120カ国・520業界を網羅。市場分析情報のワンストップ提供サービス「SPEEDA(スピーダ)」

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

情報収集、分析、レポート作成業務までワンストップで提供。会議資料も簡単に作成できる画期的サービス
展開している事業内容・特徴

speeda1通常、企業調査、業界調査を行う際場合、情報収集→情報整理→分析→まとめの作業が必要だが、これらを一つひとつやっていくのには時間がかかり、生産性も低くなりがちだ。今回は、このような企業調査、業界調査の作業を効率化させる画期的なサービスをご紹介する。

ユーザベース株式会社が提供している「SPEEDA(スピーダ)」は、企業調査、業界調査をワンストップで提供してくれる便利なサービス。これまで帝国データバンクやMDB(日本能率協会総合研究所)、ブルームバーグ、トムソンロイターなどが提供していた有料の企業情報サービスに近いが、同サービスの強みは圧倒的に使いやすいユーザーインターフェースと、アナリストによる分析レポートの質の高さである。

たとえば、衣料品業界の市場規模から代表的なプレイヤーの財務データなど数値情報に加え、アナリストが分析した業界レポートもすぐに取得可能。さらに、衣料品市場の推移とGDPとのグラフを重ねてExcel形式で出力するといった作業も、ブラウザ上でいとも簡単に完了。

データは常に最新のものに自動更新されるので、レポートをそのまま印刷したり、必要に応じてカスタマイズするだけで、簡単に会議資料ができあがる。単なるデータベース、情報提供だけでなく、ワークフローまでカバーしたサービスで、企業内の経営企画やマーケティング部門の代行、アウトソース化を狙っているわけだ。

レポートを作成しているのは専門のアナリスト。証券会社や投資銀行などの調査部門に所属していた人材を採用している。それも徹底した分業化で効率化しており、図版をつくる人、数値分析をする人、業界動向を書く人など、細かく担当が分かれている。同社の生産性の高さに、新しく入社してきたスタッフは皆驚くという。納品物の品質については、シニアアナリストという責任者を配置しており、彼らのチェックがなければデータが公開できない。

上海、香港、シンガポールにも拠点があり、日本人だけでなく外国人も多く採用。社内での教育体制も万全で、ベンチャーながら新卒採用も行っている。

「SPEEDA 」のスタート時期は2009年6月。当時はリーマンショックの影響で景気が低迷しており、大手金融機関はリストラの嵐が吹いていたが、逆にそれが追い風となった。多くの企業で調査部門が縮小されたため、その穴埋めとなる同社のサービスが注目されたのだ。「SPEEDA 」を運営しているユーザベース社代表の梅田優祐氏は、「単価の高い情報サービスからの切り替えニーズもあったと思う。いずれにせよ、スタートのタイミングがよかった」と語る。

スタート当初は月額7万円という設定で、国内のみのデータを提供。徐々に世界中のデータを提供できるよう改善を進めていった。2012年12月には、120カ国・520業界もの情報をカバーしてリニューアルし、価格を月額12万円に引き上げた。2013年6月時点で導入会社数は350社。業界的には、証券会社や投資銀行などが目立つが最近は事業会社の経営企画部も増えている。利用者数分、まとめて大量のアカウントを購入する法人も多いという。

現在は国内が主な営業マーケットだが、シンガポールにグローバル対応拠点の開設を準備中で、年内には海外、特にアジア圏に向けてサービス提供予定だそう。日本発のグローバルな情報提供インフラ・メディアというポジションを確立するのが同社の戦略だ。

情報提供プラットフォームビジネスの領域は、ベンチャーとって参入ハードルが高かったが、ITインフラの普及と低価格化、また、若い世代の意識変革などで非常に優秀な人材が獲得できるようになった。そんな時代変化を見据えて、ユーザベース社は船出したというわけだ。

転職先で、ビジネス情報のリサーチ業務に大きな非合理が存在する事を痛感
ビジネスアイデア発想のきっかけ

  speeda22007年、梅田氏は、UBS証券株式会社に中途採用で入社。そこで彼が経験したのは毎晩遅くまで情報の海に溺れながら仕事をする非合理的な調査手法や仕事の仕方だった。

 梅田氏が十代の頃、世界中の情報を瞬時に検索できる「google」が登場。ITによる社会変革を肌で感じた。この衝撃を経験しているからこそ、UBSの仕事の生産性の低さに愕然としたわけだ。インターネットのおかげで、BtoCの世界はとても便利になっているのに、BtoBの世界は未だに不便なまま……。また、ロンドンやニューヨークなどでも日本と同じようにその生産性の低さが同じと知った梅田氏は「何とかしなければ」と思うように。

