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生活者の真の姿とニーズを教えてくれる、
フットワークの軽いデータマーケティング
展開している事業の内容・特徴
ICTを活用するマーケティングが当たり前になった現在、各企業はビッグデータの分析を活発化させている。そんな時代背景を味方にし、存在感を発揮しているのがカスタマー・コミュニケーションズ株式会社だ。同社が保有するのは年齢や性別といった顧客のIDがひも付いたPOSデータ。単に「どんな商品がいくらで売れたのか」を示すPOSデータと違い、「誰が」「何を」「いつ」「何と一緒に」購入したかまで分析可能だ。生活者の購買アクションが多角的に浮かび上がる、ビッグデータの決定版といっていい。
本来、このような高度な購買情報を活用しようと思ったら、データサイエンティスト的な分析ノウハウ、精度の高いシステム構築が欠かせない。必然的に、一部の大企業のマーケターだけが享受できるものになりがちだ。しかし、同社はビッグデータ活用の裾野を広げる無料サイト「ウレコン」や、リーズナブルで使いやすい「Dolphin Eye」というサービスをラインナップしている。両サービスは一体何を提供するのか。代表の米倉裕之氏に聞いた。
「アナリストがいなければビッグデータの分析ができない。その縛りをICTの力で突破したかったんです。当社が保有しているのは、延べ5000万人規模の多数のカード会員組織を横断したID-POS購買履歴。ある意味、日本中のレジのデータを持っているといっていい。日本中のレジのデータは日本中で生かすべきでしょう。中小企業にもマーケティングデータを活用できるチャンスを提供するのがウレコン、Dolphin Eyeなのです」(米倉氏)
無料で公開されているウレコンは、購買行動分析のエントリーツール。調べたい商品をピックアップすると、エリア別の売り上げランキングや性別、年齢別の購買分析がカラフルで視認性の高いグラフとして表示される。リピーターが多いか少ないかがわかる「リピート率」もチェックでき、ID-POSデータで見えることを気軽に体験できる。
Dolphin Eyeは、スーパーマーケットやドラッグストアの約500カテゴリという膨大な商品群をカバー。「市場トレンド」、「市場シェアランキング」「購入者の性別・年代」「売価の推移」などを瞬時に把握できる。データはダウンロードしてパワーポイントなどに貼り付けることも可能。簡便な操作性がウリだ。
「Dolphin Eyeは『エクセルができない人でも資料が作れる』がセールスポイント。ウレコンもそうですが、メニューの中に『分析』というワードは一つも出てきません。直感的に操作できるよう、最大限に配慮しました」
同社のサービスを支えるビッグデータ「TRUE DATA」の提供先は、メーカー、小売り業にとどまらず、政府・自治体や教育機関にまで拡大している。内閣官房“まち・ひと・しごと創生本部”の「地域経済分析システムRESAS」、多摩大学「大いなる多摩学会」ビッグデータプロジェクト、熊本県の「くまもとDMC」など、提供事例は豊富だ。
“オープン”を標榜して社内を変革。
画期的サービスをリリースした
ビジネスアイディア発想のきっかけ
カスタマー・コミュニケーションズの設立は2000年、小売業を主対象にマーケティング支援を手がけてきた。現在のビッグデータ・マーケティングに舵を取ったのは、米倉氏が社長に就任した2012年12月。以来、「TRUE DATA」という企業ブランドを掲げ、サービスメニューを次々に一新してきた。Dolphin Eye、ウレコンといったサービスも、この変革から生まれたものだ。
「会社の変革に際してメンバーと考え、取り決めたのは、『自分たちの経営資源を独り占めしない』ということです。日本最大級のデータベース『TRUE DATA』は、日本中でどんどん生かしてもらいたい。収集したビッグデータはクローズドにするという企業戦略もあるでしょう。しかし、データをオープンにすることで、必ず新しいものが生まれる。そんな信念が私たちにはあります」
技術を囲い込まずに他者の創発を巻き込み、さらなる成長を目指す。オープンイノベーション、オープンソースの思想が同社にはある。この自由さは、40歳を過ぎてベンチャーに身を投じた米倉氏のキャリアにも由来するようだ。
「私は若くして独立した起業家ではなく、保険会社、外資企業を経て『ぐるなび』の執行役員になり、そして当社の代表になりました。外資でグローバルな視点を学び、『ぐるなび』ではバイタリティあふれる創業者の近くでアントレプレナーとは何かを体感。人脈もなく、業界の専門知識もないまま新たな業界に挑戦する中で、オープンな思想、発想を自然に身につけられたのかもしれません。自分たちの能力を天井にするな。自由に掛け合わせて新しい価値を作ろう。それが私たちの思想です」
取締役は7名中5名を社外から招聘している。トップはあくまで方向感、スピード感を示すべき存在。オープンに話し合い、知恵を出し合う中で、企業としてのロードマップが形作られていくのだ。
「データは囲い込むな、掛け合わせよ」が
ビッグデータ時代の合言葉に
将来の展望
ビッグデータを広くあまねく開放するウレコン、Dolphin Eyeだけではない。顧客の購買行動をより深く掘るためのハイエンドツール「Eagle Eye」も提供している。同社のアナリストが研究開発、マーケティングでの実践、効果検証を地道に積み重ねてきた知見が惜しげもなく投入されている。
「ビッグデータ分析の裾野をさらに広げたいと考えていますが、もちろん品質はしっかり担保します。プロに選ばれる分析サービスを磨き続けることが私たちの存在意義にもなるでしょう。ただ、あくまで目指すのは、データがオープンになった世界です。データは囲い込むものではなく、掛け合わせるもの――これこそ新たなビッグデータ時代のキーフレーズだと考えています」
データを掛け合わせることで生まれる次代のサービスが「商品前線」だ。これは、のど飴や使い捨てカイロ、そうめんなど、気温によって販売数量が変化していく商品が売れ始める時期、退潮の時期を予測し、“桜前線”のように日本地図上に図示するもの。小売りや食品・日用品メーカー、卸などの販売計画立案をアシストすべく、気象情報会社株式会社ライフビジネスウェザーと共同開発。2017年中のサービス提供を予定している。
「秋季チョコレート前線、おでん前線第一波・おでん前線第二波などのほか、食パンやヨーグルトが売れなくなるブレーキ前線なるものもリストアップしました。これらをシステム化して高価なサービスにすることもできるでしょうが、我が社のサービスと同様、中小企業に広く提供していきたい。このデータを活用することで商品の返品・廃棄ロスが減らせれば、それはよりよい社会づくりに役立つと考えています」
情報を囲い込むことなく、開放する。それが結果として社会、そして自社の発展に直結していく。同社のブレない指針は、ビッグデータ時代の企業のありようを示すものといえるだろう。
カスタマー・コミュニケーションズ株式会社 | |
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代表者:米倉 裕之氏 |
設立:2000年10月 |
URL:http://www.truedata.co.jp/ | スタッフ数:56名 |
事業内容: ①小売業へのID-POSシステム、販促・CRM支援・教育支援等のデータ活用コンサルティングサービスの提供 ②メーカー、卸売業等へマーケティングデータ(購買行動全国パネル:TRUE DATA)の提供 |
当記事の内容は 2017/05/16 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。