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2年間で利用者数20万人突破、掲載スペース数は500件超と急成長中の会議室・レンタルスペースマッチングサービス。
展開している事業の内容・特徴
2016年のベンチャー、スタートアップ界隈で注目したいキーワードの一つがシェアリング・エコノミー。今回紹介するサービスは2年間で利用者数20万人を突破し、登録スペース数も500件超と急成長中の会議室・レンタルスペースのマッチングサービス「Spacee(スペイシー)」。
開発・運営元は株式会社スペイシー。2013年10月に創業されたベンチャーだ。同社代表の内田 圭祐氏に急成長している理由を伺ったところ、「格安」「使い勝手」「口コミ」という答えが返ってきた。
同サービスでは新宿や代々木といったビジネス街にある会議室が、1時間100円から借りられる。ただし、時間帯によって価格は変わる。100円で借りられるのは早朝帯だけで、人気の時間帯では時間あたり980円、平日昼間などは500円などとなっている。早朝や昼間は打ち合わせや商談、取材の利用が多く、土日や夜などはセミナーやレッスン会場としての利用が多いそうだ。
ただ、平日昼間に1時間500円で借りられるのは、従来の貸し会議室の相場(1時間数千円)から比べると、はるかに安い。あるいは、喫茶店などで打ち合わせをするよりも、人数によっては安くなるだろう。喫茶店などは周囲が騒がしく、落ち着いて話がしづらい事も多いため、外出先で打ち合わせをすることが多い営業パーソンや取材などが多いメディア関係者、ライターなどには、個室の会議室が安く借りられるというのは、もってこいのサービスだろう。
格安で提供できている理由として「投資用会議室」という点も大きい。実は同サービスに掲載されている人気の格安会議室は、サラリーマンなどが空いている事務所物件を借り上げて、貸し出しているレンタル専用スペースだという。Airbnbなどで一般人がマンションを借りて又貸しするというビジネスは聞いたことがあるが、そのビジネススペース版という仕組みだ。同社にはこうした格安物件が多数掲載されている。
格安であることで稼働率も高い。内田氏によれば、一般的な貸会議室の場合、稼働率は2割程度だが、「Spacee(スペイシー)」に掲載されている人気スペースでは6割にもなるという。そもそもレンタルスペースのコストは固定費がほとんど。空いている時間はほぼ無駄になるため、価格を下げてでも稼働率を高めた方が全体として収益性が高まる。
スペースの空き状況は15分単位でシステム管理されており、ブラウザから検索して、すぐに予約できる。レンタルできるスペースも新宿、渋谷、大手町、新橋、横浜など主要なビジネス街をカバーしている。2016年末までに予約できるスペースの掲載を大きく拡充する計画で、これで主要なビジネス街をほぼカバーできる見込みだ。
使い勝手の良さから、同社では2013年12月のサービス開始から2年間で利用者数が20万人を超えたが、この間、広告宣伝はほとんどかけず、口コミとSEO検索からの流入だけで利用者数を伸ばしているという。安くて便利な立地にあることで、同僚や友人にも使ってもらおうと紹介したくなることで口コミでの認知拡大に成功している。
なお、同社の収益源はレンタル成立時の手数料。スペースの掲載者がユーザーに貸し出す金額の15〜25%程度が同社の手数料となっている。
また、2015年12月にはAndroidアプリをリリースした。2016年2月中にはiOS版もリリースする予定だ。内田氏によれば、アプリの狙いはレンタルスペースの掲載物件の拡充にある。掲載者がアプリを立ち上げて貸し出したいスペース情報を入力し、スマホで写真を取り、料金と貸し出し可能な日時を入れる。この3ステップだけで貸し出しの登録できるという。もちろん、借り手側がアプリから検索、予約できる機能も追加する予定だ。
太陽光発電の一括見積りサイトを上場企業に売却し、二度目の企業へ。割高な貸し会議室市場にビジネスチャンスを見出す。
ビジネスアイディア発想のきっかけ
