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世界に一着のみ! 自分のためだけの洋服を、
誰もが購入しやすい価格帯で提供する
展開している事業の内容・特徴
ファッションとは、自分を表現する手段であり、アイデンティティを誰かに伝えるための大きな要素でもある。また、背の高い低い、やせ気味、ぽっちゃりなど、個々人の体型それも大切な個性であって、自分に似合った着こなしの工夫もまたファッションの醍醐味だ。
しかし、ファストファッション・ビジネスが台頭し、既製の洋服が世の中に溢れる昨今、“私のためだけにつくられた洋服”を追求するオーダーメイドは、「富裕層の領域」「高嶺の花すぎる」「高価でとても手が出せない」と考え、あきらめている人がほとんどだろう。
体型や年齢に関係なく、その人だけのための、お気に入りの洋服を安価に提供するサービスを世の中に提供したい――そんな一人の女性の思いから生まれたのが、既存のオーダーメイドの常識を覆す、洋服のフルオーダーメイドサービス「 Fit me」だ。この仕組みが、主に関東在住の多くの女性たちの心をがっちりつかんでいる。
ユーザーはまず、東京の恵比寿駅から徒歩4分に位置するアクセス至便な同社のサロンで、身体のあらゆる箇所のサイズを採寸してもらう。その後、1500種類もの用意された生地を選び、雑誌の切り抜きや気に入った洋服のサンプルなどを参考に、好きなデザインをオーダーする。
オーダーできる洋服のデザインも幅広い。生地や縫製代を含めて1万円台で出来上がるのだ。ちなみに、納品までは1~2カ月が目安だという。
また、500種類ほど過去に同ショップが手がけた完成品サンプルも用意されているので、「デザインが決まっていない」「オーダーメイドは初めてでイメージが湧かない」というユーザーも安心だ。さらに納品後、仕立てに手直しを加えたい場合は、お直しサービスも用意している。
10年前にスタートし、静かな人気を博し続けてきた「 Fit me」だが、ここ1年ほどの間にさまざまなメディアで紹介される機会が増加した。それに伴う口コミやWebサイトからの問い合わせで予約が殺到し、以前は年に4回開催していたオーダー会を、現在では年に6回に増やして対応するまでに。ちなみに、これまで広告宣伝費はほぼゼロで運営してきた。
さらに、オーダー会に来られないユーザーのために、週5日サロンを開放してオーダーを受け付ける(要予約)。このサービスを活用して自分だけの洋服を手に入れた「 Fit me」の累計顧客数は現在3000人を超え、リピーター数も右肩上がりで増え続けている。在庫を持たず、宣伝費と高額な店舗家賃を極限まで抑えた、なんとも優れたビジネスモデルなのである。
洋服に対する友人女性の生の悩みが起点。
フルオーダーメイドを社会のスタンダードに
ビジネスアイディア発想のきっかけ
「いつか独立するなら、大義名分があり、世の中の役に立つ事業を」と考えていた「Fit me」オーナーの星田奈々子氏。情報関連企業に勤めていた当時、彼女の趣味のひとつが海外旅行だったが、さまざまな国を訪れるたび、洋服や靴をオーダーメイドして、自分だけの洋服を安価に手に入れる楽しみを満喫していた。
そんなある日、友人女性から「体型の悩みから自分にフィットする洋服がない」という悩みを聞いた星田氏。「なぜオーダーメイドをしないの?」と聞くと、「値段が高いから」という回答。日本でもっと気軽に、安くオーダーメイドサービスを受けることができれば、彼女と同じような悩みを抱えている女性がもっとおしゃれを楽しめるのに……。そう考えた星田氏の行動は早かった。
勤務先の休みを利用して、かつて素晴らしいオーダーメイドを体験したベトナムへ出向き、飛び込みで縫製工場を訪ね歩いた。もちろん、洋服のオーダーメイドビジネスを自ら国内で立ち上げるためだ。
その後、内諾を得たベトナムの工場で無償で働かせてもらい、オーダーメイド・ファッション・ビジネスのノウハウを蓄積していく。それから何度も交渉を重ね、自分自身が納得いくクオリティでサービスを提供するための土壌を構築したと踏んだ星田氏は、2006年、20名限定で自宅のリビングを使った初めての「オーダー会」を開催する。
その時はWebサイトすらなく、「1万円台でオーダーメイドができる」というコンセプトのもと、20名の友人知人を集めた無料のオーダー会を開催。その時に招待されたカスタマーたちの評判が口コミで広まり、その後のオーダー会の予約は順調だったという。1回目のオーダー会の成功で自信を得た星田氏は、会社員の副業として、「Fit me」を継続していく決断をする。
