アイデアを事業化するためには、さまざまなステップがあります。
その中の一つに、他人の特許権の有無を確認するステップがあります。
せっかく苦労して発明しても、他人がすでに特許権を取得したものと同じものであった場合、勝手に実施すると特許権侵害になってしまう場合があるからです。
しかし、他人の特許を侵害する可能性があるかどうかを調べるのは、とても大変です。例えば、少し古いニュースですが、日本のイーパーセルというベンチャーがGoogleやYahoo、AOLに対して特許侵害を訴えて、Google等から和解を引き出した事例があります。GoogleやYahooといえば、もはや超大企業ですが、そんな大きな会社ですら特許侵害を見逃す事があります。
こうした侵害が実際に発生した場合、特許権の存在を「知らなかった」という言い訳が効かないのが特許の世界です。
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代わりを見つけるか、つぶすか、お金を払って使うか、買うか、そのまま使うか
このままでは他人の特許権が事業化の妨げになりそうな場合、例えば、どうしてもその技術を使用しないと事業化できないようなものが特許権で押さえられてしまっている場合には、どうすればいいのでしょうか。
主な対策としては、次の5つがあります。
(1) 代わりの技術を採用する
(2) 相手の特許権を無効にする
(3) ライセンスを受けて実施する
(4) 特許権を譲渡してもらう
(5) 特許権の存在を無視して実施する
代替できればよし。特許権をつぶすためには戦いを避けられない。
まずは、代替技術の採用です。
未だに複写機が「ゼロックス」と呼ばれることもあるくらい、その昔、米国・ゼロックス社の複写機が席巻していた時代、複写機市場に参入を試みた日本のキヤノン社は、鉄壁といわれた特許網をかいくぐる代替技術を開発して市場に参入を果たしました。
技術は進歩します。アナログ技術からデジタル技術への移行も代替技術の台頭といえます。
ただ、代替技術を開発するのも大変です。そう簡単に採用できるとは限りません。
そのような場合に、相手の特許権を無効にする、という方法もあります。
特許権は、特許庁の審査官による審査に基づき設定される権利です。審査の際には、新しさや想到容易性といった要件を満たすかどうかを判断するために、特許出願前の公知技術が探索されます。
でも、中には公知技術が見逃されて特許権になってしまうものも出てきます。
そのような特許権は、本来成立してはいけないものなので、証拠を集めて成立させるべきではなかったことを立証することによって、その特許権を初めからなかったものとすることができます。
ただし、こちらの正体を明かして戦うことになりますので、特許権に記載された発明内容を必要としていることが相手方にばれてしまいます。
また、立証できなかった場合には、特許権が維持されてしまうというリスクがあります。
お金を払って使う場合と、買ってしまう場合とは何が違うのか?
代替技術もないし、相手の特許権もつぶせない、となると、次は、お金を払ってでも使用させてもらうか、特許権ごと買ってしまうか、となります。
お金を払って使用させてもらうとは、いわゆる特許権をライセンスしてもらうことになります。
ライセンス契約では、特許発明を使用する際にいくら支払うといった金額だけではなく、許諾してほしい技術の内容や許諾期間、特許権の実施場所、ロイヤリティーの支払時期や、ライセンス契約期間などを決めることになります。
一方、特許権の譲渡の場合は、まさに特許権を購入することになりますので、購入後は、自社の特許権として思う存分実施することができます。
この場合、いくらで売買するか、といった譲渡契約を交わすことになります。
なお、特許権が移転することになるので、別途特許庁へ移転について届出する必要があります。
特許権の存在を無視して実施できる場合はごく限られた場合のみ
最後の方法は、特許権の存在を無視して実施してしまう方法です。
もちろん、何の理由もなく無断で実施することは特許権侵害となってしまいますので、この方法を採用するにには、理由が必要になります。
例えば、相手方の特許権の特許出願前に、独自に発明したものであるとともにその発明の実施準備が整っており、現在も継続して実施しているような場合には、特許発明の実施を継続することができます(先使用権といいます)。
また、こちらが実施の準備をしている間に特許権の存続期間が切れてしまうことが明らかな場合にも、その準備状況によっては侵害と言われない場合もあります。
使える特許権かどうかを判断するために必要なことは?
さて、特許権のライセンスを受ける場合はともかく、特許権を購入する場合にはとりわけ、その特許権にお金を払う価値があるかどうかを見極める必要があります。
そのためには、自社の事業化に本当に必要な技術が権利範囲に含まれているのか、あらためて確認する必要があります。
含まれていなければ、そもそもお金を払う必要がないからです。
また、ライセンス額や購入額を決める際には、その特許権を実施することで、将来、自社にどのくらいの利益をもたらしてくれるのか、特許権の価値を見積もる必要があります。
土地のように評価額がある程度はっきりした形のある財産と異なり、特許権は形のない財産であるとともに流通市場が発達しておらず、公示価格もないので、価値評価にも難しいところがありますが、価値以上のお金を払わないようにするためにも試算をしておく必要があります。
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