Vol.1「プレゼン資料作成の役割を知る」

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

photo credit: NASA Goddard Space Flight Center via flickr cc

みなさまこんにちは。プレゼン資料コンサルタントの奥秋和歌子です。ボストンコンサルティング、ITベンチャー等で通算30万枚以上のPowerPoint資料を作成してきた経験から、「外資系コンサルティング等で30万枚以上の資料作成経験者による、プレゼンを成功させるパワポ資料作成のコツ」と題して、プレゼン資料の作り方について解説させていただきます。

プレゼン=相手へのプレゼント

「プレゼンテーション」略して「プレゼン」という言葉は日本でもかなり浸透しています。この単語の意味、あなたはどのように捉えていますか?

英語のPresentationには、実は2つの意味があります。1つ目は「発表する」「披露する」「提示する」。ビジネスにおいてプレゼンというと、こちらの意味で使われることが多いですね。自分の商品・サービスを見込み顧客に提案する、社内での企画や調査結果を上司や経営層に発表する、といったもの等が挙げられます。

しかし、私は2つ目の意味でプレゼンを捉えることをお勧めしています。その2つ目の意味とは、「贈呈する」「ギフトとして差し上げる」です。
自分の伝えたいことではなく、「相手がほしいギフトをプレゼントする」、それこそが望ましいプレゼンなのです。

プレゼン資料の役割とは

実際のプレゼンシーンでは「話し手」と「聴き手」、「プレゼン資料」、時には「商品やサービスサンプル」などが登場します。話し手と聴き手だけでもプレゼンは成立します。

では、プレゼン資料の役割とは何でしょうか?

ここで、「資料が存在しないプレゼン」を想像してみましょう。聴き手は主に「聴覚」で情報を受け取ります。平易な言葉や既知の内容であれば、聴き手も100%の理解ができるでしょう。
しかし、話し手の言葉の中に「理解不能」あるいは「ついていけない」ものが登場した途端に、聴き手の集中力は欠如します。そうなると、話し手がいくら話を先に進めても、その先にとても良い内容が含まれていても、もう聴き手は「遅れを取ってしまう」のです。

次に、「資料が存在するプレゼン」を想像してみてください。話し手は言葉で引き続き説明しますが、その内容のポイントや図解イメージ(写真やイラストなど)が資料に記載されていると考えてみてください。「聴覚」に加えて「視覚」による理解が期待できますね。

上記のことからわかるように、プレゼン資料は「視覚情報」により「聴き手のプレゼン理解を促進する」+「聴き手を置いていかずに、一緒に進行していく」という2つの目的を達成するために存在しているのです。

では、どのような内容をプレゼン資料に盛り込むべきでしょうか。具体的には以下の3つのポイントを押さえておきましょう。

(1) キーワード

キーワードは口頭で伝えるだけでは、「知らない」「あいまい」「類語と混同」などにより正しく伝わらない、あるいは複数の単語のなかで「本当に伝えたいキーワード」が埋没してしまうことがあります。プレゼン資料で「伝えたいキーワード」を表現すると、間違いなく相手に届けることが可能になります。

(図)一番伝えたいキーワードを資料に掲載する例

(2) イメージ

口頭で伝えるプレゼンテーションでは、1つの単語に対して聴き手全員が同じイメージを想像することは困難です。「はな」と聞いて、チューリップを想像する人、ひまわりを想像する人、あるいは鼻を想像する人もいるかもしれません。
写真や動画、イラストなどでイメージを表現すれば、「話し手の伝えたいイメージ」と「聴き手全員のイメージ」を統一することが可能になります。

(図)聴き手に与えるイメージを統一する例

(3) 具体性

口頭のプレゼンでは、具体的な情報、たとえば数値などを伝えてもなかなか理解が困難です。例えば、「高齢化社会が進んでいて、65歳以上の高齢者人口(老年人口)が総人口に占める割合が増えている」といった内容を資料で見せることで、具体的な理解を促進することが可能になります。