そんな二足のわらじ生活を続けるなかで、わかったことがある。「Fit me」のサービスを好む女性は幅広いが、特にビジネスウーマンからの支持が高いということ。例えば、洋服を買いに行く時間の節約や、気に入ったものを違う素材や柄で何枚もつくれるという利便性など、多忙だがお洒落をすることに手を抜けない働く女性が待ち望んでいたサービスだったのだ。
もちろん、すべて順風満帆にここまできたわけではない。ほとんどのユーザーが、オーダーメイドサービスを初めて利用する顧客である。仕上がりのイメージに差が出てしまうこともあり、ベトナム工場との間でのクオリティ・コントロールが難しかったという。
仕上がりに対するクレームを解消するため、当初は多少の損失が出ることはやむを得なかった。しかし、「クオリティ向上を徹底的に」を掲げた星田氏は、パートナーである現地工場と何度も話し合い、彼らの技術を決して否定することなく尊重しながら、自分の望むクオリティを理解してもらうよう導いていったという。開業してからここまで10年間、一度もパートナー工場と揉めたことがないことも、星田氏の人柄と努力があってこそだろう。
2016年4月、創業10年目を迎えた「Fit me」は、創業の地・恵比寿に増床した開放的なサロンを新たにオープンした。今、「1万円台で叶うフルオーダーメイドのお洋服」サービスを一人でも多くの人々に届けるため、星田氏は勤務先を退職し、「Fit me」のビジネスを成長させるための取り組みに集中し続けている。
東京だけでなく、日本全国の人たちに、
このオーダーメイドサービスを届けたい
将来の展望
今は、恵比寿のサロンに足を運んでもらったユーザーにしか提供できないサービスだが、今後はインターネットを活用したECも展開していく計画だ。東京エリア以外で出張オーダー会を開催し、そこで採寸を終えたユーザーはその後ECからいつでも誰でも気軽にオーターメイドを楽しんでもらえる――そんなサービスの構築を目指している。
同時に、さらに上質なクオリティを求める顧客ニーズに応えるため、より高級な生地を選べ、仮縫いしたうえで納品する、日本クオリティのプレミアムサービスの立ち上げも検討している。また、制服やコスチュームなどのオーダーもこれまで以上に積極的に受け付けていきたいという。
今、星田氏の世の中へ貢献したいという思いは、ますますふくらんでいる。MTF(性同一性障害)の人々へも「Fit me」のサービスを届けたいのだという。生まれ持った身体とは違う性を心に宿す人々にとって、お気に入りの洋服を購入すること決して容易なことではない。
「性別の不一致、体型や骨格の悩みなど、ファッションを楽しみたい人々のあらゆる壁を取り払い、安心して自分に合う好きな洋服が選べる社会をつくりたいのです」と星田氏は言う。
確かに、プライベートサロンで完結するオーダーメイドサービスであれば、自分が好きなファッションを遠慮することなく手に入れることができそうだ。さまざまな悩みを持った人たちが、堂々と自分らしいおしゃれを楽しみ、満足感を得るため手助けする仕事――「Fit me」で働くスタッフもきっと大きな誇りを持てるに違いない。
衝動買いしたものの、ほとんど着ていない洋服がクローゼットに眠っているという人も多いのではないか。生地も形もすべてが自分のお気に入りで、体型にジャストフィットし、つくるプロセスも楽しめるのがオーダーメイドの魅力。自分のスタイルを熟知し、高級品やブランド品に身を包むだけが価値ではないと理解する大人たちにとって、「Fit me」の洋服をまとうことは最高のお洒落であり、また、究極のエコといえるだろう。
フィットミー株式会社 | |
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代表者:星田 奈々子氏 | 設立:2006年3月 |
URL:http://www.fitmejp.com/ | スタッフ数:9名 |
事業内容: ・女性服、子供服のオーダーメイド ・コスチューム、制服などの受注生産 ・その他オリジナル商品の生産・販売 |
当記事の内容は 2016/07/07 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。
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