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躍動する動画広告市場へ、新たなホープが切り込む! 大手電機メーカーや海外からの受注もこなすアニメーション動画制作サービス「FILM BANK」。
展開している事業・特徴
動画を用いた広告市場が急拡大している。国内では2013年に132億円、2014年で312億円規模になっており、2017年には880億円までに拡大する見込みだ(サイバーエージェント/シード・プランニング調べ)。それに伴い、インターネット広告市場全体に占める動画広告の割合は6.9%まで増加するという(シード・プランニング「インターネット動画広告市場調査」より)。また、グローバルでは2016年に9000億円の市場にまで成長するという試算もある。
このように、世界で加速度的な成長を見せる動画広告市場だが、そのなかでも異彩を放つ注目株がアニメーション動画だ。商品やサービスの的確な訴求を可能にし、ユーザーの記憶に残すマーケティングツールとして、大手企業も起用。大成建設やトヨタ、マルコメ、ベンツ等々…、各社のアニメCMに強いインパクトを受けた人も多いのではないだろうか。
そんな、まさに次世代広告ともいうべきアニメーション動画を用いて、CM制作・マーケティングに特化。今、急成長しているのが、「FILM BANK」だ。大阪拠点のベンチャーが2013年6月からスタートさせたサービスだが、2年ほどで制作した動画の実績は100本以上。大手電機メーカーをはじめ、海外ベンチャーからも依頼が入るという。
人気の秘密は、まずリーズナブルな価格設定。1分あたり36万円というシンプルな価格体系を構築。これはいわゆる制作会社や広告代理店に依頼した場合の半値以下の相場だ。次に、アニメーションが持つさまざまな可能性である。
例えば、商品・サービスのグラフィック化や内容のデフォルメ等が可能な点。表現の制限がないため、思いとおりのストーリーを作ることが可能だ。そして、伝達情報の最適化。実写の場合、再生時間に関わらず視覚への情報量が多いため、内容を理解するまでに時間を要していた。だが、アニメーションはシンプルな分、頭へインプットしやすい。海外の調査では、アニメーション動画によりCV率が15→75%、購買欲は174%向上。国内では、まだデータが確立されていないが、FILM BANKが大手企業から請け負った制作案件のデータ事例では、2分半ものアニメーション動画を7割のユーザーが最後まで視聴した。
また、人種的・文化的な違和感が少なく、国境を超えて全世界の人々が楽しめるといった、アニメーション本来の特徴も大きい。実写の場合、国や社会、文化などのカラーが出やすいのだ。例えば、日本人の実写CMをアメリカで浸透させるのは、至難の技。その逆も、また然りである。アニメーション動画は、グローバルでも展開しやすいマーケティングツールと言えるだろう。
FILM BANK は、もとはWeb用のCM動画制作サービスとしてスタートしたが、今ではそのニーズは多岐にわたる。ネットにとどまらず、展示会や会社説明会などでも活用されるケースも多い。依頼も販促以外に、例えば新卒向けの説明用動画や営業ツールなどもある。
クライアントからの要望は1~3分程度の動画が多く、制作期間は1~1か月半ほど。通常の動画制作などであれば、クライアントと制作サイドとの認識の違いなどが起こり、納品物がイメージと異なるケースもあると聞くが、同サービスは、完成イメージをフルカラーのイラストベースで100%再現しクライアントに確認してもらうという、自社独自の「ストーリーボード」工程を制作フローに導入している。
FILM BANKは、すべての工程を自社で行い、管理し、総合的にプロデュースを行う。
インハウスで行う制作であるからこそ高品質なサービスを提供でき、クライアントの要望にも応えることのできる環境を実現している。
完成動画は、もちろん、YouTubeやFacebook等のSNS、PC・スマホ・タブレット等に対応。外国語の字幕やナレーションによる多言語化も可能で、初めての動画導入から海外展開までの依頼が可能だ。
マーケティング・ノウハウを武器に展開。クライアントとユーザーに“ささる”サービスを追求!