(図)具体性を高めて、聴き手の理解を促進する例

しかし、プレゼン資料があると、「ずっと聴き手は資料を見てしまう」「話し手は資料を読んでしまう」と想像する方もいらっしゃるかもしれません。
そう思うあなたは「条件付き正解」です! その条件とは、「プレゼンで伝えたいすべての内容が資料に記載されている」です。
書いてある内容をそのまま読み上げるプレゼンであれば、極論を言えば資料さえあれば「読み上げているあなた」は存在しなくても良いのです。「説明の機会がないためすべてを盛り込む『詳細資料』」と「説明の機会がある『プレゼン資料』」を明確に区別しましょう。

論理だけ、感情だけでは相手に届かない

私が在籍していたボストンコンサルティンググループなどの外資系経営コンサルティング会社などで作成する資料は非常にロジカル、すなわち論理的です。
しかし、人間の脳は「論理」だけでは納得しないようにできています。「論破する」という言葉で考えてみましょう。どちらか一方が論理的に相手を言いくるめる、すなわち「言い負けた」という印象が伴います。つまり、「言っていることに反論できない。だからしぶしぶ受け入れる」このような状態では、話し手・聴き手の間で「同じ視点で」「共感」を醸成することはできません。

逆の面から見てみましょう。友達に「すごくいいよ!」と薦められた商品があったとします。そのコメントだけで、お金を出してその商品を買うという意思決定を行う可能性はあまり高くないのではないでしょうか。「いいよ!」という言葉に加えて「あなた自身が納得できる理由」があると、購入の後押しになるでしょう。

では、どんなプレゼン資料を作ればいいの?

「相手の理解を促進するプレゼン資料」は以下のように構成します。
(1) 結論
(2) 本論
(3) 結論

例えば、「この商品の良さを伝えたい」場合は、以下のようにプレゼン資料を構成します。

(1) 結論

「私が本日伝えたいことは、この商品がどれだけ素晴らしいかということです」と、最初は結論から伝えるようにします。それにより、聴き手は「これからこの商品の良さの話が始まる」と話を聴く準備ができるようになります。

(2) 本論

心の準備ができた聴き手に対して、この「本論」パートでは「なぜこの商品が良いのか?」を伝えるために、論理と感情の両面からのアプローチを行います。
「論理面」では客観性が担保できることが重要です。商品の内容、性能を伝えることはもちろん、信頼性の高い組織が出している統計数値や、聴き手が納得する市場の声(高校生の8割が所有、業界最大手の○○社が採用、など)等を盛り込むことができるとよいでしょう。
「感情面」では聴き手の主観性を促します。利用者の声を盛り込んだり、実際にサンプルをお見せして「体感」していただくことも有効です。

(3) 結論

「以上のように、本日私が伝えたかったことは、この商品の素晴らしさです」と結論で締めくくるのと同時に、あなたのプレゼンのゴールを達成するための行動を取ります。
プレゼンのゴールは大きく「理解」「説得」「行動」のいずれかに分類できます。ゴールが聴き手に「理解」してもらうことであれば「理解度合いを確認する」、聴き手に対する説得 つまり 意思の変更等を促したい場合であれば「気持ちの確認」、行動 たとえば契約を取りたいといったような場合は「契約書・申込書を添える」「お試し商品の提案を行う」といったことを最後に必ず含めるようにしましょう。

プレゼン資料作成のツボとコツをもっと知りたい方へ

次回は、Vol.2「パワポ利用を最小限に!プレゼン資料作成の段取り」をテーマにお伝えします。どうぞお楽しみに!

なお、今回のコラムの内容を含めた書籍「プレゼン資料作成のツボとコツがゼッタイにわかる本(秀和システム)」を2015年3月に上梓いたしました。よろしければそちらもお手に取っていただけたらうれしいです!

バックナンバー

Vol.1「プレゼン資料作成の役割を知る」

Vol.2「パワポ利用を最小限に!プレゼン資料作成の段取り」

Vol.3「一目置かれる!プレゼン資料作成テクニック」

 

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