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“あやふや”となりやすい
オペレーションに改革を起こす。
展開している事業の内容・特徴
多くの店舗を抱える企業にとって、サービスの標準化は大きな課題だ。
新人アルバイトを一人前に育てる時間とコスト、サービス標準化を支えるSVの“見回り”の労力をどう圧縮すべきか——。そんな企業課題に着目したのがジェネックスソリューションズの人材教育動画ツール「ClipLine(クリップライン)」だ。
2014年10月のローンチから約3年が経った現在、20社以上の企業が導入、のべ3万6千人以上のスタッフが利用するサービスに成長。クライアントには、外食産業では吉野家、養老乃瀧グループなど飲食チェーン大手、また、小売業や介護、結婚式場、金融などさまざまな業界の企業が名を連ねる。直近では、大手百貨店への導入も進む。
同サービスは、ペーパーマニュアルや人材教育に代わり、それらの内容をわかりやすく映像化、カテゴリ分けした「短尺動画」が本部と現場をつなぐ。
例えば、飲食チェーンで料理の盛り付けがわからない新人スタッフがいたとしよう。従来なら、マニュアルを確認したり、指示を仰いだりする必要があるが、クリップラインでは、勤務中のすきま時間にiPadなどのデバイスから専用アプリにアクセスし、“お手本”を確認すればいい。再生時間は1本30秒ほどで、必要な動画を検索するのも簡単。そして、何よりすべき動作が視覚でわかるので、教育者の言葉を咀嚼するよりも直感的でスマートにコツを覚えることができる。また、動画アップ機能もあるので、本部は各店舗のサービス品質を遠隔地で定期的に確認することも可能だ。
ジェネックスソリューションズによる導入事例調べによれば、1店舗の月間売り上げを12万円向上、人件費を月間10万円削減。また、同サービスには、スタッフ同士が顔や氏名を確認できたり、動画にコメントを寄せたり、さらに“いいね”を付けられるSNS機能も搭載したモチベーション維持・向上ツールの側面もあり、離職率低下にも寄与する。事例では、離職率は最大3分の1、採用費も3分の1に改善されたという。
現在、外国人アルバイトの育成向けに4ヶ国語に対応した多国語版もある。慢性的な人材不足で注目される外国人アルバイトだが、戦力化には日本語でのコミュニケーション能力はもとより、「日本の常識」への理解力も大きな壁となる。
例えば、出勤時間。日本では定時に出勤するのは当然だが、少々の遅刻であれば問題にすら感じない外国人が少なくない。また、接客態度。日本では丁寧な接客がよしとされるが、海外ではいわゆるフランクな接客が評価される。
同サービスはこういった文化のギャップを埋めスムーズな教育を実現させるためのもので、現場のシチュエーションを再現した動画が、外国人の “なぜそうしなければならないのか”に対する答えを導き、言葉よりも的確に理解を促す。また、SNS機能も異国で働く外国人のモチベーションに寄与することは想像に難くない。
クリップラインのサービスを要約すれば、「SNS機能」を搭載した「双方向動画ツール」であり、仕組みだけ見ればシンプルだ。しかし、真の強みはコンサルティングとの融合にある。
動画内容の的確な提案力や2日で約100本の動画を制作するというスピード感、または導入効果を検証し適宜カスタマイズしていくきめ細かなフォローアップなど、充実したコンサル体制を整えている。クリップラインは人材教育ツールというよりも、業務改革のためのマネジメントツールだと同社は強調する。
30代後半で起業した強み。
築き上げたノウハウと実績が確かに生きる。
ビジネスアイディア発想のきっかけ
ジェネックスソリューションズ代表を務める高橋勇人氏は、京都大学、同大大学院を経て、アクセンチュア、ジェネックスパートナーズに勤務。自社の立ち上げまで、およそ15年にわたるコンサルキャリアを持つ。
ジェネックスパートナーズ時代にはエグゼクティブアドバイザーとして、あきんどスシローの業務改革プロジェクトに参画。3年にわたる支援で売上高NO1に導いた立役者だ。
クリップライン着想のきっかけも、このキャリアのなかから生まれた。名だたる企業の内部に入り支援を行うなかで高橋氏が実感したのが、「ビジネスでもチャットなどが普及しているなかで、ことサービス業の現場においてはITツールの活用はほぼ皆無」であること。そして、現場の情報伝達は伝言ゲームのようなあやふやさで行われていたことだった。
例えば社長が“白”と指令を出せば、営業本部長ぐらいまでは白。しかし・・・、SVから店長、そしてアルバイトに届くまでには白が黒になり、またはグレーになっていく様をありありと感じたという。そして、出会う経営者は口を揃えて、「指示が正確に伝わらない」と語っていたそうだ。
