こんにちは、ブランディングコンサルタントの渡辺です。
前回に引き続き、ブランディングの視点からホームページ制作のポイントについて解説していきたいと思います。
前回でのコラム「Vol.4 「ブランディングから見た、良いホームページつくりとは 前編」」では、シンプルさやカラーの統一性などの重要性について説明しましたので、今回は以下のポイントについて解説していきます。
- ブランディングの視点からみた、会社や事業への想いの伝え方
- ターゲットを特定し、誰に発信するかを明確にする
- 鮮度の維持と、お問い合わせ等のサポート機能を大切に
この3つのポイントをしっかり意識する・しないとでは、ホームページが全く違うものになると思います。
- 目次 -
1.ブランディングの視点からみた、会社や事業への想いの伝え方
多くの会社、特に上場企業のホームページでは会社案内サイトの冒頭で、経営者からのメッセージという形で会社の想いを発信するページが見られます。
そこでは、会社が創業からどれくらい経たのか、どういった事業のルーツであったり、また社会的使命や従業員、株主等に果たすべき責任などが会社トップの写真(だいたいが、会長か社長さん)とともに述べられています。
これはこれで、その会社に対する信頼感を高めたり、創業からの歴史に対しての敬意を醸成することに役立つものです。
しかし、ブランディングの視点から考えた場合どうでしょう?
ともすると、どこか紋切り型の挨拶文であったり、従業員に向けての『社長はこう考えています』的な目的となったりで、サイト訪問者に対して事業や技術力などを印象付ける役割としては十分な効果があるとは思えません。
文面はとても聞こえの良いフレーズ、例えば「誠意」「挑戦」「顧客満足」等で溢れているのですが、他の会社と大差ない表現であることや、あまりに整然と美辞麗句が並んでいることで、逆にサイト訪問者の興味を薄めることにもなりかねません。
もちろん、こういった表現が悪いのではないのですが、ブランディングという視点からいかに自社を差別化していくのかを考えた場合、独自性やユニークさがとても重要であることを常に戦略の中心に据えるべきである、という意味です。
参考事例1
例えば、プラマイゼロ株式会社という家電製品の会社がありますが、この会社の事業案内サイト(http://www.plusminuszero.jp/about/) を見ると、そのプラマイゼロという会社ブランドの想いがとてもよく伝わってきます。
どういった想いで作る製品なのか、この会社は何をしてどう社会と関わりたいのかなどが伝わることで、会社と自分の心理的距離が縮まり、会社イメージが記憶されていきます。
参考事例2
オートバイのヘルメットで有名な株式会社SHOEIのホームページ(http://jp.shoei.com) では、社長挨拶に始まり経営方針などの説明の中においても、自社の独自性や差別化を追求した製品開発姿勢が一貫して表現され、同社のブランドポジショニングである「プレミアム」が効果的に伝わりやすくなっています。
最近の社会的傾向として、商品そのものの魅力だけでなく、その背景や供給者の考え方などに対する評価も購買動機のひとつとなっていますので、自社の想いをしっかり発信して、強みや差別化ポイントを理解してもらうことに努めましょう。
2.ターゲットを特定し、誰に発信するかを明確にする
いわゆるターゲットについてです。
ホームページの目的は、既存客に対しての情報提供、新規客の獲得、採用目的、そして先にも触れましたように、従業員への動機付け、などが混在している場合が一般的です。
本来はターゲットを明確に絞ってサイトを構成することが、発信力を高めるためにも望ましいのですが、現実的には容易ではありません。ですのでサイト構成の中で上手く導線などを用いて的確にターゲットへ情報が提供できるような工夫が大切です。
もっともよくないのは、ターゲットの概念を持たずに漫然と情報を発信する場合です。情報の受け手としては、自分ごとではないと感じたとたん、そのサイトに興味を失い、その後の必要な情報も十分伝わらなくなります。
大企業の場合は、顧客ターゲットもさまざまであったりしますし、従業員などの社内外の利害関係者も多種多様ですから、どうしてもサイト構成でこのような工夫が必要となりますが、中小企業や、まして起業する時では、より効果的なサイトにするために可能な限りターゲットを明確にしたデザイン構成にしましょう。
参考事例3
GO&FUNというイタリア発のエネルギー飲料のブランドがあります。(http://www.goandfun.net/jpn)
