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金融のプロが独占していたノウハウを、人工知能を介し一般投資家にお届け。お勧めの投資戦略、投資銘柄を見つけてくれるサービス
展開している事業の内容・特徴
インターネットで株式売買や為替取引をする人が年々増えている。少額投資非課税制度「NISA(ニーサ)」も、その増加を後押ししているようだ。しかし、我が国飲の個人金融総資産約1684兆円(※1)のうち現金・預金や保険・年金準備金が約8割(1331兆円)を占めており、まだまだ個人投資が積極的に行われているとは言い難い。
※1) 日本銀行調査統計局 資金循環統計(2015年第3四半期速報)より
https://www.boj.or.jp/statistics/sj/sjexp.pdf
また、一説には個人投資家の半分は損をしているとも。巨大金融機関、ヘッジファンドなどは、個人では見ることのできないさまざまな情報や分析指標を持ち、コンピュータによる自動取引などを駆使している。そうしたプロを相手に個人が勝つのはなかなか難しい。
そんな現状を覆そうと、個人投資家に強い味方が現れた。それが今回紹介するサービス「Good Moneyger(グッドマネージャー)」。2015年4月設立の株式会社Good Moneygerが、同サービス「VESTA(ベスタ)」を開発している。
サービスの使い方は簡単。まずWebサイトから自分の家族構成や保有資産などの質問に答える。回答後に見ることができる診断結果は、簡易なライフプランの試算が含まれており、生涯収入と生涯支出のバランスなどを勘案し、ユーザーが目標とすべき投資リターンや許容リスク度合いが提示される。そうした分析結果に基づいて、お勧めの投資信託商品と資産配分が提示される。
取材を行った2016年2月時点で、対象となる投資信託商品は5000本超。人工知能型の分析システムと同社が独自に開発した金融市況の分析指標を用いて、ユーザーに合った商品をセレクトしてくれる。ちなみに、同社には投資業界が一目置く専門家が集まっており、プロのノウハウ・知見が裏側にある。プロはマーケットが動くタイミングを狙っており、虎視眈々とチャンスをうかがっている。そのため、プロが通常使う指標などを網羅的に分析し、マーケットが下落するサインを事前に見つけることで、一般投資家に事前にアラートを出し、危なくなる前に投資を手仕舞うことを推奨している。同サービスを継続利用すると”危機を事前に回避することができる”ようになっているのだ。
ただし、プロの知見をそのまま開示しても、一般投資家には理解が難しい可能性もある。そのため同社では、市況を春夏秋冬という四季になぞらえて説明するなど、「なぜその投資商品や資産配分が良いのか」を一般投資家に分かりやすく伝えることに注力している。
同社は自社で投資信託の販売を行っておらず、特定の金融機関の信託に肩入れしていないため、公平中立な立場で顧客に最適な商品をお勧めするのがポリシーだ。
一般的に、投資信託は資産運用会社が企画・設計し、それを銀行や証券会社などの販売会社が販売している。間に販売会社が入ることで販売手数料が高止まりしたり、販売会社が取り扱っていない商品は推奨してもらえなかったりといった側面があるそうだ。
社会人になった年にリーマンショックが発生。金融業界の激動にもまれて、個人投資家のため金融サービス、教育の重要性を痛感して起業
ビジネスアイディア発想のきっかけ
Good Moneygerを創業したのは、清水俊博氏。清水氏は、京都大学経済学部を卒業後、2008年4月にリーマン・ブラサーズ証券に入社した。ところが、その年にリーマンショックが発生する。そしてご存じのとおり、リーマン社は倒産。その後、彼は世界有数の投資銀行・ラザードフレールの日本法人や、株式会社ヤマトキャピタル(現YCP Holdings)を経て、2015年に起業した。
リーマンショックは、多くの個人投資家も損失を被った世界的な金融危機だったが、危機が叫ばれながらも直前までバブルに沸いていたマーケットや、リーマンショック後に大きく損をする投資家を見て、きちんと金融教育を受けていれば、早期に撤退するといった自衛策を取れる投資家も多かったのではないか……。そうした思いから、個人投資家向けのサポートサービスの必要性を感じ、同社の起業に至った。