株式会社スペイシーを創業した内田圭祐氏。関西学院大学を卒業後、2004年に株式会社リクルートスタッフィングに入社。法人営業などを担当し、Web制作会社でネット広告の企画・営業職を経て、2009年9月に一度目の企業として、株式会社アイデアマンを設立した。同社では太陽光発電の一括見積りサイトを立ち上げ、某上場企業へ売却。その資金にて、二度目の起業となる株式会社スペイシーを2013年10月に立ち上げた。
内田氏が起業を意識したのは大学時代にさかのぼる。学生ながらさまざまな企画を立ち上げていたことから、いずれは起業しようという思いがあった。また、大学のゼミでは社会の課題解決をテーマにしていたが、世の中の課題の多くは、個々人が豊かになれば自然と解決するものが多いと考え、社会全体を豊かにするビジネスを起こしたいと考えるようになった。
しかし、実はスペイシーの創業前に検討していた事業アイデアはレンタルスペースではなく、教育に特化した動画配信サービスだったという。これは内田氏が旅行中に思いついたそうで、旅行先でもノートパソコンがあればYouTubeなどで講義を受けられる。どこにいても質の高い教育が受けられる。これを事業化できないかと考えていたが、資金的に難しいかったため、次に考えたのが、スペースレンタルのサービスだった。
着目したのは貸会議室の高さ。安くても2000〜3000円することから、利用者が増えることでこれはもっと安くなるはずと考えて、スペイシーの事業構想に至った。
しかし、2013年10月時点では、すでに先行するサービスとして軒先株式会社があった。そこで内田氏は少人数で短時間のビジネス利用ニーズに特化したサービスを検討した。大規模なスペースを借りるニーズは限られている。特に一般のビジネスマンにとっては、大きなイベントの幹事役にでもならない限りは、レンタルスペースを利用することはない。一方で2〜3名で一時間ほどの打ち合わせや商談などの需要はとても多い。それこそ喫茶店で打ち合わせをしているビジネスパーソンをよく見かける。ここに大きな課題、ニーズがあるとみた内田氏は「Spacee(スペイシー)」の事業モデルに行き着いた。
利用頻度の高さは、そのまま利用者数も増やしやすく、利用者数が多ければ口コミによる認知度向上も期待出来る。資金力がないベンチャーにとっては、宣伝費をかけずとも自然と広がってくれるビジネスは良いことづくめだ。
誰もが簡単にビジネスを始められる世界になれば、みんながより豊かになり、社会のさまざまな課題も自然と解決する。
将来の展望
内田氏にシェアリング・ビジネスの魅力について伺ったところ、シェアリング・ビジネスはちょっとした手間を負担できれば誰もが稼げる、そうした点が魅力だと語ってくれた。
余っているものを貸し借りするビジネスは、初期投資もほとんど不要。そもそも余ってるので、貸し出した分だけ利益になる。
そうしたビジネスを誰もが簡単に始められるインフラが整えば、みんながより豊かになり、社会のさまざまな課題も自然と解決すると内田氏は考えている。
シェアリング・ビジネスは個人だけのものではない。企業内にも余っている資源、リソース、遊休資産は多い。利用頻度の低い会議室を貸し出せば、投資不要ですぐに収益が得られる。内田氏はそうした企業内のリソースをシェアすることでも巨大なビジネスに成長すると見ている。
同社では会議室などのレンタルの他、シェア型パーキングサービス 「スペイシー駐車場」も開始する予定だ。
なお、ビジネス利用でのカフェ市場は同社の試算では1000億円程度。このうち1割をとると100億円のビジネスになる。内田氏によれば、3年後にはその規模のビジネスに成長させたいそうだ。
株式会社スペイシー | |
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代表者:内田 圭祐氏 | 設立:2013年10月 |
URL:http://www.spacee.jp/ | スタッフ数: |
事業内容: ・スペースマッチングサービス「Spacee.jp」の企画・開発・運営 |
当記事の内容は 2016/02/09 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。