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香川の人気うどん店「讃岐うどん たも屋」をシンガポールの他、アジア各国に展開。本物の日本食を武器に異業種から世界に挑むITベンチャー。
展開している事業・特徴
テレビ東京のテレビチャンピオンで讃岐代表として出場したこともある、香川の有名うどん店「讃岐うどん たも屋」。2013年3月にシンガポール直営1号店を、7月には同国でFC1号店をオープン。2015年9月にはインドネシアにFC1号店を開き、さらにベトナム・台湾でも開店予定と、続々とアジア各国に進出を進めている。
仕掛けているのは、Japan Food Culture(ジャパンフードカルチャー)社。シンガポールに拠点を置くベンチャーで、Webマーケティングツールで知られる株式会社ベーシックの戦略子会社だ。
バリバリのIT系ベンチャーがまったく別畑の飲食業を、それも海外で展開しているのは何故だろうか?
今回、仕掛け人であるJapan Food Culture 社長の古閑 昭彦氏に、海外で飲食ビジネスを進めている狙いを伺った。
世界無形文化遺産にも登録された「和食」は、世界に誇る日本の重要なコンテンツだ。日本国内の飲食産業の市場規模は23兆円ともいわれているが、当然ながら今後の成長性では海外市場が有望である。しかし、まだまだ参入しているプレイヤーも少なく、多くのビジネスチャンスが残っている。
例えば、アジアのなかでも特に発展を遂げているシンガポールには、すでにやよい軒や大戸屋などが進出し、「日本食」は当たり前となっている。しかし、専門店は少ない。そこに古閑氏は目を付けた。
シンガポールの生活水準の高さは先進国並みで、日本食に対する嗜好も多様化、高度化すると考えた。日本食が普及していることを考えれば、いずれ「本物の日本食」を求めるユーザーが増える。「本場の讃岐うどん」を展開すれば大きなビジネスになるのではないか。
そして、なぜ「うどん」なのか?
古閑氏によれば、寿司、ラーメン、てんぷらは世界中に店があるが、当時、「うどん」の専門店はほとんどないという点に着目した。シンガポールをはじめ、アジアでは麺料理の歴史があり、同じ麺料理であるうどんは親和性が高いだろうという仮説をした。そして、海外では「てんぷら」は人気だが、高級というイメージがある。しかし、うどんのトッピングであれば1個1ドル程度で提供可能。これは話題になるのでは、と考えた。セルフで提供するという讃岐うどんスタイルの面白さもあり、かつ、てんぷらへの高いニーズ、これらのポイントから「うどん」を海外に事業展開しようと構想した。
古閑氏の狙いは見事にあたり、シンガポールの1号店は30坪、50席という広さでありながら、開店初月から1000万円の売り上げを達成。かなり好調な数字となった。IT会社らしく、SNSによる情報発信に特に力を入れており、Facebookの「いいね!」は37000を超えている。
外資、国内有名金融機関でキャリアを重ねた金融マン。小学校時代からの友人であるベーシック秋山氏とともに新規事業に挑戦。
ビジネスアイデア発想のきっかけ
Japan Food Culture代表の古閑氏、実は飲食ビジネスとはまったく無縁の経歴だ。みずほ証券、新生銀行、三菱UFJモルガンスタンレー証券など、金融畑でキャリアを積んできた。しかし、金融業の在り方への疑問や、組織に頼らない生き方を模索するなか、小学校時代からの友人で株式会社ベーシック創業者の秋山氏に触発され、ベンチャービジネスの世界に飛び込んだ。
ベーシック社に参画した古閑氏が最初に取り組んだのがフランチャイズ事業。フランチャイズオーナー募集サイト「フランチャイズ比較.net」の運営を担当し、そこから、さまざまなフランチャイズ企業と付き合いもはじまった。「ネットだけではなく、リアルに起業や独立を考える人材との交流」といったニーズがあることに気づき、「フランチャイズ&起業・独立フェア」を企画。同フェアは2015年5月開催では参加企業100社、来場5000人を超える、人気イベントとなっている。