このサイトを見ると、印象的なグリーンカラーによってブランドイメージが瞬く間に印象づけられるのですが、サイトを通じてその商品の魅力を誰に発信したいのかが容易に想像できます。そしてそのターゲットを巧みに囲い込むようなさまざまな情報提供が行われています。
サイト構成自体がとてもダイナミックで、エネルギッシュであり、ターゲットに共感を持たれやすい、参考になる一例です。
3.鮮度の維持と、お問い合わせ等のサポート機能を大切に
これらはブランディング視点の有無に関わらず、ホームページを効果的に運用するためには必須の項目となります。
鮮度維持においては、SEO対策の観点からも重要ですし、なによりコンテンツに鮮度のないホームページでは、そもそも興味を持たれにくいものです。
また、お問い合わせなどのサポート機能は、2つのポイントでとても重要です。
まずは、既存のお客様のロイヤルティを高めるためです。どうしてもホームページでは新規の取引先を獲得することに目的を置いてしまいがちですが、売上を維持成長させていくために、獲得できた既存のお客様の満足をいかに高めるかも重要です。
その視点から、既存のお客様へのサポート機能として、お問い合わせ体制や、Q&Aの充実、事例紹介などが重要となります。またこれらが効果的であればあるほど顧客満足度が高まることからより優良なロイヤルカスタマーが増えることとなり、売上の安定化へと結びつきます。
それに加えて、今後より重要となっていく視点が、双方向性です。
これまでホームページは大まかに言えば、企業や商品などの宣伝のため、販売のため、認知度向上のため、の一方通行的な情報発信でした。
しかし、技術的進化や先に触れたCMSなどの発達により、お客様からの情報をより有効に活用できる体制が整ってきました。お客様からの問い合わせや、商品検索などの外部との接点を活用することにより、潜在的なニーズや需要、またアイデアなどを提供していただけることが可能になってきます。
最近、P&Gなどが新商品開発プロセスでの成功事例としてたびたび紹介される「オープンイノベーション」という発想が広まりつつあります。『企業内部と外部のアイデアが結びつくことで革新的で新しい価値が生まれる』ことを目指すという考え方ですが、同様に外部の知恵を活用するという視点からも、ホームページでの双方向性的運用は今後重要度が増すものと思われます。そして、これらの施策をいかに行うかは実はブランドイメージ構築ともつながるのです。
ブランドイメージはブランドパーソナリティという、人でいう人格に転換されて記憶されていくことが多いのですが、双方向的運用はそのパーソナリティを理解してもらうことに寄与することにもなるのです。
例えれば、外見はおとなしく真面目そうな人がつき合ってみたら以外と楽しく馬が合うタイプだとわかった。。。という感じでしょうか。
こういった理解があることで、お問い合わせやサポート機能についても自社としての明確な方向性が打ち出せるのではないかと思います。
前回、今回とホームページ作りを通じて、ブランディングについて考えてきました。
以前のコラムでも説明しましたが、ブランディングにおいて大切なことは、如何にターゲットの頭の中の上位に自社のブランドを認知してもらうかです。
そこで大切なことは、ターゲットがどこでそのブランドと接点をもっているかです。その接点はタッチポイントと呼ばれ、そのタッチポイントすべてで一貫性のあるブランド表現することが必要です。小売店であれば店舗であり、販売員ですし、B2Bの企業であれば、展示会であり、カタログや営業員です。もちろん、広告宣伝全般もです。
これらのブランドとの接点によって、ブランドを感じていくことを「ブランドエクスペリエンス(体験)」と言います。
イベントや試食会などの動的なブランドエクスペリエンスもありますが、ホームページは静的なブランドエクスペリエンスの代表です。
動的なブランドエクスペリエンスでは直接お客様の反応が見えるのですが、静的なブランドエクスペリエンスではその実感が持ちにくいものです。
ですが、ホームページを通じることで無数の潜在的お客様との接点を有することができますので、効果的なブランディングを行うためには、ホームページ作りにもブランディング視点を考慮した、一貫性のあるブランド発信を心掛けてください。
バックナンバー
起業家のためのブランディング講座
Vol.2 「起業家なら押さえておきたいインナーブランディングという概念」
Vol.3 「起業家ならチェックしておきたいペチャクチャナイト」