誇る。さらに、Jリーグ「横浜FC」の観戦チケット販売に採用されるなど、急成長を続けるネットサービスだ。

PeaTiXは、無料のイベントなら費用ゼロ、有料イベントでもチケット代金の6%+チケットオーダー毎に70円という低価格で利用できる。そして、クレジット決済からコンビニ決済が使え、デジタルQRコードチケットとiPhoneアプリでペーパーレスの受付まで可能という高いユーザビリティが売りだ。

利用方法もシンプルで、Twitter、Facebook または PeaTiX アカウントを持っていれば誰にでもすぐに使え、3分でイベントチケットの発行が可能だという。有料イベントの場合は、銀行または、ゆうちょ銀行の口座が必要だが、Webサイトからの申し込みだけで面倒な手続きは不要。そして、イベント終了後 5 営業日以内に、販売手数料と銀行振込手数料を差し引いた金額がユーザーの指定口座に振り込まれる。

プレミアムサービスとして 、好きな背景色・背景画像・ロゴ画像のイベントページが作成できる「カスタムデザイン機能」やイベントページを独自のURL(例:yourevent.peatix.com)で公開できる「カスタムURL機能」も。また、チケット毎に購入先着順の通し番号が自動的に付与される「整理券番号機能」といった便利なオプションも用意されており、すべて2011年内は無料で使えるとのこと。

そんな、わかりやすいインターフェースと使い勝手のよさが、スタート直後からネット上での口コミで広がり、ITエンジニアの間で評判となった。そして、エンジニア同士の勉強会やIT系イベントの集客などでの利用が始まり、さらに、そのユーザビリティの高さが個々のブログ上でどんどん取りざたされるように。そんなプロセスを経て、IT系以外のユーザーへの認知が広がり、先述した「横浜FC」の観戦チケット販売、タレントのダニエル・カール氏のイベント、さまざまな小劇団の観戦チケット販売に採用されるなど、利用者のすそ野は現在も急拡大している。

また、PeaTiXの利用が増える仕掛けとして、ソーシャルネットワークサービスとの親和性の高さがある。設計時からTwitterやFacebook、ブログでイベント情報を告知してもらうことを前提に設計されたため、「SNSで告知するにはPeaTiXが良い」という評判が立ち、次々とイベント情報が登録されるようになっているのである。

米国先行のサービスを日本向けに開発。巨大な潜在マーケットが動き出す!
ビジネスアイデア発想のきっかけ

日本ではまだ始まったばかりのサービスだが、米国や欧州ではオンライン上でのチケット販売のマーケットはすでに確立されつつある。2008年に創業した米国のイベントブラント社は、昨年度160億円のチケット販売実績があり、今年はさらに倍増する勢いだという。

一般的に、コンサートや演劇などのチケットの国内市場規模は約数千億円といわれており、その中でも最大手の「ぴあ」のシェアが約50%、続く「ローソンチケット」が約30%と、大手2社だけで市場の約80%を占める寡占状態。しかし、PeaTiXの登場によって、その牙城が崩れる可能性が出てきた。

個人や小さな団体のイベントオーガナイザーにとって、大手チケット販売会社が提供している従来のチケット発行の仕組みを活用することは、採算的に不可能に近かった。しかし、PeaTiXの誕生によって、これまでチケットビジネスのマーケットとして未開拓だった、インディーズバンドのコンサートや小劇団の公演、ビジネスセミナーや勉強会、人数の多い「飲み会」などでの、新たなチケット販売ニーズが見えてくる。それらすべてを勘案すると、数兆円規模の市場に拡大していきそうだ。

PeaTiXを運営しているOrinoco社は、米国のネットサービスを日本に輸入し、その代理店業務や日本市場でのマーケティングを行うビジネスを展開している。同社の取り扱うサービスには、Twitter や Facebookでよく利用される短縮URLサービスの bit.lyの企業向けサービス 「bit.ly Enterprise」や、オンラインアンケートシステムの「SurveyMonkey」などがある。PeaTiXのアイデアが生まれたきっかけは、同社代表である原田氏が昨年にサンフランシスコでの展示会に視察に行った際、インターネットでチケット発行サービスを行っているベンチャー起業家と出会い、「これは日本でもいける!」と直感したという。