2012年の夏に検討を開始した海外展開もフランチャイズ事業の企画の1つとして出たアイデアだった。まず中国への進出を検討したそうだが、当時、中国では反日暴動などが発生していた事あり、リスクが高いと判断。かわって候補にあがったのがシンガポールだった。
シンガポールは資本規制がなく、日本から食材や機材を輸出しやすく、ほぼ東京で店舗展開するのと近しい環境が整っている。また、「ASEANのショーケース」と呼ばれ、ASEANのビジネスマンが集まっているため、今後アジア圏に広く展開していくことを想定すると、最初に進出する市場として適切と考えた。
前述のとおり「うどん」に可能性があると考えた古閑氏は、香川に飛び、あらゆる讃岐うどんを調査し、一番美味しかったのが「たも屋」だった。本格派の味を提供しながらも、チェーン展開していたこともあり、「たも屋」の社長である黒川氏に海外展開を提案。JFCがめざす「本当においしい日本食を世界中の人びとへ」というビジョンへの強い賛同もあり、契約もスムーズに進んだ。
「たも屋」との契約締結後、古閑氏は早速シンガポールで物件探しをはじめ、リャンコートに候補となる店舗物件を見つけた。同時に飲食経験のある現地スタッフを2名雇い、2013年1月からは研修のため現地スタッフを「たも屋」へ派遣した。同時にサプライヤー、日本からの食材や機材などの輸出ルートの開拓。さらに店舗の設計・施工を約2ヶ月で実施。企画から約1年足らずで、海外進出の準備を完了させた。
2012年7月に事業として発足し、2013年3月にシンガポールの直営1号店をスタート。そして2年半をかけて海外での店舗運営、フランチャイズ店舗のサポートのノウハウを蓄積し、それをもとに2015年からアジア各国への規模を拡大する段階へと進んでいる。
取材を行った2015年9月時点で、直営店、フランチャイズ店舗の管理やサポートを行っている本部スタッフは取締役を含む6名。店舗で働くのは現地で採用した人材で、フルタイム5人、パートタイム4~5人という体制となっている。
2020年までにASEAN全域で300店舗を目指す
将来への展望
古閑氏に今後の展望を伺ったところ、まずは出店できる国の開拓を進め、2020年までにASEAN全域で300店舗を目指す構えだ。当面はたも屋のフランチャイズ展開に注力しつつ、並行して新たな専門店ビジネスも検討していきたいという。
取材を行った2015年9月時点では、進出を予定されているのは台湾、ベトナム、マレーシア、フィリピン。2016年内には、6カ国での店舗展開を実現させるのが直近での目標だ。
また、母体である株式会社ベーシックの強みをいかして、Webマーケティングを生かした集客までサポートできるような体制づくりにも取り組んでいく。ゆくゆくは海外進出から集客まで、包括的なサービスを構築し、中小飲食フランチャイズがより手軽に海外に進出できるようにしていくというのが狙いだ。
すでに同社にはパートナーとなる海外法人から引き合いが続々と来ているそうだが、その選定には細心の注意を払っているという。資金力はもちろん、飲食ビジネスを取り組める基盤を有しているかなどのケーパビリティー、そして会社の信頼度を詳細に検討しているという。
日本の飲食産業の市場は23兆円と巨大だが、今後の伸びしろは期待できない。一方の海外市場は巨大で成長が続くことは間違いないが、海外進出には相応のリスクや労力がともなう。そのため、海外進出に二の足を踏む中小フランチャイズは少なくない。
Japan Food Culture は「本当においしい日本食を、世界中の人びとへ」を経営理念に、海外進出にかかるフランチャイズ企業の労力を抑え、スムーズな海外展開を実現させるべくインフラ構築を進めていく。
Japam Food Cultre Pte.Ltd | |
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代表者:古閑 昭彦氏 | 設立:2012年7月 |
URL: http://japanfoodculture.com/ |
スタッフ数:16人 |
事業内容: 海外での飲食店運営、フランチャイズ事業 |
当記事の内容は 2015/9/10 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。