「いわば店舗オペレーションの標準化ですが、支援を担当させていただいた企業のみではなく、お会いする経営者の方のほとんどがこの悩みを抱えていました。オペレーション標準化の成功例としては無印良品の『ムジグラム』が著名ですが、徹底して取り組まなければ、あのようなマニュアルをつくるのも実行するのも難しい。また一方で、サービス業というのは “コツ”が求められる仕事。接客時の笑顔やきびきびとした動作など、言葉や文章で説明するのは困難なことです。それであれば、お手本も自分の動作も視覚で確認できる動画がソリューションとなるのではという思いに至りました。チーム・スシロー時代にも、各店舗の店長さんにお願いし携帯電話の写メで店内を撮影してもらったことがあります。当時はまだ解像度が低く、定常業務での導入には至りませんでしたがクリップラインの構想に至る大きなきっかけとなっています」
一方、起業について高橋氏は「最初は、まったく考えていなかった」という。もともと根っからの理系であり“目の前の課題を解決するのが好き”でコンサルに魅力を感じ、アクセンチュアへ。新卒時代から大企業の支援プロジェクトを担当し、企業内では解決できない課題に取り組みやりがいを得た。
また案件のたびに各企業のエースと組むなど刺激ある日々で、業界を離れようとも起業しようとも考えなかったと振り返る。だが、キャリアも十数年を迎え、あることに気づいたという。
「デジャブ感というか、あたらしい案件、課題であるものの、以前担当した案件に似ているなという感覚を覚えるようになりました。それならば、広くソリューションとしてコンサルを提供できるのではと。そのいち手段として漠然と意識するようになったのが起業です。なので、現在の事業もコンサルタント時代から地続きで進めている感覚があります」
高橋氏がジェネックスソリューションズを立ち上げたのは30代後半。20代での起業が多い近年のベンチャー傾向とは対照的なスタートだ。自身の起業についてこう振り返る。
「まず、コンサルタント企業や会計事務所など、プロフェッショナルファームでキャリアを積んできた人物が起業というケースは少ないと思います。やはり、キャリアを積めば積むほどリスクには慎重になりますから。しかし一方で、近年のベンチャー業界には、そういったプロフェッショナルを求める傾向があるように感じます。一例を挙げれば融資について。立ち上げ間もないベンチャーが資金調達するのは一般的に困難といわれています。しかし、弊社のケースでは創業支援融資で公庫などから数千万円を調達。また、のちのベンチャーキャピタルからの第三者割当増資では、
初回でインキュベイトファンドより1.3億円を調達しましたが、増資に応じて頂いたのは、初対面から入金までの期間がわずか約2週間という速さです。よい起業環境が形成されつつあると思いますね」
社会貢献となるサービスに成長させ、
優秀な人材を輩出できる企業をめざす。
将来の展望
クリップラインは今後、同サービスの発想の原点だという、「おもてなしの輸出」に力を注いでいく。アジア展開などを進める国内サービス業の支援ツールとして、国内企業のグローバル化に貢献していく構えだ。
また、業界・業態に応じて柔軟にカスタマイズできるサービス特性を生かし、幅広い業界への展開を予定。人材不足がときに社会問題となる医療・介護分野などにも積極的にアプローチしていくという。
企業としての目標は、どの業界でも活躍できる人材が育つ会社であること。コンサルティングファームがそうであるように、優秀な人材が自然に集う環境があり、かつ輩出していける会社を目指している。
また、高橋氏はこう付け加える「キャリアを持つ30代後半〜40代のプロフェッショナルの起業が世の中を変えていくと思っています。そして、VCや銀行もそういった人物を歓迎し支援する環境が整いつつある。こういった時代に事業を展開する起業家として、サービス、経営ともに事例となるベンチャーをこれからも目指していきます」
株式会社ジェネックスソリューションズ | |
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代表者:代表取締役 高橋 勇人氏 | 設立:2013年7月 |
URL:http://genexsolutions.co.jp | スタッフ数:23名 |
事業内容:経営コンサルティング事業、デジタルソリューション事業「ClipLine(クリップライン)」の開発・運営 |
当記事の内容は 2017/03/21 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。