2014年10月1日から新免税制度が始まりました。従来の免税販売の対象となっていなかった消耗品、例えば食品や酒、化粧品などの消耗品も対象となり、土産として持ち帰るなら国内で購入したほぼすべての商品が免税となるようです。免税というのは、外国人旅行者が土産品を購入した際の消費税が免除される制度です。消費税は8%、さらに来年には10%になる見込みですから、消費税が免税された分、安くなるわけです。消費税分が安くなるというのは買い物する側にしてみれば大きいですよね。
今回の改正により消耗品(1人1日1店舗あたり5000円超~50万円以下の購入が対象)も免税となることで、各地の特産品、お菓子、地酒などを外国人旅行者に買ってもらうチャンスがひろがります。5000円という金額ではあれば、食品やお菓子など単価の安い商品でも対象に入りやすいので、小売業にとっては嬉しい改正です。ちなみに法人だけでなく個人事業者も対象となっています。
この新免税制度の恩恵を受けて、新しい取組を進めている事例をご紹介します。日本の一大観光地である京都にある「京都ハンディークラフトセンター」という工芸品や日本人形のショップがあります。店内には伝統工芸品の手作り体験などもあり外国人旅行客に人気のスポットですが、1万円以上の購入で店内で免税手続きを行ってくれます。もちろん英語対応可です。また、ユニークなのは日本人が海外に行く際の土産物でも免税手続きをしてくれるそうです。
また、青森にある「A-FACTORY」というお店も10月1日から免税販売を開始しました。ここはJR東日本が進める「地域再発見プロジェクト」の一環として、青森県産りんごをシードル・ジュース等各種飲料に加工する「工房」と、青森県産のさまざまな食材が楽しめる物販・飲食一体型の「市場」という2つのコンセプトを融合したお店です。
秋葉原といえば外国人旅行客にも人気の買い物スポットですが、秋葉原駅前商店街振興組合では公式サイトで免税店舗一覧を案内しています。日本語、英語、中国語、韓国語、スペイン語に対応しています。
もちろん免税店自身でも英語や中国後サイトを展開して、外国人観光客向けのPRを熱心に進めています。秋葉原をはじめ全国に5店舗を運営する「AKKY」という電機店では、日本語・英語・中国語・ハングル語・モンゴル語等など計十数ヶ国語に対応するほか、自社サイトでは詳しい免税手続きの解説や、日本で購入した電気製品が自国でも使えるかを伝えるため世界各国の電気事情を解説しています。
物販以外では、POSシステム開発を行なうビジコムという会社は、新免税制度に対応した「BCPOS」と、購入記録票や誓約書を自動作成するPOS連動の「免税アプリ」というサービスを開始しました。
このように、単に観光客向けの物販という以外にも、外国人観光客をターゲットにしたサポートサービスやメディアサービス、あるいは免税店をターゲットにしたB2Bビジネスなど、いろいろなビジネスチャンスがありそうですね。
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外国人の購入パワーは拡大の一方。百貨店では訪日外国人による売上が過去最高を更新。
ニュースでもたびたび解説されるのでご承知の方も多いでしょうが、とにかくアジア圏の経済は成長の一途をたどっています。IMF(国際通貨基金)の予測によれば、2009年の世界の統計で、中国とその他アジアを含めたGDPは7.6兆ドルと、日本の4.9兆ドルをすでに上回っています。それが2030年には中国だけでも25.5兆ドル、その他のアジア各国を合計したGDPは32.8兆ドルと、アメリカ(18.2兆ドル)を大きく超えると予測されています。
そうした経済発展から日本への観光、そして観光客による購買・消費も年々増加しています。2003年には521万人だった訪日外国人が、2013年には年間1036万人と倍増したことでニュースにもなりました。さらに2020年には年間2000万人にまで引き上げる目標を掲げています。
観光庁の発表資料によれば、2010年の旅行消費額1兆1490億円のうち、アジア圏の合計は約62%で、金額にすると7124億円。そのうち、買い物代は約2700億円となっています。
