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学習意欲を刺激する機能を充実させ、
自律学習の継続を多角的にサポート!
展開している事業の内容・特徴
スマートフォンの普及に伴い、iPhone、iPad、Androidなど、さまざまな携帯端末を活用した新しい教育手法、「モバイルラーニング」が急速に拡がりを見せている。こうしたなか、その可能性にいち早く着目し、教育事業で社会課題を解決しようとしているのが、キャスタリア株式会社だ。同社の主力事業は大きく分けて2つある。
1つ目はBtoB向けに開発した、モバイルラーニングプラットフォーム「Goocus(グーカス)」。企業内に蓄積されているコンテンツを用い、簡単にスマホ向けの学習アプリを作成できる教材配信エンジンで、リクルート社の資格学習アプリ「資格サプリ」、株式会社アルクの英語学習アプリ「MOBiE」など、多数の人気学習アプリが導入済みだ。ほか、企業内研修や人材教育のツールとしても活用されており、教育の効率化やコスト削減の手段として、多方面から注目を集めている。
「Goocus」の最大の特徴は、「自律学習の継続」を後押ししてくれる点にある。昨年、学習の継続に必要な機能を搭載した新バージョン「Goocus Persistence Engine」をリリース。これまで同社に集積されていた膨大な学習データを分析し、独自の指標「CAS Index」を開発、学習完了時期を予測する機能を実装している。これは、ゴールがわかっていると学習を続けるモチベーションが高まるという調査結果を踏まえたものだという。さらに、さまざまな学習データをグラフやメーターで可視化できるシステムやオンラインアドバイスなど、学習意欲を刺激する機能を充実させている。
2つ目は、プログラミング教育事業。2014年4月から長野県を中心に教育事業を行う学校法人「信学会」と提携し、日本初のプログラミングを必修科目とした広域通信制高校「コードアカデミー高等学校」の運営を実施している。また、2020年から、小学校でプログラミング教育が必修化されることに伴い、2016年9月にプログラミング教育事業部を新設。上越教育大学と共同でプログラミング教育指導者養成講座「CodeEdu/(コードエデュ)」をスタートさせた。
学生時代の経験が起業の原点。
教育の地域間格差を解決したい!
ビジネスアイディア発想のきっかけ
同社代表の山脇智志氏は、日本の大学を卒業後、ニューヨークに渡り、ラジオ局、新聞社に勤務。その後の2000年、パートナーとIT関連会社を設立した。「計10年間に及ぶニューヨーク生活で、各国の人たちとさまざまなビジネスに携わり、世界の広さを改めて実感できた」と言う。この経験が山脇氏の起業の原点となった。
「私が起業する際に考えたことは3つあります。市場拡大が見込める、社会的に意義がある、そして、世界に通用するビジネスであることです。そこでたどり着いたのが、“教育×IT”の分野でした。時同じくして、アメリカでiPhoneが発売されます。スマホの普及に伴い、今後デジタル教育事業は巨大な成長産業になると確信しました」。
帰国後の2005年11月に、キャスタリアを設立。知り合いのオフィスの一角を借りて、机一つでスタートした。「エンジニアの確保には苦労しましたが、スタッフの1人がギークコミュニティを取りまとめていたことから、優秀なエンジニアを紹介してもらうことができました。また、当社ではエンジニアをものを生み出せる開発者として尊重し、個々のスキルを発揮できる自由な環境を提供することでいい人材が自然と集まってくるようになりました」。
設立から1年後、同社の実質的ファウンダーであるITジャーナリストの松村太郎氏と出会い、2人で「教育×ITで社会課題を解決する」というミッションを掲げる。その背景には、山脇氏自身が受けてきた教育環境にあった。
「私が生まれ育った鳥取県には、当時、大学が1校しかなく、しかも文系学部は教育学部のみ。そのため、多くの人が県外の大学への進学を選択します。しかし、そのためには多大な費用がかかり、経済的な理由で進学を断念せざるを得ない人も。こうした教育の地域間格差と金銭面の課題をテクノロジーで解決し、世界中の誰もが平等に教育を受けられる社会をつくりたいと考え、当社のミッションを決めました。教育を雨のように降らせたい――。これが私の夢なのです」。
さらなるグローバル展開を目指し、
「Goocus」を世界レベルのサービスに!
将来の展望
設立から12年。何度も倒産の危機が訪れ、従業員が山脇氏1人になったこともあったという。そうした窮状を乗り越え、生き残れた理由は、徹底したコスト管理と「何があっても会社を存続させる」という一念だった。「信頼してくれる仲間を決して裏切らない。仕事にかける執念だけは誰にも負けない」と強い思いを口にする。
矢野経済研究所によると、2016年度の国内eラーニング市場規模は、前年度比106.7%の1767億円。今後もさらなる拡大が予測されており、同社も順調に売り上げを伸ばしている。「現在、『Goocus』のユーザー数が非常に増えてきました。今後の課題は、予想を超えるアクセスがあっても『Goocus』を安心して使ってもらえるようにする「安定性」を提供すること。また、より使いやすいユーザーインターフェイスを整備していくことで、他社との差別化を図っていきたい」。
今後、キャスタリアが目指すのは、さらなるグローバル展開だ。同社は過去に、アフリカのナイロビでオンラインラーニングの実証実験を実施している。そんな実績もあり、2016年10月には、ヨーロッパの遠隔教育に関する国際会議「OOFHEC」にアジア唯一の発表者に選出され、イタリアのオンライン大学と共同で実施した実証実験に関する発表を行った。
2017年5月には、ベトナムにて開催されたNTT東日本主催の教育ICTソリューション体験・展示会に協力。また、昨年11月より、Evollve Inc.(本社:米国カリフォルニア州)が開発・発売する教育用ロボット「Ozobot(オゾボット)」の日本正規代理店として、取り扱いを開始している。
「イグジットの手段のひとつとして、IPOを視野に入れています。そのためにも、まずは売り上げを今後もさらに伸ばしていく必要がある。そして、『Goocus』を世界レベルのサービスに成長させたい。近い将来、スマホで学習するのが当たり前の時代になります。そのとき一番人気のツールが、我々の『Goocus』であってほしいと願っています」。
キャスタリア株式会社 | |
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代表者:山脇 智志 氏 | 設立:2005年11月 |
URL:https://castalia.co.jp/ja/ | スタッフ数:20名(社員・契約社員・業務委託を含む) |
事業内容:モバイルラーニングプラットフォームの開発、プログラミング教育 |
当記事の内容は 2017/06/27 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。