- 目次 -
ありそうでなかった?
友達のように遊べるツアー
展開している事業の内容・特徴
インバウンドビジネスの最先端がここにある――。株式会社Huber.が提供するのは、ローカルでユニークな体験を望む訪日外国人と国際交流を望む日本人をガイドとしてマッチングするサービス「TOMODACHI GUIDE」だ。提供しているツアーのプランは日本人ガイド自身が企画し、値付けしたもの。ゲストは、スマホなどから好みのプランを選択し予約する。ベータ版サービスを2016年2月から開始し、来年度早々に正式サービスインを予定している。
ツアーの詳細は旅行前からガイドと直接やりとりして決める。それこそガイドが自宅にゲストを招いてパーティをするのもアリ。ゲストとガイドが一緒になって体験し、まるで友だちのような関係を築くところが「TOMODACHI GUIDE」の特徴だ。これによって従来の画一的なツアーでは味わえなかった「自分だけの訪日体験」の提供を可能にした。
現在、登録しているガイドは約400人を超える。国際交流の機会が欲しい首都圏の大学生が中心となっている。ガイドは2人1組で、一方が通訳、もう一方が案内を担当する。 TOMODACHI GUIDEのサービスサイト上には、彼らの顔写真と「江ノ島食べ歩き 5000円」「一緒に野球観戦(ビールつき) 1000円」といったツアープランが並ぶ。「ガイドの実家に実際に行き、地元の人がどんな生活をしているのかを体験するツアー」「相撲の朝稽古を見に行くツアー」などユニークなものも。
「初めて会う外国人客を案内するのは誰にとってもハードルが高い。当社にはガイドの研修もありますし、マニュアルも用意しています。加えて、2人1組にすることで、心理的なハードルをさらに下げています」(紀陸氏)
「ボランティアとビジネスの両立」。
その思いをカタチにしたサービス
ビジネスアイディア発想のきっかけ
同社の創業は2015年4月。紀陸氏にとって「TOMODACHI GUIDE」は“やっとたどりついた”自身にとって必然の事業なのだという。
専門学校卒業後、ITベンチャー、ソニー、ソフトバンク、仲間と創業した映像制作会社、ソフトバンクの後継者育成を目的とする「ソフトバンクアカデミア」と、バラエティに富んだキャリアを歩んできた紀陸氏。「バラバラのキャリアに見えますけど、自分のなかでは『何かをプロデュースすること』『人を喜ばせること』という思いは常に一貫しています。そこが僕の軸です」。
ITベンチャー勤務時代、本業のかたわら、ボランティアでPCを教えた。報酬はなくとも食事をご馳走になり、感謝された。「感謝されると、また頑張る。そういう気持ちのキャッチボールが最高に楽しかった。でも、ある時からお金を包んでもらえるようになって、その瞬間、キャッチボールが止まりました。それからは、60歳になったらボランティアだけをして生きていきたい、そのために今はビジネスでしっかり財を築こうと思うようになりました」。
東日本大震災も転機となったという。東日本復興支援財団やソフトバンクアカデミアと連携しながら、多くの人々をつなぎ復興の力とした。ヤフーのECサイト「復興デパートメント」の実現にも貢献。そのなかで「現場を知ること」の大切さを知った。
また、この時期に入校したソフトバンクアカデミアでは、孫正義社長と優秀な同志たちと切磋琢磨しながら、事業家として大きな社会課題に向き合うという高い視座を得た。またAIやビックデータといった最新のテクノロジーに触れ合う機会のなかで、人の左脳的な仕事が奪われる未来がすぐそこまで来ていると考えるようになった。
そして米国発の民泊サービス「Airbnb」と出合う。「Airbnbはボランティアの心のキャッチボールとビジネスの継続性を兼ね備えていました。決済を先に済ませたあとにホストの自宅を訪ね、素晴らしいもてなしを受け、お金の支払いをせずに『また会おうね』といって別れる。そのときの余韻は、ボランティア活動をした後のそれそのものでした」
「Airbnbはボランティアとビジネスのよきところを両立できるビジネスモデルなのだ」と理解したとき、これは自分のライフワークになると確信した紀陸氏。しかし、シャイな国民性と狭い家屋が災いして、見ず知らずの外国人を自宅に泊めるAirbnbが日本に根付き難い現状を見た。「だったら、まずガイドとして知り合えばいいじゃないかと。これが『TOMODACHI GUIDE』をスタートさせた理由です」。
「ガイドにもなるしゲストにもなる」。
ユーザーを世界中に増やしていく
将来の展望
本社は鎌倉市に置いた。これにも必然がある。東京、箱根、富士山、名古屋、京都、大阪など日本の主要観光都市を巡るゴールデンルートから外れた鎌倉にわざわざやってくる訪日外国人旅行者は、皆口コミで街を訪れてくる。彼らの目的は、「日本らしい体験をするため」にほかならない。
「そういう鎌倉からスタートして、そういう人たちとだけ向き合って、彼らがめちゃくちゃ喜ぶサービスを研究し、カタチにしたのが『TOMODACHI GUIDE』なんです」
カバーするエリアは、東京、鎌倉、京都、大阪、広島、福岡、別府と徐々に広げて来た。しかし、紀陸氏の視線は世界を見据える。「このサービスのターゲットは「世界中に1人でも多くの友達を増やしたいと思っている人たち」。ガイドにもなり、ゲストにもなる人たちが、一つのコミュニティを形成していく。
「僕たちがベンチマークしている企業は、Airbnbであり、メルカリであり、クックパッドなのです。いずれも共通するのはコミュニティを対象としたビジネスをしていることです」
東京オリンピックが開かれる2020年には、4000万人の外国人旅行者の訪日が見込まれている。しかし「世界中に1人でも多く友達を増やしたいと思っている人」をターゲットにするなら、その数は4000万人どころではないはずだ。こうした期待感から、すでにベンチャーキャピタルなどから1億円を超える出資を受けている。
「いずれはガイドも主婦や社会人たちへと枠を広げていきたい。世界中にいるそんな人たちを束ねたら、5000万人、1億人にだってなるかもしれない。僕たちは、このコミュニティをただ広げていくだけでいいのです」
株式会社Huber. | |
---|---|
代表者:紀陸 武史氏 | 設立:2015年4月 |
URL:http://huber.co.jp/ | スタッフ数:21名 |
事業内容:・訪日外国人旅行者向けガイドマッチングサービス運営 |
当記事の内容は 2016/12/06 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。