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融資に無担保・無保証の制度はあるけれど
日本政策金融公庫(以下公庫)に、新創業融資制度という1000万円まで無担保・無保証人で、新規事業融資を行う制度があります。ただ、制度としてあると言っても、当然のことながら保証人がいた方が融資がおりる(又は満額融資される)可能性は高くなります。
それでは、保証人はどのような人がいいのでしょうか?
保証人が必要な場合
今回はある社長を例にしてお話してみます。A社はソフトウェアの開発等している会社さんでした。ある時東京で働いていた社長の娘さんが退職して、実家に戻ってきました。そして、お父さんである社長に「おしゃれなカフェを開きたい。」と言ってきたのです。
飲食店の経営について詳しいことは何もわからない社長でしたが、ここで反対して、娘にまた東京に戻られてはかないません。親バカと言われることを覚悟で、会社の事業として飲食店を開くことにしました。娘に全権を与えて、店舗賃貸料や内装費、仕入れ費用などで500万円を融資してもらうため、公庫の窓口を訪れました。
しかし、公庫からの回答は、会社が前に借りた融資が残っていたため、「保証人をたててくれれば満額貸し出せる」というものでした。ちなみに、この社長のように商売を行ってなくても、信用のない創業段階は、保証人がいた方がはるかに有利になるというのは容易に想像できます。
どのような方が保証人が適しているのでしょうか?
話を聞いた娘さんは、自分が提案した事業ですから、「私が保証人になる!」と公庫に提案しました。この場合、別の会社にお勤めの頃であれば(収入や勤続年数によりますが)保証人として問題はありません。しかし、父親である社長と同じ会社に所属している場合は、問題があります。会社という船が沈む時は一緒に沈むからです。社長の奥さんも同じ会社に所属していれば(役員でも)考え方は同じです。
ただし、いないよりもいた方がよいことは確かです。最悪の場合、他の会社で働いて返すなどの選択肢もありますし、奥さんと娘さんの両方を保証人にたてると相談する手段もとることができます。
ちなみに、社長には75歳のお父さんとお母さんがいらっしゃいました。ご両親はどうでしょうか?ご両親の収入、住まいの状況(持家かどうか)などにより異なりますが、年金収入のみの場合、年金は法律的に差し押さえができない債権となるので、難しいと考えてください。
ただ、住宅ローンなどを完済していて、本人達の健康状態に問題がなければ相談には乗ってくれます。持家で500万円程度であれば、貸し倒れの可能性が低いと判断されるからです。
保証人の資力はこれが目安です。
実は、今お話した貸し倒れの可能性についてですが、一般の会社員が返せる融資額なのかどうかというのが一つの目安になります。ズバリ言うと300~500万円くらいです。実際に新規開業者の公庫からの平均貸付額は 400万円だそうです。
一般的な会社員が人生で、一番高い買い物は何でしょうか?第一は自宅です。次に新車でしょう。新車で車を買う場合、 300~500万円くらいが一般的な値段です。
つまり、最悪、事業に失敗しても、会社員が購入できる金額の新車程度の金額ならば、貸出をしても返済してもらえる可能性が高いわけです(会社員に戻ったり、保証人が会社員でも返済できる)。
300~500万円程度の返済ができる人が保証人ならば融資実行される可能性はグンと高まります。先ほどの社長の例の場合、実家の両親が、若干ですが農家の収入もあり、保証人になることで満額融資されました。
収入の多い方・社会的地位のある方を保証人にしなければならないわけではありません。目安としては、借入額程度の収入がある方(社長の場合500万円程度)であれば、保証人として相談できると覚えておいてください。