そして、米国と日本での決済システムや商習慣の違いから、米国で先行していたサービスをそのまま日本で導入するのは困難であると判断した原田氏は、日本向けのオリジナル・サービスの開発に向けて奔走することになる。特にアジア圏は日本と似ているため、日本でオリジナルサービスを開発すれば、そのままアジアにも進出できるでは、という起業家魂もくすぐられ、独自開発を決断したという。

スピードよりも品質重視! とことんこだわりぬいた、ていねいな仕事
成功のポイント

peatix02日本に戻った原田氏はすぐに開発に取りかかったが、創業当初に手がけた自社事業の失敗経験が非常に参考になったという。通常のシステム開発では、まず要件定義と呼ばれるサービス設計やシステムのロジックを構築する手法が一般的だが、PeaTiXでは最初にサービスのユーザーインターフェイス、いわゆるユーザーが触れる部分からつくり始めている。「最初にシステム仕様を決めてしまうとシステムありきになってしまい失敗する。スタート時からユーザーに受け入れられるサービスを構築するには、見た目から考えていくべき」と考えたのだ。

デザインやシステム開発はすべて自社内で行ったが、ユーザーエクスペリエンスに重点を置きつつ、システム開発をスピーディーに進めるため、審査の厳しい日本のクレジットカードの決済処理は使わず、外資系のサービスを利用。サーバもホスティング型ではなく、すぐに使えるクラウド型を採用した。そして、これだけの機能を搭載したサービスをわずか数名のチームで半年かけて完成させたわけだが、「創業前に在籍していたアマゾン社で一緒に働いていた優秀な仲間を集めたことがポイント」と代表の原田氏は言う。スタートアップから強力なチームで開発を始めたことが、スムーズなサービスインを成功させた要因だ。

一般的に新しいネットサービスは、システム自体が不完全でも、スピード最優先でリリースされるケースが多い。しかし、PeaTiXの開発チームは「ベータ版でもよいから、とにかく早く世に出そう」という気持ちを押さえた。「ユーザーインターフェイスへの徹底したこだわりと、リリース当初から高品質のサービスを提供する」という理念を徹底的に共有し、時には泊まり込みの開発合宿なども行い、とにかく細部まで納得するまでつくり込んだ。実際、完成直前までリリース日が決まらなかったそうだ。

そして、PeaTiXは、リリースされた瞬間からネット上で大きな反響を呼んだ。どこまでもこだわったユーザーインターフェイス、高性能の決済機能や管理機能、またTwiiterやFacebookといったSNSとの連動のしやすさ。それらすべてが、多くのターゲットユーザーが待ち望んでいたサービスだったのだ。

 「アメリカはおおざっぱな人も多くて、面白いサービスであれば品質に関係なく受け入れてくれる。しかし、日本人は几帳面でとにかく慎重。どんなに面白いサービスでも、ちゃんとしたサービスでないと受け入れてもらえない」と、原田氏はPeaTiXの成功の秘訣を教えてくれた。「今後も日本で新しいネットサービスを成功させるには、ベータ版ではなく最初から完成版でリリースすべき」というのが原田氏の持論だ。

日本で新しいサービスを成功させるには、ベータ版ではなく完成版でリリースすべき、というのが原田氏の持論だ。

日本発、世界で使われるインターネットサービスを目指す
将来への展望

米国のイベントブラント社の実績から考えても、日本でも同様のサービスは数年後に数百億円の市場規模になると原田氏は予想している。

PeaTiXの目標は、数年以内に100億円のチケット販売額を達成すること。そして、海外展開、特にアジア圏でのサービスインを予定しており、将来的には日本発、世界で使われるネットサービスに育てていきたいのだという。そのために、増資や人員増による組織強化を計画しているが、「納得できるまでは絶対に妥協しない」という理念のとおり、人材採用についてもとことんこだわり、少数精鋭のスマートな組織運営を目指している。

Orinoco株式会社 / PeaTiX
代表者:原田 卓 設立:2009年創業。
社 員:7名 URL:http://peatix.com/
事業内容
グローバルを目指すソーシャルチケットサービス「PeaTiX (ピーティックス) 」の運営。米国ソーシャル系サービスの日本総代理店やコンサルティング、マーケティング代行。オープン技術を活用した、低コストでスケーラブルなEコマースや音楽配信ソリューションの提供。
メッセージ
結成してまだ数年の会社ですが、これから大きく飛躍しようとしています。PeaTiXをはじめとするサービスを通して、人々の繋がりがより強くなれるように頑張って行きます。

当記事の内容は 2011/10/11 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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