※観光庁統計資料よりドリームゲート事務局にて推計。国別上位より中国1226億円、台湾514億円、韓国499億円、香港223億円、タイ101億円、シンガポール95億円、マレーシア43億円。
また、日本百貨店協会が9月19日に発表した、2014年8月の全国百貨店売上高によれば、売上高総額(店舗数調整後)は前年同月比0.3%減の4,272億円となった一方、訪日外国人売上高は前年同月比41.3%増、購買客数は同53.9%増と大幅に増加しました。8月としては過去最高となる約47億円の売上を記録したそうです。特に中国や台湾などの中華圏や、タイ、シンガポールなどASEANからの訪問者による購入が伸びているそうです。
ちなみに同協会の発表では6月の全国百貨店売上高は4884億円で前年同月比-4.1%と低調なものの、訪日外国人売上高は40億となっていますので、2か月で17.5%も増加しています。消費税増税による反動減の影響はあるものの、訪日外国人による購入金額の増加には目を見張るものがあります。
2013年10月頃、日本のドラッグストアから花王のメリーズという紙おむつが売れすぎで店頭から一斉に消えたことがありました。理由は中国人が大量に購入して本国に送付・転売していたようです。中国製の紙おむつを使った乳児のお尻にデキモノが出来たというニュースが流れたことで、安全安心な日本製オムツが大人気となり、旅行客がお土産で大量に購入したり、業者による買い占めに至ったということで、お一人様2点までといった販売制限を行う店舗が数多くあったようです。
また、先日発売されたiPhone6/plusでも同様に中国人による大量購入が話題となりました。これも中国本土では未発売のiPhone6を手に入れるべく、日本に来る旅行客がとにかくたくさん買っていったようで、最終的には転売業者による買い占めにまで発展し、行列に並んでも買えなかったことで騒ぎになったことがニュースにもなりました。
最近では、新宿や秋葉原の家電量販店などで、観光バスが横付けされて家電製品を大量に購入する団体観光客の光景も当たり前になってきました。資生堂の化粧品なども中国や台湾では大人気ですが、中国や台湾での現地販売価格が日本より高いということもあり、訪日観光客の定番土産になっています。
このように、アジア圏からの旅行客の購買意欲の高さには驚くばかりです。
進む円安に2020年の東京オリンピック。アジア圏に近い日本の立地はビジネスチャンス
さらに最近は円安が進んでいます。このコラムを執筆している2014年10月時点では1ドル109円台。2年前は80円台でしたから、ざっと37%も円は安くなっています。その分、日本国内での買い物が相対的に安くなっています。むろん為替相場はさまざまな経済要因で変動しますが、円安傾向というのは、外国人旅行客相手の販売業にとっては追い風です。
そして、ご存じのとおり、2020年には東京オリンピックが控えています。日本政府も観光振興には力を入れており、経済産業省や観光庁は2013年4月時点で全国に4622ある免税店を、2020年までに10000店舗に倍増させる計画です。
政府による積極的な観光振興による来日外国人旅行客数の増加や免税制度の改正、アジア各国の経済発展による購買力の向上、そして世界的イベントである2020年の東京オリンピックな円安傾向と、訪日外国人観光客向けのビジネスにはさまざまな追い風が吹いています。
このチャンスを逃さずに、新しいビジネスチャンスをぜひ検討してはいかがでしょうか。
(参考資料) 今回のコラムで取り上げた統計資料や事例はこちら
京都ハンディークラフトセンター
http://kyotohandicraftcenter.com/
株式会社AKKY
http://akky-jp.com/
A-FACTORY
http://www.jre-abc.com/a-factory/
秋葉原の免税店舗一覧
http://www.akiba-scope.net/shop/?c=1012
日本政府観光局(JNTO) 免税情報発信サイト
http://tax-freeshop.jnto.go.jp/
観光庁 消費税免税店サイト
http://www.mlit.go.jp/kankocho/tax-free/index.html
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