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“メモリが大きくて見やすい”ほ乳瓶や
“抱っこしやすく疲れにくい”ふとん
展開している事業の内容・特徴
メモリが大きくて見やすく、手にフィットする「花びら型のほ乳瓶」、首のすわっていない赤ちゃんでも抱っこしやすく疲れにくい「抱っこふとん」、迷子にならずに済むよう子どもがつかめる「つり輪付きバッグ」など――おじいちゃんやおばあちゃんが“孫育て”しやすくなるアイデアグッズをつくる「BABAラボ」を運営しているのが、さいたま市に本拠を構えるシゴトラボ合同会社。
「BABAラボ」の運営目的は、一般企業などでは働きにくい地域の高齢者や子育て中の主婦などに、生きがいを持って働ける場所を提供すること。現在、近隣在住の約50人が登録し、毎日20人ほどが集まってくる。
「誰かの役に立ちたいけれど、活躍できる場所がないと感じている高齢者はたくさんいます。当社の活動目的は、そういった方々をサポートすること。その一環として、おばあちゃんたちがイキイキ働ける場所をつくろうと『BABAラボ』をスタートさせました」と、代表の桑原静さんは説明する。
当初は、このネーミングのとおり、おばあちゃんを対象にしていたが、子育てで仕事から離れている40代の主婦のニーズも強く、今では登録者の半数ほどを占めているという。
「働き方は、内職請負契約で、都合のいい時間に来ていただくスタイル。時給制だとどうしても生産性に差がつくので、“切る”“縫う”などの工程ごとに一作業いくらという料金表を設けた出来高制を採用しています」
初の工業製品であるほ乳瓶以外、商品はすべて手づくりだ。おばあちゃんたちは、ミシンや手芸など、長年培った技を発揮してものづくりに励んでいる。40代子持ちの主婦登録者が連れてくる赤ちゃんの世話もお手のものだ。
「BABAラボ」の商品は、自ら運営するネットショップでの通信販売のほか、一部のデパートや公共施設などでも購入可能だ。
「2011年のスタート以降、生産量が安定せず量もまとまらないので、なかなか販路を広げられませんでした。これまで月商は50万~300万円と波があり、今のところ年商にして1000万円ほどです。登録者の内職代は支払えているので問題はありませんが、まだまだ決して楽とはいえませんね(笑)。初めて工場で量産する、ほ乳瓶への期待“大”です」
高齢者が生きがいを持って働ける
場所がないという問題意識が原点
ビジネスアイディア発想のきっかけ
起業前、コミュニティビジネスに関心を持ち、その運営をサポートするNPOで活動をしていた桑原さん。「いつか自分でも何かやりたい」という独立志向の持ち主だった。そして、おばあちゃん子だった彼女は、前々から“高齢者が生きがいを持って働ける場所がない”という問題意識を持っていた。そこで、「高齢者が集い、仕事をやりながら仲間づくりもできる場所を開こうと考えた」。では、そこでどんな仕事を提供するか。
「ちょうどその頃、子どもを出産したのです。働いていたので、母や祖母に子どもを預けるようになると、2人の口から『自分たちに使いやすい子育てグッズがない』という不満が。祖母は手芸などものづくりが好きだったので、ならば『ジジババが使いやすい子育てグッズをつくる工房にしよう』と閃いたのです」
こうして、2011年12月に「BABAラボ」がスタートするが、「肝心の働き手となる登録者集めに非常に苦労した」と桑原さんは述懐する。
「知り合いに声をかけるなどしたのですが、反響はさっぱり。お年寄りは警戒心が非常に強いのです。『あそこは何かの宗教じゃないか』というウワサが立ったり、『何か売りつけられるに違いない』と誤解されたり(笑)。そんなウワサや誤解を払拭するため、手書きの新聞で『怪しいものじゃありません』とアピールし、手芸ワークショップを開いて人を集めるなどなど――そうやって少しずつ登録者を増やしていきました」
設立当初、「子育てのシンボルでもある、ほ乳瓶をつくろう」と考えていた桑原さん。しかし、大手メーカーが何十年もかけて開発してきたほ乳瓶の乳首部分は「ノウハウと知的財産の固まり」だという事実を知る。自主開発を断念し、メーカーに供給してもおうと交渉するも、なかなか応じてくれるところが見つからない。一方、ボトル部分は自主開発で設計までは行ったものの、これも工場がなかなか見つからない。
「結局、すべての問題をクリアし、完成するまでに4~5年もかかってしまいました。でも、ようやく2016年8月8日の“ババの日”に、孫育て用ほ乳瓶『ほほほ ほ乳瓶』を発売できる運びになりました。助成金も利用しながら、1000万円近く投資したので、是が非でも成功させたいと思っています」
地域の事情に応じたかたちで、高齢者が
働ける場所づくりを日本中に広げたい
将来の展望
「ほほほ ほ乳瓶」や「抱っこふとん」は、名古屋の名鉄デパートや仙台の三越などの百貨店で開催される「孫育てイベント」への展示販売が決まり、これから全国展開に向けて攻勢をかけていく。さらに、次の商品企画も進行している。
「大手企業とベンチャーとのマッチングイベントに参加してプレゼンしたことで、大日本印刷さんと『おもちゃ』の共同開発が決まりました。高齢者が子どもとの遊びを通じて“組織脳”を“クリエイティブ脳”に変える、というおもちゃです。これも来年の発売を目標に置いています」
そして、桑原さんは「BABAラボ」の全国展開を考えた活動もスタートしている。その第1号は、岐阜の育児グッズメーカー内に設けることが決定した。
「『BABAラボ』の考え方に非常に共感してくださり、その育児グッズメーカーさんが主催して地域の高齢者を集め、運営できることになりました。その会社は抱っこひもなどの生産で収益を上げていますが、これからは収益追求だけではなく、地域と協働しながら会社を存続させていく必要があるという問題意識を持たれていました。そんな時に『BABAラボ』の存在を知って、お問い合わせをいただいたのです」
それぞれの地域の事情に応じたかたちで、高齢者が生き生きと働ける場所づくりを日本中に広げていく。「それが、シゴトラボの最大のミッションですね」と桑原さんは笑顔で語ってくれた。
シゴトラボ合同会社 | |
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代表者:桑原 静氏 | 設立:2011年12月 |
URL:http://baba-lab.net/ | スタッフ数:約50名 |
事業内容:・コミュニティビジネス「BABAラボ」の運営およびコミュニティビジネスの支援 |
当記事の内容は 2016/09/06 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。