元ソフトバンク社員が生み出した、
今までにない「靴磨きサービス」とは

従来の靴磨きに「出張」「宅配」という
切り口をプラスした新ビジネス
展開している事業の内容・特徴

「足元を見る」という言葉があるように、靴はその人の品格を表す重要なアイテム。とはいえ、忙しいビジネスパースンにとって、自分で靴の手入れをするのは面倒だし、時間もかかる。そんなビジネスパースンのニーズをくみ取り、今までになかった新しいカタチの靴磨きサービス「ミガクル」を生み出したのが、株式会社ニイナナ代表の堀江淳太氏だ。

同社が展開するのは、従来の靴磨きに「出張」「宅配」というサービスをプラスした新ビジネス。出張サービス「ミガクルoffice」は、主に経営者や外回りのセールスパースンをターゲットとし、企業や自宅に訪問して靴を磨くサービスで、現在、1都3県（東京・神奈川・千葉・埼玉）で展開している。

一方、宅配サービス「宅配ミガクル」は、地方など靴磨きの店舗が近くにない顧客をターゲットとしており、Webサイトから依頼すれば、宅配事業者が集荷に来てくれる。その後、靴を磨いた後に、送り返してくれるという仕組みだ。いずれも忙しいビジネスパースンに「足元のおしゃれを提供し、時間を有効活用してもらうためのサービス」となっている。料金は1足1000円～1500円。こうした単価の低い靴磨きサービスだけで、利益を出すことができるのだろうか。

「当社は、靴磨きだけではなく、靴の修理やオーダーメイド靴の販売なども展開しています。一般的に、オーダーメイドの革靴は15万円ほどの高額商品ですが、ミガクルでは職人と直接取引することで中間マージンを省き、また、顧客に直接紹介販売することで宣伝費をかけることなく、6万～8万円と相場の半額程度の価格で提供できるのです」。と堀江氏。

そうやって利益を担保しながら、本業の靴磨きサービスの拡大に注力しているのだ。さらに、スポンサー企業が提供する商品やサービスのチラシを顧客に配布している。それらを依頼してくれる、オーダーメイドスーツ、不動産、クレジットカード、人材会社など、多様な企業からのスポンサーフィーも収益源のひとつになっているという。

営業時代の悩みが発想の原点。
「あったらいいな」をカタチに
ビジネスアイディア発想のきっかけ

大学在学中から、いつか起業したいと思っていたという堀江氏。当時、学生で資金も人脈もなかったため、まずは企業に就職して、給与を得ながら起業に必要なノウハウを習得しようと、新卒でソフトバンクに入社。社内のビジネスコンテストに積極的に応募したが、いい結果を出すことができなかった。

しかし、どうしても夢を諦めきれず、外部のビジネスコンテストに挑戦。そこで見事優勝を勝ち取ったのを機に、2015年７月に株式会社ニイナナを設立した。開業資金は創業メンバー3名で出し合った111万円のみだった。その後、エンジェル投資家からの出資も受けている。

ソフトバンクでは法人営業を担当していた堀江氏。外回りだと靴が汚れるが、自分で磨くのも面倒。アポの合間に店舗に行っても順番待ちとなる経験を何度もしていたため、「靴磨き屋が会社に来てくれたらいいな」と思っていたという。そうした自身の悩みから着想を得たのが「出張・宅配靴磨きサービス」だ。

現在、出張サービスの法人クライアントは約50社。宅配サービスは月に10件程度の依頼があり、顧客の大半は口コミによるものだという。設立から1年、着実に顧客を増やし続けている同社だが、スタート当初は新規顧客開拓に非常に苦労したという。DMやテレアポなど、さまざまな手法を試みたが効果は限定的だった。

そこで「お客さまに営業担当になっていただこう」と発想を転換。お客さまに“最高のパフォーマンス”を提供すべく、地道にサービスの改善を繰り返した。そうした真摯な姿勢や高い技術力が評価され、Facebookなどの口コミで徐々に顧客を拡大していった。

すべての人に「価値ある時間」を提供し、
靴磨き業界でメジャーな存在を目指す！
将来の展望

大手企業の社員という安定を捨て、起業というチャレンジングな人生を選択した堀江氏。現在の率直な感想を伺った。「起業して本当によかったと思っている。会社員時代は、安定した収入を得ていたが、どこか自分の中で不完全燃焼な部分があることが否めなかった。今は当時と比べて、やらなければならないことが増えたが、将来への“ワクワク感”が比べものにならないくらい大きい」。

今後の目標は、「法人クライアントを今後2、3年で300社に増やしたい。そして、すべての人に価値ある時間を提供することで、『靴磨きならミガクル』という存在を目指したい」と力を込める。この目標を達成すべく、土日もなく懸命に働く日々を過ごしているが、そのことを辛いと感じたことは一度もないという。「起業してから、いい意味でポジティブになれました」と晴れやかな笑顔で語る。

最後に起業を目指す人に向けてメッセージをお願いした。「起業の準備に時間をかけるのは無意味。自身の経験をとおして、資金や人脈がなくても、熱い思いさえあれば、支援してくれる人は自然とついてくるものだと実感した。日常にある『靴磨き』のようなサービスでも、一工夫プラスすることでビジネスとして成り立つし、生計を立てていくことはできるということを強く伝えたい」。そう語るまっすぐな眼差しは、明るい未来を見据えている。

株式会社ニイナナ
代表者：堀江 淳太氏	設立：2015年7月
URL：http://migacrew.com/	スタッフ数：3名
事業内容：・出張・宅配靴磨きサービス、靴の修理、オーダーメイド靴の販売

当記事の内容は 2016/07/12 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。