 この話をUBSの研修で隣の席だった、同じく中途入社の新野良介氏に話したところ意気投合。すぐに、「一緒に起業しよう」という流れになった。また梅田氏は、高校時代の同級生だった稲垣裕介氏にも参画を呼びかけた。稲垣氏はアビームコンサルティング株式会社に勤めていたが、梅田氏の構想に共感し、創業メンバーとなった。

 2007年12月、梅田氏は会社の長期休暇制度を使い、2週間かけてハワイで事業計画を練り上げた。そして、冬のボーナスが出たタイミングで、ユーザベース社を設立した。資本金は創業メンバー3人が出し合った2350万円。その後、2009年8月、マネックス、GMOベンチャーパートナーズ、リヴァンプなどから計3000万円を、さらに2012年9月、グロービスキャピタルパートナーズから2億円の出資を受けた。

 ユーザベース社は、最初から明確にグローバルを狙っていた。2013年6月現在、社員の約20%が外国人で、外国人比率をさらに高めていく予定だという。すでに事業として単月黒字化しており、世界共通のプラットフォームをつくるために積極的な投資をしている。また、新たな経済ニュースメディアの立ち上げも計画中。来期以降の成長スピードを加速するための布石だ。

 梅田氏は、現在の日本の起業環境についても語ってくれた。「一般的に、日本は起業しづらい環境といわれているが、そんなことはないと思う。これまで、優秀な人材は大企業に入ってそこで定年まで働くという価値観が強かったが、最近はそれが変わってきていて、優秀な人材がベンチャーに集まるようになった。大企業でエリートコースを歩むよりも、ベンチャーでチャレンジするほうがクールだという価値観が20代、30代前半では当たり前になりつつある」。

 実際、ユーザベース社の社員には、大企業でバリバリやってきた20代の中途入社組が多い。梅田氏は、採用試験に優秀な人材が来てくれることに毎回驚いている。「Google」の出現で、これから世界が変わっていくワクワクを体感した世代が、今度は自分たちで「世の中変えてやるぜ」と意気込んでいる。日本のベンチャー業界でも、大きな地殻変動が起きつつあるようだ。

新たな働き方のスタイルを確立させたい
将来への展望

 梅田氏に今後の展望を伺うと、「一つ目は、世界中の企業が『SPEEDA』なしでは考えられないというところまでいきたい」と語ってくれた。世界の隅々までの情報を集め、日本発のデファクトになるインフラづくりを目指す。

 もう一つ、「新しい働き方のスタイルを確立させていきたい」と語る。100年前と現在の働き方が違うように、会社の形態や働き方はこれからも変化していく。その新しい働き方の文化をかたちにしていきたいという。

 新たな働き方確立のため、同社では「自由」を一つのコンセプトにしている。ユーザベースの行動指針である「7つのルール」さえ守れば、服装も出社時間も自由で、どこで仕事をしていてもいい。管理されることで、新たなものが生まれなくなってしまうという考えからだ。細かな決まり事をつくらなくても、一人一人自立したメンバーとしてやっていく性善説に基づいた組織運営をしている。そして、そうした価値観に共感してくれる人材だけを採用している。

 先述した7つのルールは冊子をつくり全員に配布。そのルールの浸透と、理念、価値観の共有化を図っている。もちろん、毎日決まった時間に出社して、時間単位の労働管理をしたほうがいいという意見もあるだろうが、正しい・正しくないではなく、あくまでユーザベース社オリジナルの文化をつくり上げることが目標。ゆくゆくは自分たちのやり方が世の中の当たり前になっていけば面白いと考えている。

 そう話す梅田氏は、神奈川県の葉山に住んでいる。葉山に移り住んだのは、海が近くて自然の多いところで子供を育てたかったからだそう。また、共同代表の新野氏も、はるばる群馬から東京に通っているという。スローライフとファストライフの両立は可能だということを、身をもって証明しているわけだ。「SPEEDA」のグローバル展開と、ユーザベース社のオリジナル文化確立のプロセスを、期待して見守っていきたい。

株式会社ユーザベース
代表者:梅田 優祐・ 新野良介
設立:2008年4月1日 URL:http://www.uzabase.com/speeda/index.html
事業内容:
企業活動の意思決定を支える情報インフラの提供

当記事の内容は 2013/6/18 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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