起業家にとって「自分を売り込む」「事業計画を説明する」など、プレゼンテーションは必要不可欠な技術です。しかし今、インターネットやTVゲームの普及、核家族化、やわらかいものばかり食べるなど、さまざまな問題点が増え、話すこと・伝えることが苦手な人が増えてきています。プレゼンテーション技術は大きなUSP(Unique Selling Proposition 自分の強み、ウリ)であるにもかかわらず。ここでは、「心を動かすプレゼンテーション」について、お伝えしていきます。
ちなみに、プレゼンテーション(presentation)という言葉は、present(プレゼントする)という動詞が語源です。話し手(発表者)から聴き手(聴衆)へ、気持ちを込めて情報をプレゼントする、ということですね。ですから、自分も相手も望むことを、相手が喜ぶように、わかりやすく伝える必要があるわけです。
プレゼンテーションのABC
まずは、プレゼンテーションの際の心構えについて説明します。
- 自分がプレゼンテーションする内容や話し方に自信を持ち、前向きな姿勢で臨みましょう。
- 「人前で話すことは緊張する」という方も多いかと思いますが、実は緊張はいいことです。科学的には交感神経が働いていて、モチベーションが上がっている状態です。自分は意欲があって頑張っているんだ、と前向きに捉えましょう。逆に緊張がなくなった時は、気持ちが入りにくくなってしまいます。「適度な緊張感がプレゼンテーションには必要」と思うくらいの気持ちが大切です。
- そして、主役は聴き手です。相手目線に立って話すことを忘れないでください。
続いて、プレゼンテーションの基本スキルについて説明します。
まずは視覚的な要素がプレゼンテーションの印象の大半を占めるということです。
[①視覚的要素]
発表者の態度として、注意すべき点は以下のとおりです。
- 肩の力を抜いて胸を張り、背筋を伸ばし、堂々とした姿勢・態度を保ちましょう。
- 男性は足を肩幅程度に開き、女性は左足を少し引いて、つま先を13時の角度に向けて立ちましょう。
- 両手は体の真横にストンと落とし、男性なら中指をズボンの脇の縫い目に置く感じです。指は伸ばし、そろえます。女性はおへその辺りか、少し下に手を組みます(この時、指を伸ばしハートのかたちになるようにするとさらに綺麗です)
- 人間は動くものに目が行く習性がありますので、余計な動きはしないこと。ジェスチャーは、「今日話すことは3つあります」と指を3本見せるなど、効果的に使います。
- 一部の人だけを見て話すのは避け、ニコニコ好意的に見ている人を探しながら、会場全体にアイコンタクトをしていきます。(アルファベットのS、Zの順番で視線を送っていくと、全体をまんべんなく見ることができます。)基本は「ワンセンテンス、ワンアイコンタクト」です。
- 洋服にしわがないか、清潔感のある髪型かなど、身だしなみにも気を配りましょう。
- 靴もきちんと磨きましょう。視線は足元にも集中します。
- 表情もとても大切です。心からの笑顔で。そして話す内容に応じて、豊かな感情表現を心がけましょう。
[②聴覚的要素]
続いて、聴覚的要素についてです。
- 口を大きく開けて明瞭な発声・発音で話しましょう。お腹から声を出し、滑舌よく、ハキハキとしゃべりましょう。
- 早口にならないよう、落ち着いてゆっくりと。相手に合わせたスピード・口調を意識しましょう。
- 声が小さかったり、語尾が消えがちだと、自信のない印象を与えてしまいます。大きな声でハッキリと発音し、語尾は「~と思います」ではなく、「ます」「ません」と言いきることで自信がある印象になります。
- 一本調子のしゃべりだと聴き手は眠くなってしまいます。重要なところは強調し、メリハリ・抑揚をつける、間を空けるなど、相手を飽きさせない惹きつけるしゃべりを身につけましょう。
- 「えー」「あのー」「まぁ」などの言葉癖や、言い淀みなど、不要な癖をなくしましょう。
- スピーチの基本は、頭と終わりをきちんと大きな声でしゃべることです。特に第一声(つかみ)は、聴き手もどんな話が始まるのか期待感で気持ちが高まっていて、興味を引きつける絶好のチャンスです。第一声を大きくゆっくりと話せば、自分のペースが生まれ、落ち着いて発表の内容に入れます。
「第一印象は6秒で決まり、一生を通じてほとんど変わることはない」といわれています。6秒というと、「姿勢・表情・あいさつ」で決まってしまいます。ベースは笑顔です。人間は相手の表情を真似る、鏡のような神経細胞(ミラー・ニューロン)を持っているといわれています。つまり、自分が笑顔になることで相手も笑顔になるので、緊張も緩和し、話しやすくなるのです。
[③言語的要素]
最後に、③言語的要素についてです。
- 聴き手に合わせた適切な言葉を選ぶようにしましょう。専門用語はわかる相手ばかりならいいですが、一般的には避け、できるだけ平易な単語で説明してください。
- 話の内容が支離滅裂ではいけません。きちんと順序だてて構成しましょう。
構成方法については、次回にくわしくお話していきます。