ビジネスとして継続して利益を追求する金融機関と違い、個人投資家の資金は常に運用し続ける性質のものではない。余剰資金を銀行に預けていてもわずかな利子しかつかないため、多少のリスクをとっても、株や為替、ETFや投資信託などに投資してもいいが、投資から撤退するのも個人の自由だ。値が底のタイミングで投資をして上昇時に売ってしまい、また底に近づくのを気長に待てばよい。とはいっても、市況の上下のタイミングを判断するのは素人には難しい。しかし、プロであれば、ある程度過去の経験や統計から、大きな変動の波が見て取れる。そうした情報を提供することで、個人投資家も損をせず、着実に資産を増やしていける可能性があると清水氏は考えている。
また、清水氏は金融教育の重要性にも注目している。欧米では、子供への教育として基本的な金融リテラシーを教えているそうだが、日本ではそうした教育方針がない。清水氏はこうした状況を「交通ルールを知らないのに、クルマを運転しているようなもの」と、警鐘を鳴らしている。そのため、同社では基本的な金融リテラシーが学習できるカードゲームを開発。中高生向けに金融リテラシーを啓蒙する活動も行っている。金融緩和が行われたら投資家としてどうすべきか、天災が起きたらどういった投資行動をすべきか、バブル崩壊が起きたらどうすべきか――想定される投資家の行動セオリーを考えるきっかけにしてもらうのが目的。そうしたセオリーがわかるようになると、日々の経済ニュースへの理解も深まり、また自然とその動きを知りたくなるという。同社では受験界で有名なZ会が株主を務める塾などと連携して、金融教育の活動も進めている。
投資信託だけでなく、年金の運用などにも広げていきたい
将来の展望
清水氏に今後の展望を伺ったところ、現在のビジネスを成長させることはもちろんだが、個人向けだけでなく、法人向けにも投資助言を行うサービスを行う計画なのだという。実際、すでに同社の開発した分析モデルを売ってほしいという話も届いているそうで、同社のサービスに対する潜在的なニーズが顕在化しようとしている。
また、中期的には金融教育の進展が重要ということで、金融業界についてわかりやすく説明できる仕組みの組成とその発展も必要と考えている。同社の金融教育の講師のような人材がたくさん世の中に出てくれば、より金融商品は一般市民にとって身近になり、お金に対して正しい理解が進むだろう。
長期的には、年金の運用をなんとかしたいという。一時期、401Kなどが注目されたが、それを活用している人は、まだまだ少ないだろう。そもそも、401Kの仕組みや手続きを知っている人が少なすぎる。しかし、急速に超少子高齢化が進む日本において、年金は非常に大きな問題である。
日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) は、約130兆円の運用資産を持ち、世界最大の機関投資家と知られているが、GPIFが株式などの比較的リスクが高い投資先の比率を引き上げたことが大きく報道され、株式市場に大きな影響を与えている。しかし、その比率は国内外の株式2割程度で、7割弱は国債などの国内債券だ。
しかし、米国最大規模の公的年金ファンドであるカリフォルニア州職員退職年金基金は、グローバルな株式への投資比率が6割ほどある。大事な年金資金でリスクの高い投資を行うかどうかについては別の議論になるだろうが、日本も金融先進国である米国のような状況になっていく可能性は高いだろう。そうした未来を見据えて、日本の金融リテラシーの向上、個人投資家側に立った事業を展開する同社の今後に、ぜひ注目していただきたい。
株式会社Good Moneyger | |
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代表者:清水 俊博氏 | 設立:2015年4月 |
スタッフ数:6名 | |
提供サービスの名称:VESTA(ベスタ) | サービスのURL(試行版):https://vesta.onl/ |
事業内容: ・人工知能型の資産運用サポートサービス、ゲーミフィケーションを取り入れた金融教育サービスなどの開発、運営。 |
当記事の内容は 2016/03/08 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。