ビジネスアイデア発想のきっかけ
FILM BANKを運営するInSync株式会社は、元々はSION(株)の名で2011年にスタートを切った。当初は、Webマーケティング会社として事業を推進していた。その後、2013年にFILM BANK事業を開始。同サービスの成長に伴い、Webマーテケィングなどの事業を統合し、2015年3月に新会社として新たに船出した。
創業者の慎 祥允氏は、日本で唯一であった貿易実務や国際ビジネスを学ぶことを専門とする「大阪府立貿易専門学校」で学び、以前からいずれは自分で事業を起こしたいと考えていたそうだ。卒業後にまず始めたのが英語事業。持ち前の英語スキルを活かして、英会話講師のマッチング等のサービスを行った。個人事業主からの出発だったが、事業成長により、法人化。一層の事業拡大をめざすなかで、着目したのがWebマーケティングだったという。
「10年以上前のことになりますが、Webマーケティングの重要さに気づいたのがきっかけです。当時といえば、SEO対策という概念がまだ定着していない時代でした。でも、ホームページを見たというお客さんも徐々に増えていったので、英語事業の一環として力を入れ始めたんです。その効果は著しくて、インターネットの凄さを実感しました。また、私自身、学生時代にブランディングやマーケティングについて好んで学んでいたこともあり、当時急速に拡大していたWebマーケティングに非常に興味を抱きました。それで、いつか事業としてやっていきたいとも感じ、知識やノウハウを蓄積していきました」
アニメーション動画を事業ドメインに定めたのも、マーケティング的な視点だったという。海外情報にも明るい慎代表は、数あるツールのなかでも、グローバルな成長市場である動画に、そして注目度の高いアニメーションにフォーカス。そうしてスタートさせたのが、FILM BANKだった。
当初、アニメーションには精通していなかったが、これが功を奏す。それは、いわゆる職人肌のクリエイティブ目線ではなく、ユーザーとクライアントを結ぶことを一義としたマーケティング的視点でサービスを展開していったからであった。
さらに、競合がないに等しい環境も注目度を加速させた。大々的なPRを行っていないにもかかわらず、FILM BANKは業界内でも有名となる。そして、いつしか同社は、大阪拠点ながら東京の大手企業からご指名で依頼が入るようにまでなった。
現在は東京にサテライトオフィスも構え、月に2~3回は東京出張をこなしている。
めざすはIPO! 日本でアニメーション動画の礎を築き、世界にもリーチをかける。
将来への展望
実写での動画制作を行う会社は多いが、手間のかかるアニメーション動画に特化しているプレイヤーは極めて少ない。
特に従来のセル画手法を用いない広告用アニメーション動画に特化した会社は非常に珍しい。
また、クラウドソーシング型で動画制作を請け負う会社はいくつかあるが、InSync社はそうしたところからも依頼を受けることがあるという。
同社が、今後の目標に据えるのは、「制作環境の拡充」・「動画マーケティングサービスのワンストップ提供」・「メディアの構築」・「海外進出」の4点。
現在の高品質を担保しながら、PR動画はもとより、マニュアル・ハウツー・インバウンド・海外市場向等々・・・、各エンドユーザーに広く訴求できる環境整備。および、企画提案から運用まで、トータルサポートを実現するワンストップなサービス体系の構築を、当座のミッションに掲げる。
また、同社は、動画広告配信プラットフォーム、アドパートナーネットワークの構築も計画。エンタプライズとコンシューマーを結ぶメディア的なサービスも、今後打ち出していく。
さらに、国内事業と並行し、海外広告市場でのさらなるシェア獲得にも注力。海外法人の設立と優秀なクリエイターの育成にも、積極的に取り組んでいく構えだ。すでに海外クリエイターたちとのネットワークも構築済みだという。
同社は、包括的に事業を推進させながら、アニメーション動画の“フロントランナー”として、5年後の売上高20億円、IPOの実現をめざす。
動画閲覧のプラットフォームは多々あり、ほぼすべてのデバイスが動画に対応するこの時代。冒頭で記したデータが裏付けるように、ますます動画広告市場は興隆の一途を辿るに違いない。
そのなかで、アニメ動画は、広告のあたらしい“魅せ方”として、次世代の市場を広く担っていくことだろう。
InSync株式会社 | |
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代表者:慎 祥允氏 | 設立:2015年3月 |
URL: http://www.film-bank.jp/ |
スタッフ数:6名 |
事業内容: ・アニメーション動画制作サービス「FILM BANK」事業 |
当記事の内容は 2015/7/7時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。